関東1・越後・京5
ここは相模の小田原城。
「ついに関東を制覇したぞ!」
「殿! おめでとうございます!」
関東の雄、北条氏康が率いる北条軍が相模・安房・上総・下総・常陸・武蔵・上野・下野の関東8国を制覇した。そこに慌てた伝令の兵士がやって来た。
「一大事でござる!?」
「どうした!? 何事だ!?」
「領地で疫病が発生しました!?」
「疫病だと!?」
北条の領地で謎の疫病が発生した。その疫病は毒のような疫病で、命を奪うほどではないが体の自由を奪うほどの毒素があった。
ここは関東の上空。
「いけ! お兄ちゃんを探すのだ!」
「ああ・・・本当に伊豆諸島を制覇しちゃった。」
「ちいの命令よ! お友達のみんな! お兄ちゃんを見つけるのよ!」
「本州まで来ちゃったよ。」
上空に竜の背中に1人の女の子が乗っている。ライの妹のちいだ。名前の由来はライ曰く「小さいから」だそうだ。
「ティアマトお姉さん!」
「はい!?」
「もっとお友達にしっかりお兄ちゃんを探すように言って!」
「は、はい!」
この幼子に尻に退かれているのが全身が毒で出来ているティアマト竜こと、ティアマトお姉さんである。ティアマトお姉さんには11匹の素敵なお友達がいて、ティアマトお姉さんと愉快な仲間たちと呼ばれている。
「みんな! ライをくまなく探しなさい!」
「ガオ!」
そう、北条家の領地で流行っている疫病の原因は、ライを探している全身が毒で出来ているティアマトお姉さんの愉快な仲間たちであった。
ここは越後。
「ここに次の竜、氷竜さまがいらっしゃいます!」
「そして私が氷竜様の使い氷ちゃんです!」
「氷ちゃん!」
「雪ちゃん!」
「わ~い!」
もちろん雪と氷は仲良しであった。なぜ氷ちゃんがいるかというと、越後に入ったライたちを迎えに生きたのだ。
「これなら簡単に氷竜さまに会えそうですね。」
「あま~い!」
「え?」
「現状は最悪ですよ!」
「どうしてですか?」
「越後の氷竜さまと甲斐の地竜さまがケンカしてるのよ!」
「竜同士がケンカ!?」
「困った竜でござる。」
「おまえが言うな!」
「忍法! 逃亡の術!」
危機を察知した師走ちゃんは逃げていった。竜同士が戦う、本当に困ったものだった。越後は寒波に見舞われ、甲斐は自信に覆われていた。これも全て氷竜と地竜がケンカしているからであった。
「まず氷竜さまに会ってみよう。」
「そうね、行ってみましょう。」
「氷ちゃんが案内します!」
こうしてライたちは氷竜に会いに行くことになった。氷竜が海にいるというので海辺に移動した。
「海が凍ってる!?」
「氷竜さまは氷が好きなんだ! 海を凍らして居心地よく暮らしていらっしゃる。」
「なんと迷惑な。」
「雪ちゃんと氷ちゃんが仲良しなのが分かる気がする。」
「氷ちゃん!」
「雪ちゃん!」
「いえ~い!」
凍らした海にいるという氷竜が、地上のうるささに氷の海から氷を割らずに透き通って地上に姿を現した。
「うるさいぞ! 氷!」
「あ、氷竜さま。」
「あ、じゃない!?」
「氷竜さま、雪ちゃんが遊びに来てくれました!」
「お久しぶりです! 氷竜さま!」
「うむ、他の人間はなんだ?」
「おまけです。」
「誰がおまけだ!?」
「そうか、おまけか。」
「納得するんですか!?」
雪ちゃんと氷ちゃんの仲良しコンビに翻弄されるライたちであった。自己紹介も終わり、ライは本題に入る。
「氷竜さま、どうして地竜さまと戦っているんですか?」
「それはお互いに認めた人間が、たまたま敵同士だったというだけだ。」
「え、それだけなんですか!?」
「それだけだ。」
「じゃあ、まず氷竜さまの認めた人物の所へ行ってみましょう。」
「謙信の所に案内します。」
氷竜と地竜の戦っている理由が分かった。ライたちは氷ちゃんの案内で越後の龍といわれる上杉謙信に会いに行くことにした。
ここは上杉謙信の居城、春日山城。
「謙信! 遊びに来たぞ!」
「氷ちゃんか。それにお供の者共も。」
「誰がお供だ。」
「お友達なんだから、まあ、いいじゃないか。」
「さすが! 雪ちゃん!」
「氷ちゃんは親友だもん!」
「わ~い!」
雪ちゃん氷ちゃんコンビに振り回されるライたち。この楽しそうに踊っている2人は相手にせず、ライたちは本題に入る。
「謙信さん。」
「なんだ?」
「地竜さまの認めた甲斐の人間と戦っているらしいんですが、仲直りしてもらうことはできませんか?」
