第7話 vsザバス 中
「さあ……はじめるぞ!」
リザード族。昔からその一族は戦闘民族として知られており、老若男女問わず人離れした戦闘力と闘争心を持っている。
目の前の男、ザバス、彼はリザード族の中でも特別な存在だ。周りの仲間は皆傭兵として戦場を駆け回っているにも関わらず、一人「戦は嫌いだ」と称し、「模擬戦で新人の相手をする」などと言ったアルバイトしかしていない。しかし、彼が弱いかと聞かれるとーー
「っ!」
素早い回し蹴りがライを襲う。あのライが、反応すら出来なかったのだ。
「ライさん!」
「イテテ……速すぎだろ……」
ライは起き上がり、身を整えた。
「勝てる気がしねーじゃんか」
「ライさん……後ろです!」
振り返るも、ザバスの一蹴りがーー
動きが、止まる。
「けっ……またお前かっ!その能力はなかなか厄介だぜーー」
ライのストレートが、ザバスを狙う。
軽々と躱す。二人は、お互いに距離を取った。
「トトと言ったな……なんだ今のは」
「ゆうれいさん……とトトは呼んでいます」
フワフワと、ザバスの足にまとわりついていた物がトトの側に戻る。
トトの能力は、少し変わったところがある。魔族の能力は、ほとんどその種族に依存しているが、彼女の能力は、彼女しか扱うことができない。
「人間さんたちが言っている幽霊とは、恐らく別物ですが……」
「……なるほど、それは力強いな」
「さて、その小細工がいつまで通用する……かな?」
再び、ザバスが動く。今度の標的はーー
「うっ!」
ゆうれいさんが、クッションとなるも、攻撃はトトに当たる。
「スキだらけじゃんかよっ!」
ライがそのチャンスを見逃さず、ザバスに殴り込む!
「イキがいい小僧ーーって、小娘だったな」
無残にも、再びライが地面に叩きつけられる。
「まったく、ハンターっていうのはな……」
ザバスがそのチャラそうな前髪を整える。
「刃向かうもんではなくてな……出会わないように逃げ回るもんなんだぜ」
「ああ……知ってるよ、そんぐらい」
ライが、ゆっくりと、立ち上がる。
「じゃあなんでわざわざこっちに来たんだよお前は」
「いやあ……あまりにもヒントがなくてね……」
「……はあ?」
「あんたならなんか知ってると思って、聞き出しに来たんだーー力ずくでな」
「……いやあ、それは参ったな……」
呆れた表情で、ザバスがため息を吐く。
「聞き出せるものなら……やってみろ」
ザバスが、身を構える。
「ああ、言われなくてもな……と、言いたいところだが」
「……敵が厄介ですね」
「……?」
その時だった。どこか懐かしさを感じる風が、微かに戦場に吹く。
「話は聞かせてもらったわ」
「クロエたちの手助けに感謝するのだ」
ライ、トト、フォーゲル、クロエ。この四人組が、世界を大きく変えることになろうと、この時は誰も思っていないだろう。
「1対4はさすがに辛いぜ……!」
ザバスの、目つきが変わった。
「よっしゃあ……やるぞ!」