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ガブリエル戦記  作者: やよいつや
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第1話 青雲之志

ここは、魔物と人間が暮らす世界。


……とは言っても、平和に暮らしているわけではない。


分かり合えない両者は、幾度の戦争を繰り返した。


結果、人類が当たり前のように勝利し、敗者となった魔物たちは人類と幾つかの契約を残し、世界の裏側へと姿を匿った。


その契約のうちの一つが、とても不可解なものだった。


「人類と魔族は、千年に一度だけ、必ず戦争を行う。」




「あっ!ママ見て!遠征軍だよ!」


キャプテンゼーレン率いる遠征軍が、都市部の中心に位置する大通りにて、市民らの歓声に迎えられる。


「いいなー私も将来戦闘員になって、人間たちをやっつけにいきたい!」


ハーピー族の少女が、キャプテンゼーレンに向かって手を振った。


「おう!気勢のあるお嬢ちゃんだな!いっぱい食べて、早く大きくなるんだぞ!」


キャプテンゼーレンは、その赤く逞しい触手で少女の頭を撫でた。ちなみに彼女は毎朝触手の滑りを丁寧に洗い落としているので少女の髪の毛に粘液がべっとり、みたいなことはない。


周囲の女性陣から、黄色い歓声が上がる。


「わあ……太くて力強い触手……すごい……」


ハーピー族の少女はその場で立ち尽くし、うっとりしてる。今日の出来事が、彼女に変な趣味を植え付けないことを願おう。


「ふーん……あれが遠征軍か」


イザナミライは、遠くの木の上で遠征軍を見ていた。


「ヘヘッ……おっと時間がきたみたいだ……よっと」


ライは身軽い動きで、木から飛び降りた。


「きゃっ」


「おっとごめんごめん、驚かせちゃったね。」


落下地点の近くで歩いていた少女を後に、ライは先を急いだ。


「もうなによあの人……」


少女の碧色の髪の毛が、フワッと、そよ風に揺らされた。




「次!イザナミ、ライ!」


「あいよ!」


場所は変わって。森の一角に位置する訓練所で、新人戦闘員の強さ測定が行われている。


ライはサンドバッグのような物体に向かって、全力で拳を振り下ろした。


「!っ……うん!なかなかやるな!B+だ!」


「よっしゃー!……あー、B+って、どのぐらいなんだ?」


「そうだな……中の上ってとこかな?頑張れば中ボスを目指せそうだな!もちろん、もっと上を目指して俺を裏切ってくれよ!」


「サンキュー!オッチャン」


魔物の戦闘員は、大雑把でアンコモン、レア、シンボル、ボスに分かれる。

ボスは、中ボスとラスボスにも分けることができる。もちろん、ラスボスの上にも階級が存在するが……それはまた後の話だ。


「おー!今の一撃すごかったゴブ!人間のくせになかなかやるゴブ!」


「ありがとう!お前も見た目によらずなかなかやるな!ゴブ田」


ついさっき知り合った、ゴブリン族のゴブ田だ。ゴブリン族は、全魔族の中でも三本の指に入るぐらい、大きな民族だ。ちなみに、ゴブ田の成績はB−だった。


「そういえば、さっきA+を出した魔物が二人もいたゴブ!毎年一人でるかどうかのA+を、二人も見ることができるなんて、幸せだゴブ!」


「へえー!すごいなそれは!どんな奴かわかるか?」


「一人は魔人族のいかにもエリート!みたいな男の子だったゴブ!もう一人は……わからないゴブ……実戦演習でそいつらと組んでみたいゴブ!」


「そりゃー楽しみだな…ヘヘッ」


そうして、イザナミライの戦闘員としての初日が終わった。


「以外と普通だったな……なあ、父さん」


ライは空を見上げ、呟いた。




一方。


「……これで100体目か。つまらん」


少年は地面に横たわるゴブリンの死体を一蹴し、横にいた女性に話しかけた。


「……いつもどおり慈悲のかけらもありませんね……」


「無駄な口を言うな。さっさと帰るぞ」


少年は女性を横目で睨んだ。


「……わかりました、勇者様♡」




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