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赤紫のマフラー

作者: クリス
掲載日:2018/01/17

集合場所である駅の改札へと着くと、赤紫のマフラーに首を埋めた女の子が、既に立っていた。まだ集合時間10分前であるのに、先に来ているのが彼女らしい。彼女は僕と同い年だが、同年代よりも、しっかりしている。僕は少し早足で駆け寄り、声をかける。

誰もが振り向くほどの美人とこれからデートする喜びと、緊張を悟られないように。

「ごめん、待たせた?」

「おう!」

読んでいた本を鞄にしまいながら、彼女が言う。

普段礼儀正しい彼女は、何故か僕にだけ、おう!と挨拶をするのだ。こういったところが、美人でしっかりしていても、人に親しさを感じさせるところなんだろう。

「全然待ってないよ。それにまだ、約束の時間の前だしね」

「よかった、じゃあ行こっか」

彼女は

「ちゃんとエスコートしてよね」

といいつつ、僕のよりも先に歩き始めた。


目的地に向かう彼女の歩くスピードは、そこらへんの女子よりも早い。だが、僕よりは遅い。

僕は意識して、彼女の歩幅に合わせる。

「改札に来る前、何してたの?」

と、彼女が尋ねてきた。赤紫のマフラーが、白い肌にとても映える。

「ほら、あそこに本屋があるだろ?そこに居たよ」

「ふふっ」彼女が突然笑う。

「何かおかしかった?」

「実は、私もそこにいたの。しかも、君、本屋で見たよ」

「ええっ」思わず、声を上げて驚いてしまった。なぜ彼女の前では、自然と素直な反応をしてしまうのだろう。

「何で声かけてくれなかったの?」

「真剣そうな顔で、本選んでたからさぁ。君よりも先に本買って、改札で読みながら待ってた。もうすぐ読み終わるよ」

確かに本を選ぶときは、かなり真剣だと自分でも思う。そして、他の客の顔なんて見ていない。

「あ、買ったのって、さっきしまった本?」

「そうそう、これだよ」

そう言い、彼女が持っていた本の表紙を見せる。その瞬間、思わず言葉を失った。

それは、僕が買った本と同じだったからだ。それに、彼女は僕よりも早く買っていた。そして彼女は既に読み終えようとしている。


僕は悟った。きっと僕は、彼女には永遠に追いつくことが出来ないと。

心に鈍い痛みが広がっていくのを、ただ受け止めることしか出来なかった。

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