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第一話 近接系魔法使いになりまして

はじめまして、存在感が消え過ぎた物体です!感想とかお待ちしております!

目の前の机にドンッと紙袋が置かれる。


「ほれ、例の品だ」


「すまんな、わざわざ」


「いいってことよ、親父のコネでもらったんだし!」


「じゃ、今から開始までにコレの設定するからまた学校でな」


「おう、じゃあな!」


そう言って彼は俺の家から去って行く。

俺はすぐに渡された紙袋からヘルメットとヘッドフォンを合わせた様な『ドリーム』という機械を取り出す。これは最近開発された完全没入型のVRゲーム用のヘッドセットで、これを持ってきた俺の友人である高瀬たかせ ゆうの父親は、これを作った会社の人と知り合いらしく、譲って貰ったのだが佑は今日発売の『ファンタジー・ワールド・オンライン』というゲームの千人限定のβ版の体験時にドリームとゲームを運営からプレゼントされているので、買う予定だった俺がそれを貰ったと言う訳である。


「さてさて…ゲーム開始時間までに早く設定終わらせないとな」


そしてすぐさま自室に行き、PCと接続したり身体の読み込み等々を手早く済ませて開始時間の12時までに特に問題もなく設定を終わらせる。

少し仮想世界での動作確認とかもあったけど一言言わせて貰おう。


リアリィティすげぇ!?


仮想世界なのに触覚や痛覚も普通に機能していて身体を動かすのにも全く違和感無し、今まで現実で身体を動かすVR程度が限界だったのに一気に技術進化し過ぎだろ。


「もうそろそろ12時だな」


昼食も早めに食べて、今日は夜までする予定なので水分もきっちり摂って準備よし。

ドリームを被ってベッドに仰向けに寝転がって時間を待つ。


「佑はβ版してたけど、俺みたいにワクワクしてんのかなぁ」


のんびりと今の佑の様子を考えていると、時間までとうとう10秒を切った。


「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1…」


よし、いくぞ!


起動(スタート)!」


その言葉と共に俺の意識は強制的に途絶えた。

しかし、それも一瞬、すぐさま意識が戻り瞼を開く。


「おぉ…」


そこは自室ではなく真っ白な空間で、目の前には『アバターを作成』と書かれたウインドウが空中に浮かんでいた。


「よし、さっさと終わらせて始めるか」


ウインドウをタッチすると『アバター名を入力して下さい』と表示される。


「名前かぁ…」


ここは単純に俺こと八神やがみ 慎二しんじ呼び名の『シン』を入力してっと。


YESで決定すると次は『見た目を調整しますか? YES/NO』と表示されるので、面倒臭いし髪の色を変えるくらいしか出来ないのでNOを押して次に進む。


さて、ここからがFWOファンタジー・ワールド・オンラインで一番重要な『ジョブ』と『スキル』の決定だ。

まず、このゲームにはジョブが6つある。


一つ目は力と敏捷が高く、大抵の近接武器を扱えるアタッカーの戦士。


二つ目は体力と防御力と魔法への耐性が高いタンクの聖騎士。


三つ目は弓や短剣をよく扱い、素早く器用な狩り人。


四つ目はファンタジーでは定番の体力と力は無いが高火力の範囲攻撃などが行える魔法使い。


五つ目は剣と身体能力を強化する魔法を扱え、強化した力で敵を圧倒する魔法剣士。


そして最後は杖と魔法を使って遠近両方をこなせる魔杖師。


この六つから一つを選ぶのだが、この『魔杖師』というジョブはβ版体験者により作られた攻略サイトなどでは一言で表すとこう言われている。


『不遇職』


なぜこんな事を言われているかと言うと、理由は単純。このゲームではジョブによってステータスの上がりやすさが違うのだが、魔杖師はMPと魔法の威力が上がるINTと力が強くなるSTRが上がりやすく、逆にHPと防御力が上がるVITと器用さが上がるDEXが上がりづらくなっている。

つまり、近接が出来るといっても攻撃を受けるとVITが低くてすぐ倒されるので、結局魔法使いと同じように遠距離からしか攻撃しなくなるがMPも魔法使いよりは低いので魔法使いの下位互換と言う訳である。


とまあ長々と説明したが要約するとこうである。


『魔法職に近接なんて不要』


こんな感じで魔杖師というジョブは誰も就くことのないクソジョブへとなったのである。


「ま、俺は選ぶんですけどね」


迷わずに魔杖師をタップして『本当によろしいですか?』と出たのをYESを押して決定した。クソジョブ?何それ美味しいの?


