出羽2・京4
ここは出羽。
「なまはげが並んでお出迎えしてくれている!?」
陸奥から出羽にやって来たライたちを歓迎するかのように左右に分かれてきれいに並んでいる。
「待っていたぞ! 伊達政宗!」
「何者だ!?」
「私たちは妖怪3人衆だ! 金剛石!」
「鋼玉!」
「黄玉!」
「妖怪3人衆!?」
ライたちの前に現れたのは妖怪3人衆の金剛石・鋼玉・黄玉だった。狙いは若武者の伊達政宗との手合わせだった。
「勇猛な武者がいると聞いて遊びに来てやったんだ。御手合せと願おうか。」
「おまえたちを倒せば出羽に平和が戻ると言うのなら受けてたとう。」
「さすが噂になるだけのことはある。いいだろう。3人の中から好きな相手を選べ。そいつに勝てたら大人しく退散してやろう。」
妖怪3人衆はよっぽど自分たちに自信があるのだろう。伊達政宗と1対1の勝負で良いというのだ。
「俺の相手は・・・おまえだ。」
「ほお、真ん中の私を選ぶとは面白い。受けてたとう。」
伊達政宗は妖怪3人衆の中から金剛石を選んだ。妖怪3人衆のリーダー格でおそらく1番強いであろう金剛石を選んだのだった。そして2人の戦いが始まる。
「いくぞ!」
「こい!」
「もらった!?」
油断しているのか隙だらけの金剛石に伊達政宗は剣で斬りかかった。確実に相手を斬ったと思った瞬間、伊達政宗の剣は金剛石の体に当たり折れてしまった。
「こんなものか・・・ガッカリだ。せっかく楽しみにしていたのに・・・所詮は人間か。」
「なんだと!?」
「死ね。」
金剛石は刀を抜き一思いに伊達政宗に突き刺そうとする。伊達政宗は強敵のあまりにも絶望の大きさに茫然自失している。
「なんだ? おまえは?」
「政宗さんは殺させない!」
金剛石の刀をライが刀で受け止め伊達政宗の窮地を救う。しかし、これは伊達政宗と金剛石の1対1の決闘であった。
「人間の癖に1対1の決闘を汚すとは許せん!」
「なに!? これのどこが決闘だ!? 最初から自分が勝つのが分かっていて申し込んでいるじゃないか!?」
「それも決闘だ。」
「なら、今度は俺がおまえに決闘を申し込む!」
「なに!?」
「受けてくれるんだろうな?」
「いいだろう。決闘を汚した罪は命で償え。」
ライと金剛石が戦うことになった。強引であるが伊達政宗を救うためには、これしか術がなかった。
「死ね!」
「誰が死ぬか! 雪竜破!」
「なに!?」
ライは4竜雷剣から吹雪の竜を解き放つ! 不意を突かれた金剛石は吹雪に覆われ雪だるまになってしまう。
「カッコイイ!」
「なぜに雪だるま!」
鋼玉と黄玉はライの放った雪竜よりも、金剛石が雪だるまになった方が面白く、ライという少年に興味を持った。
「いいね。人間にしてはおもしろい。」
「竜を放てる者が人間な訳がないだろう。」
「あ、そっか。1対1の決闘を汚したのもそっちだし、なら俺たち2人がかりでもいいってことだな。」
「楽しませてもらおうか。」
「くうっ!?」
鋼玉と黄玉が2人同時にライに襲い掛かってくる。辺り一面が雪の中、ライは足を雪に取られながら子供のようにあしらわれる。
「オラオラ! どうした? さっきの威勢はどこに行った!?」
「クソ!? 雪竜斬!」
「おっと!? それさえ避ければ怖くない!」
「竜の力が使えるおまえは何者だ? 人間じゃないよな?」
「俺は人間だ!」
ライは苦戦を強いられる。津軽海峡で再会した8首竜の鎧を身にまとったカーと同格、いや、それ以上に鋼玉と黄玉は強かった。
「なんとかしなくっちゃ!? おい! 伊達政宗! ライはおまえを助けるために慣れない雪場の戦いを買って出たんだぞ! おまえも戦え!」
「わ、私なんかじゃ、あいつらには勝てない・・・。あんな化け物どもに勝てる訳がない!?」
「バカ野郎! 」
「な!?」
「勝てないからって諦めるのか!? ライはどんな時でも諦めずに戦っているぞ!」
「グサ!?」
勇猛果敢で名の知れた伊達政宗だったが、妖怪3人衆の化け物のような圧倒的強さに戦意を無くしていた。しかし女にダメ出しをされ、子供に戦わせている自分の姿が情けなく思えた。