「それは相手次第だ。相手が攻めるから、こちらも応戦する。攻められれば、逆にこちらからも攻める。自然の流れだ。」
「そんな戦ってばかりでは、戦いが終わりませんよ!?」
「甲斐の武田信玄に言ってくれ。」
越後の上杉謙信と甲斐の武田信玄の戦いが氷竜と地竜の戦いになってしまった。なんとかして和睦してもらわないと、ライは氷玉と地玉を手に入れることができない。
「仕方がない。ここは氷ちゃんが地ちゃんと話をつけてやろう。きっと竜の使い同士なら争いも解決することができるだろう。」
「頼んだぞ、氷ちゃん。」
「任せておけ!」
「さすが! 氷ちゃん!」
「雪ちゃんも手伝ってね!」
「わ~い!」
こうしてライ・伊達政宗・上杉謙信は氷ちゃんと雪ちゃんを護衛するために一緒に信濃へと旅立ったのだった。
ここは京。鬼製造工場。
「どうだ? 卑弥呼。」
「紫式部さんたち。」
「おお、おもちゃ大好きっ子はまだ生きていたか。」
「おまえこそ壁から出られたんだな!」
「2人は仲がいいね。」
「黙れ、清少納言。そんなことはどうでもいい。」
「すいません。」
「0式の様子は?」
「順調ですよ。」
「そうか、これは私たちの希望なのだから。」
紫式部は鬼0型をじっと見つめる。従来の鬼とは違い、自分の意志を持つ鬼。そして歴史に名を残す者の能力を取り入れることができる。今までに源頼朝、藤原道長、足利尊氏の能力を手に入れた。
「あれ? 平清盛はいないんですか?」
「清盛は陰陽師に連れていかれた。」
「ええ!?」
「私たちは陰陽師に呼ばれれば逆らうことができない。だからこそ、この鬼0式が必要なのです。」
紫式部はいたずらに甦らせた陰陽師に良い感情を持っていない。さっさと三好の武将が陰陽師を殺してくれれば、自分たちの魂も元の世界に帰れるのにと思っている。
「出てきたらどうですか?」
「気づいていたか。」
「三好家の軍師、松永久秀さんですね。」
「ほお、そこまで知っていて後をつけさせたのか?」
「はい。0式の性能を試したかったので。」
「これは舐められたものだ。悪いが多勢に無勢。最初から全力で行かせてもらうぞ!」
「どうぞ。こちらもそれを望んでいます。」
「いでよ! 悪魔プルフラス!」
松永久秀の体から闇が広がっていく。そして闇は松永久秀を呑み込み、闇の熊の姿になり悪魔プルフラスに変わる。
「卑弥呼。0式を起動しなさい。」
「はい。」
卑弥呼がスイッチを押すと鬼0式の目が光る。ついに鬼0式が動き始める。鬼0式の性能によっては、今後の歴史に名を残す者の運命が決まる。
ここは三好屋敷の前。
「なんだ!? おまえたちは!?」
「三好の手の者か!?」
「私は三好政康だ! 名を名乗れ!」
「将軍足利義輝さま直々に雇われた天才陰陽師安倍雲明とは私のことだ!」
「知らん。」
「なんだと!? 無礼な! 俺様の名前を知らないとは許せん! 聖徳太子! こんな奴、殺してしまえ!」
「今、結界を壊していて無理です。」
「俺様の命令に歯向かう気か!? クソ! まあいい。こういう時のためにもう1人連れてきていたんだ。こいつを殺せ! 平清盛!」
「・・・。」
歴史に名を残す者たちは魂を甦らせた安倍雲明の言うことは絶対である。安倍雲明が強制することには歯向かうことができないで、自分の意志とは関わりなく体が勝手に動いてしまう。
「・・・。」
「なんという怪力だ!?」
無言で剣を抜いて襲い掛かる平清盛の攻撃を剣で受け止める三好政康。しかし平清盛の力がとても強く、攻撃を受け止めた衝撃が地面にひび割れを作る。
「どうだ? 平清盛の力は? 俺様の想いのままに動かすことができるんだぞ! ワッハッハー!」
「アホはどうでもいい。だが・・・こいつの1撃をこのまま食らうのはまずいな。」
「誰がアホだ!?」
「・・・。」
「できれば、この悪魔の姿にはなりたくないが仕方がない。いでよ! 悪魔ベリト!」
三好政康の体が闇に覆われ、姿が悪魔に変わっていく。中から石頭の悪魔ベリトが現れた。残念なことに服装は侯爵風だったが少し頭が大きかった。
「ハッハッハ! なんだ!? その頭は!? ハッハッハ!」
「クソ!? だからこの姿にはなりたくなかったんだ・・・。」
「・・・。」
「だが、これで化け物と戦える。」
三好政康が悪魔化し悪魔ベリトと歴史に名を残す者の平清盛の戦いが始まった。石頭と怪力の戦いであった。
