第1話 6度目の追放
「たかし、すまないがこれ以上君をこのパーティーに置いておく事は出来ない」
アレンが心苦しそうに、パーティーの最終決定を俺に伝えてきた。
アレンは良い奴だ。
きっと今回の決定だって、最後まで俺の為に他のメンバーを説得をしていてくれたに違いない。
彼はいつも俺に気を使ってくれていた。
俺だけじゃない、目に映るものすべてに手を差し伸べる優しい良い奴だ。
そしてそんな良い奴だからこそ、貧乏くじを引かされる。
俺に引導を渡す役も、その優しさに付け込まれて押し付けられたのだろう。
いや、それすらも優しい彼が率先して手を上げたのかもしれない。
「今まで有り難う、アレン。短い間だったけど、このパーティーに居られて良かったよ」
感謝の言葉を述べ、俺は左手を差し出す。
パーティーを追放される身ではあるが、彼らを恨む気持ちは微塵もない。
何故なら、俺が逆の立場だったならまったく同じ事をしていたはずだから。
「すまない……」
アレンが再度俺に謝罪しながら、俺の左手を両手で強く握る。
彼の瞳にはうっすら涙が浮かび、その両手からは彼の震えが伝わってきた。
本当に良い奴だ。
「それじゃあ、皆によろしく言っておいてくれ」
「わかった……」
俺はアレンに背を向け、軽く手を振りその場を離れる。
6度目のパーティー追放。
もう誰も俺をパーティーには誘ってくれないんだろうな。
そんな事を考えながら、俺はとぼとぼと重い足取りで帰路に就く。