「こうなったら雪ちゃんが雪竜さまに変身して!?」
「私がいく。」
「伊達政宗!?」
「女は座って見ていろ!」
勇気を振り絞り伊達政宗は自分では敵わないと分かっている敵に突撃していく。手足の震えは止まらないが自分を奮い立たせる。
「でやあああ!」
「政宗さん!?」
「弱いのが来た。」
「おまえ相手してやれよ。」
「いやだ。」
「大丈夫か!? ライ!?」
「はい、ありがとうございます。」
ライと伊達政宗、鋼玉と黄玉の2対2の戦いになった。これでライの負担も少しは軽減され反撃に転じる。
「いくぞ! 雪竜斬!」
「くらえ! 独眼竜斬り!」
「なんだ!? さっきより動きが良くなっている!?」
「人間のことは妖怪の我々には分からんな。」
「いけますよ! このまま攻撃しましょう!」
「おお!」
ライと伊達政宗の連続攻撃に少しだけ怯む妖怪たち。攻撃に恐怖を感じた訳ではなく、人間というものの理解に苦しむのであった。
「ぷはー!? やっと出られた!」
「金剛石!?」
「ダサイ。今まで雪だるまの中かよ。」
雪竜破が命中して雪だるまに閉じ込められていた金剛石が雪だるまを壊して雪の中から出てきた。かなり体は冷えてしまったようだった。
「寒い。帰るぞ。」
「ええ!? こいつらはどうするんだよ!?」
「なまはげで十分だろう?」
「そんな!?」
「私がかぜを引いてもいいというのか?」
「ゾク!?」
「わかったよ。帰ろう、帰るよ。なまはげども、後は任せたぞ!」
「はい!」
金剛石の一睨みに鋼玉と黄玉は背筋が凍るような恐怖を感じた。硬度で劣る自分たちは決して金剛石には勝てないのである。妖怪3人衆は後を人食いなまはげに任せて去って行った。
「助かった? というより相手にされてなかった?」
「大ピンチは脱したが、次のピンチが・・・。」
「なまなま!」
人食いなまはげの大群がライたちを取り囲み、いつでも襲い掛かれる準備に入っている。またまた絶体絶命のピンチ。
「ゴゴゴゴゴ?」
「雪崩だ!?」
「雪ちゃんに捕まれ!」
「ギャア!?」
突然、雪崩がライたちを襲ってきた。雪ちゃんは雪竜の使いらしく人間かまくら的に雪崩の中でも大丈夫。逆に人食いなまはげは雪崩に流されて全滅する。雪の中から雪ちゃんに守られながら、ライと政宗も地上に出てくる。
「はっはっはっ! どうだ師走ちゃんの実力は!」
「まさか!? この迷惑な雪崩は師走ちゃんが!?」
「そうだ! 忍法雪崩の術だ!」
説明しよう。師走ちゃんはへっぽこ忍者の睦月ちゃんの分身なので、危険を察知すると安全な所に身を隠す。たまたま雪山に身を隠し足を滑らして転がった雪が雪崩になり、たまたま人食いなまはげを一掃したのだった。
「私が雪に強い師走ちゃんで良かったな! ワッハッハー!」
「私の陸奥の兵士も全滅なんだがな・・・。」
「あ!? 師走ちゃんが逃げる!?」
「危険を察したら身を隠すのは優秀な忍者の証でござる!」
「待て! へっぽこ忍者!」
「待てと言われて待つのなら、忍者は要らぬでござる!」
こうして平和に、出羽と陸奥を制覇した。
ここは京。足利屋敷。
「ちっ、手間取ったぜ。俺もまだまだ鍛錬が足らないな。」
ヤマトタケルと足利尊氏の歴史に名を残す者対決は、15個の命を持つ足利尊氏を覚醒した日本武尊が倒した。しかし覚醒も解け疲労困憊であった。
「なんなんだおまえたちは妖か!?」
「ん!? 三好の侍か!?」
「私の名前は三好長逸。弱っているところ申し訳ないが死んでもらう。」
足利屋敷に現れた三好長逸がヤマトタケルに襲いかかろうとする。その時、地下の隠し部屋から紫式部たちが現れる。
「足利義輝は死んだぞ。」
「なに!? 将軍が死んだだと!?」
「そうだ。三好義賢という者が将軍の首を斬り落とした。」
「義賢が!? 義賢はどこにいる!?」
「さっきの化け物に殺されたよ。」
「なんと!? 義賢・・・。」
三好長逸は将軍足利義輝の死よりも三好義賢の功績と死を思った。紫式部の話の進め方は三好長逸の戦意を削いだ。