「どんなに力が強くても頭で全て受け止めてやる!」
「・・・。」
「今度はこっちの番だ! 石頭の頭突きだぞ!」
「・・・。」
平清盛の怪力の1撃をベリトは頭で防ぐ。逆に攻撃する時は固い頭で突撃して攻撃する。無口な平清盛だが、相手のことを認めたのか、徐々に戦うのが楽しくなってきた。
「・・・俺と戦える者がいるのだな。」
「おまえしゃべれるのか?」
「話す価値のある相手がいなかっただけだ。」
「確かに三好家の者以外で、これだけ強い者とであったのは初めてだ。」
「いいことを教えてやろう。強くなりすぎると後は弱くなるだけだ。気をつけろよ。」
「それはいいことを教わった。覚えておこう。」
三好政康と平清盛は敵同士であるが、お互いの強さを認め合い会話も弾むようになった。しかし、その様子を見ていた陰陽師は楽しくなかった。
「なに石頭と遊んでいる!? 相手は敵だぞ!? 敵!? 無駄口を叩いてないで、さっさと殺せ!」
「・・・。」
「どうした? 平清盛?」
陰陽師の命令に平清盛は意識の自由が利かなくなる。言葉をしゃべることができなくなり、剣をベリトに振り回し攻撃してくる。
「そいつは俺様が甦らしたんだ! 俺様の命令には絶対服従するのだ!」
「なんと卑劣な!?」
敵側である三好政康であるが、陰陽師安倍曇明の話を聞いて怒りがこみ上げてくる。死者の魂を愚弄する行為をしているのである。陰陽師の立場を利用して、故人の尊厳を踏みにじっているのである。
「俺様が足利幕府を支えて、幕府公認の日本国で1番の陰陽師になるのだ!」
これが安倍雲明の野望である。どうしても同じく陰陽師の安倍晴明と比べられ不毛な扱いを受けてきた安倍雲明は劣等感の塊で、どのような手段を使ってでも自分の存在を高めたかったのだ。
「ゴミのようなヤツだ。平清盛、おまえの無念は私が代わりに晴らしてやろう。死ね! 陰陽師!」
「防げ!? 平清盛!?」
「・・・。」
しかし平清盛は1っ歩も動かなかった。平清盛は三好政康と剣を交えお互いを認め合った。自分は自由が効かないが、敵であるのに自分がしたくてもできないことをしてくれようとしているので、できる限りのことをしていた。
「動け!? なぜ動かいない!? ギャア!?」
「もらった! 石頭の1撃!」
悪魔ベリトの破壊力抜群の石頭が陰陽師安倍雲明に命中しようとしていた。安倍雲明にはなぜ平清盛が動かないのかが理解ができないので慌ててパニック状態だった。
「十七条憲法。」
突進していたベリトの動きが急に止まる。ベリトはなぜ自分の動きが止まったのかが理解できない。安倍雲明は声のした方向を向く。
「聖徳太子!」
「聖徳太子だと!?」
「・・・。」
「十七条憲法。第一条、陰陽師さまを守らなければならない。」
「そ、その通りだ!」
「第二条、陰陽師さまの命令は聞かなければいけない。」
「そうだ! そうだ!」
「第三条、陰陽師さまの敵は倒さなければいけない。」
「そうだ! やっちまえ!」
三好屋敷の結界に穴を空けることに成功した聖徳太子は陰陽師安倍雲明を守りに来た。歴史に名を残す者の中で最強の聖徳太子が来たことで、安倍雲明は百人力を得た。
「冠位十二階、滅亡。」
「なんだ!? バカな!? うわあ!?」
聖徳太子が放つ光が悪魔ベリエを光の中に消し去る。この世界から三好政康の存在が一瞬で消えてしまった。
「おお! でかしたぞ! 聖徳太子! 次は裏切り者の平清盛も消し去ってしまえ!」
「陰陽師さまの仰せのままに。」
「・・・。」
聖徳太子が陰陽師安倍雲明の命令通り平清盛の方を向く。安倍雲明に甦らされたので、安倍雲明の言うことは絶対なのである。聖徳太子であっても逆らうことはできなかった。
「すまない、平清盛。私にはまだやらなければいけないことがある。」
「・・・。」
「冠位十二階、滅亡。」
「・・・。」
聖徳太子が光を放つ。光は平清盛を包み込み一瞬で平清盛の存在を消し去る。聖徳太子も平清盛も表情を一切変えることはなかった。
「終わりました。」
「よくやったぞ! 聖徳太子!」
「三好屋敷の結界に穴を空けることに成功しました。」
「よ~し! 鬼を三好屋敷に送り込め!」
「かしこまりました。鬼ども、突撃!」
「ガガガ!」
ついに鬼が三好屋敷に流れ込んでいく。結界で守られていた三好屋敷の中には三好長慶しか残っていなかった。
つづく。




