01.雨のぼっちツーリング
はい、みんさん、こんばんわ、イワトノアマネでございます。
おまえ、またくだらんもの書きやがってですって。
まあ、そう言わずに、読んでやってください。
6000文字ちょいです。短いですよ。
はい、今夜お送りするのはホラー。
ホラーは苦手。だいじょうぶ。ちょっとだけなんです。
一人の男がオートバイに乗ってキャンプに行くんですねぇ。
オートバイ。かっこいいですねぇ。
私も、オートバイ乗ったことあるんですよ。
ブルン、ブルン、ブルルルルルン。
いいですねぇ。すごいですねぇ。
でも私、免許がなくて、走らせる事はできないんです。
はい、この物語は、夏の暑い暑い日に、起こったお話。
湖畔のキャンプ場で焚き火をするんですねぇ。
すると、どんどん、どんどん。
どんどん、どんどん。何かが寄ってくるんですねぇ。
何でしょうねぇ、怖いですね。
というわけで、興味があったら、ちょっと読んでやってくださいねぇ。
それでは、またあとで、お会いしましょう。
土日、祭日といった連休を楽しくすごす。
そんな人々のために働く俺。
いや、俺のためであって、決してイチャコラしているリア充のためではない。
そんな俺が、すさんでないけど心をリフレッシュすることがある。
それは、平日に休みのある俺にぴったりな趣味。
1泊2日のツーリングキャンプである。
しかも『雨』を好んで活動する。
中古で買った250ccのクラシックネイキッド。
金が無いとか、足が短いとかではない。
個人的に見た目がカッコカワイイ。そう、気に入ったからだ。
後部シートにはもちろん人など乗せない。
深緑色した大きなプラスチックの箱。
中にはキャンプ道具。
箱の上にはタープの入った袋など。
「準備よし」
指差し確認をする。写真を撮る。
車なら、快適に楽しく過ごせるお洒落なアイテムをアレコレ持っていける。
だが、ちいさなバイクには許されない。
軽くてコンパクトに収納できる最小限の道具。
とはいえ、世の中何がおこるかわからない。
少しぐらい余裕はあるほうがいいだろう。
だからテントは2-3人用。
寝るときに荷物を中に置くためである。
決して一人ぐらい増えても……なんて考えたことは絶対にない。
7月12日、早朝。
ドシャ降りの雨の中、家を出る。
雨音にエンジン音がかき消される。
近所に迷惑をかけない俺。いいやつ。
俺の目的地は、綺麗な湖畔のキャンプ場。
当然だが、目的地も雨の予報。
一般道をのんびり走って都心を脱出。
昼はコンビニでサンドイッチと暖かいコーヒー。
袋を受け取るときには声をだす。
「はい、ありがとうございまーす」
声をだす数少ないチャンスを無駄にはしない。
それと、邪魔な小銭を使いきり、なんとなく嬉しい。
コンビニの狭い軒下で立ったままサンドイッチを食べる。
「こんなところで……?」
「立ったままで……?」
「平日なのに……?」
「雨なのに……?」
などといった声が、聞こえそうな視線をあびても気にしない。
蒸し暑い雨の日に、カッパの中がどうなっているか俺は知っている。
この状態で飲食店に入ることが、許されるようなイケメンではない。
「雨の中、たいへんだねぇー」
こんな感じの声をたまに掛けられる。
「そうですね。でも、好きだから楽しいです」
そう営業スマイルで答える。
こんな小さなふれあいは嫌いじゃない。
思いを言葉にすることで、オノレを知る瞬間でもある。
キャンプ場を見つけ受付に挨拶。
「どーも、こんにちは……夕方まで近くを走って戻ります」
そう言って周辺の脇道に入り景色を楽しむ。
トンネルのように木々に覆われた暗い道。
砂利の散った細い山道の大きな水溜り。
聞こえるのはポコポコと息を吐くエンジン。
木々の葉をつたい集められ、大きくなりボタボタと降り注ぐ雨。
エンジンを止めたら、別な世界へ行ける気がする。
そう、エンジンを止めたら熊とか出てきて、本気で別な世界へいく事になるかもしれないからエンジンは絶対に止めない。
ベルトポーチから、防水性能の高いデジカメを出して写真を撮る。
休憩や食事など経過を記録する。
いまのところ、パソコンへ移動するときに見るだけで、見なおすことはない。
でも、いつか見たいと思う日が来るかもしれないと、撮り続けている。
スマホもあるが、この雨じゃ怖い。
緊急用のアイテムを失うのはソロで行動する俺にとってリスクが大きすぎる。
決して「いま、ココ!」などとメッセージを送る相手がいないわけではない。
キャンプ場に戻る途中、山すそに小さな灰色の鳥居が見えた。
「よし、ちょっと寄っていこう」
きっと俺の先祖は冒険者だったのだろう。
なんてことは思わないが、こういった場所には引かれるものがある。
鳥居の脇にバイクを止めてへルメットを外しミラーにかぶせる。
カッパの襟から帽子を引き出してかぶる。
「さあ、調査をはじめよう」