そして次にスキル決定画面へ移動して『スキルを10個選択して下さい』と表示されるので既に決めていた10個のスキルを探して決定っと。

最後に今まで決めたジョブとスキルを合わせたステータスが表示されるので、初めに支給される5SP(ステータスポイント)をステータスに振り分ける。



【ステータス】


ジョブ:魔杖師

レベル:1


HP 100/100

MP 150/150


STR 15

VIT 5

DEX 5

AGI 10

INT 15

MND 10


【スキル】

【杖Lv1】【魔力操作Lv1】【魔法威力上昇Lv1】【魔法付与Lv1】【詠唱短縮Lv1】【土魔法Lv1】【無魔法Lv1】【格闘Lv1】【投擲Lv1】【跳躍Lv1】【一撃回避Lv1】【生産の心得Lv1】


俺の予定している戦闘スタイルは魔法職と言われるジョブでは型破りな完全近接型、スキルもその為にゴミスキルと言われるモノを数多く取った。唯一まともなスキルは魔法職には必須の【魔力操作】と【詠唱短縮】、生産をする人には必須の【生産の心得】だけである。

スキルは合計12個、ジョブを選択時に二つのスキルを自動習得したのでこんな微妙な数となった。ちなみに魔杖師の獲得スキルは【杖】と【魔力操作】だった。


話が逸れたが、俺は近接に必須のSTRと、俺の考えているスタイルは魔法も使うのでINTに均等に2SPずつ振り分ける。後1SP残っているがどれに振ろうか。


「うーん、やっぱりここはAGIに振って少しでも素早く動けるようにするべきか…」


やはり逃げる事にも使えるのでAGIに1SPに振って、迷わない内にさっさと決定を押す。



【ステータス】


ジョブ:魔杖師

レベル:1


HP 100/100

MP 190/190


STR 17

VIT 5

DEX 5

AGI 11

INT 17

MND 10


【スキル】

【杖Lv1】【魔力操作Lv1】【魔法威力上昇Lv1】【魔法付与Lv1】【詠唱短縮Lv1】【土魔法Lv1】【無魔法Lv1】【格闘Lv1】【投擲Lv1】【跳躍Lv1】【一撃回避Lv1】【生産の心得Lv1】



『これでよろしいですか?』


YESをポチッと押す。


『チュートリアルを終了します、どうぞファンタジー・ワールド・オンラインをお楽しみ下さい』


無機質なアナウンスと共に俺の身体は光に包まれ、沢山の人で賑わう初めの街『イェロ』へと降り立った。


「すっげぇ…」


恐らくこれを体験すれば全ての人が感動するだろう。現実の様に輝く太陽、追いかけあって遊ぶ子供達や知り合い同士で立ち話をする表情豊かでプレイヤーと言われても納得しそうなくらい人間らしい行動をしているNPC達、リアルって聞いてたけどここまでとは思ってなかったぞ…。


「と、関心するのはここまでにして取り敢えずは初期装備の確認と…」


装備画面とインベントリを開いて説明を見たりしていく。


「えーと、所持金は1000エル…リアルに換算すると千円か」


少ない気もするが周りのNPCが運営している店などを見ると一番安い武器の値段は200エルと随分安価なので丁度いい位か。


「所持品は初心者ポーション10個とMPポーション10個で装備は魔杖師の杖と布の服と皮の靴か」


魔杖師の杖を手にとって見てみると、大きさは170センチある俺の身長と同じ位で先には赤い宝石の様な物がつけられている。ここまではまだ問題ない、でも杖先を見てみる。


「うわぁ…」


滅茶苦茶尖ってらっしゃる…。


魔杖師の杖の説明欄を見てみると『初めに貰える魔杖師用の杖。決して魔法使いが使う様な杖ではない、木製だが尖ってるのでちゃんと突き刺せる。』そりゃそうだろうな、こんなに尖ってても敵を刺したりしないからな、魔法使いは。


「もういいや、なんか疲れたからスキルの実験とレベル上げに行こう…」


俺はげんなりしながらこの街を出たところにあるはずのモンスターの生息する森(佑に聞いた)へ向かう為に歩いていると、周りから視線を感じる。


「あぁ、そういや職業毎に装備違うからネームとかジョブが表示されなくても分かるのか」


ま、視線を向けてる人達も初対面の人に突っかかったりしないだろうし気にしなくても構わんか。

でもずっとこの視線を浴びるのも嫌だし、武器を隠したり出来る服というかローブでも後で探さないとなぁ。


「ま、のんびり頑張りますか」


そして俺は街の外へと足を踏み出した。

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