「我々を見逃してくれるなら、ここにいる将軍の弟も、そなたに引き渡してもいいぞ。」
「なに!? 足利義昭を!?」
「我々は他にやることがある。ほれ。」
「うわあ!? 殺さないで!? 助けて!?」
歴史に名を残す者たちは三好長逸に次期将軍であろう足利義昭を引き渡した。そして一言言い残して消えていく。
「帰り道には気をつけなさい。」
「なぜだ?」
「そんなことも分からないのか?」
「出ますよ! 紫式部さまの必殺の一言!」
「あほう。黙りなさい。清少納言。」
「わ、私ですか・・・うるさくて、どうもすいません。」
「あなたたちが悪魔なら、この辺りはもう天使臭いですよ。」
「天使?」
紫式部の言葉の意味は分からなかったが、三好長逸は足利義昭を生け捕りにして三好長慶の元に帰れることはうれしかった。
「こら、歩け。」
「助けてください!?」
「ん!? なんだ!?」
三好長逸が足利義昭を連行しながら歩いている。辺りが不思議と黄金のように輝き始め、1人の異形の者が天より舞い降りてきた。
「その人をこちらに引き渡してください。」
「何者だ!?」
「ただの通りすがりの天使です。」
現れたのは天使。紫式部が天使臭いと言っていたのは、京に天使が舞い降りているということだった。悪魔が天使を呼びとせてしまっていた。
「私は三好長逸だ。名を名乗れ。」
「織田家の家臣、明智光秀。そして、またの名を天使ウリエル。」
「天使が何の用だ?」
「それはこっちのセリフですよ。」
「なに!?」
「あなた方悪魔が三好家に力を貸すから、天使も織田家に力を貸すことになっちゃったじゃないですか!」
「織田家? 知らないな。」
悪魔が三好家に力を貸したように、天使は織田家に力を貸すことになったというのだ。しかし弱小国の尾張の織田家など三好家は知らなかった。
「織田家は天使の助力を得て尾張を統一。今川義元もあっさり倒し・・・。」
「今川義元!? あの東海一の今川家を!?」
「はい、簡単に。三河・遠江・駿府を領土とし、徳川家康に支配させ、織田軍は美濃・飛騨・近江・伊賀・伊勢志摩・越前・若狭・能登・加賀・越中を領土としました。」
「なんだと!?」
三好家が悪魔の力を借り西日本を一時制覇し、ライたちと死闘を繰り返し、京で足利家と最後の決戦をしている間に、織田家が東海・北陸・東畿内を治めてしまったのだった。
「ということで、悪魔が畿内に結界を張ったようですが、私たちは人間と違い天使なので悪魔の結界ぐらいは突破できます。」
「何が目的だ!?」
「織田家が京に上洛する大義名分に、将軍足利家の人間が必要なんです。」
「上洛だと!? 田舎者が上洛だと!?」
織田家が上洛する!? 寝耳に水であった。京は三好家と足利家が覇権を争っているが、そこに織田家が割り込んでくるという。
「そういうことなら、ますます渡す訳にはいかないな。」
「ですよね。さっさと戦って勝負を着けましょうか。」
ついに悪魔と天使が対峙する。三好悪魔と織田天使が戦う時がきたのだ。ウリエルは神から授かった光を手から放とうとする。
「くらえ! 神の光!」
「とう。」
ウリエルの放つ光を三好長逸は避ける。しかし天使相手に人間の姿では勝てる訳がなく、悪魔の力を借りることにした。
「無念だが悪魔のに魂を売ろう。いでよ! アガリアレプト!」
三好長逸の姿が人間から悪魔の姿に変化していく。悪魔アガリアレプトになり、支配下に置いている水の精霊エレーロギャップを呼び出す。
「いでよ! エレーロギャップ!」
「お呼びでしょうか、アガリアレプトさま。」
「天使を倒すぞ!」
「お安い御用です!」
「もういいですか? 悪魔化する間、攻撃しないで待ってて上げたんですよ。だって天使だから。」
「舐めやがって!? 闇の水でもくらえ!」
「そんなもの神の光で相殺できますよ。」
アガリアレプトの闇の水とウリエルの神の光がお互いの中間地点でぶつかり合う。水と光は四方八方に飛び散る。
「飛び道具は互角みたいですね。」
「そうだな。」
「ですが、私は神の炎も使うことができます。」
「なに!?」
「光と炎を水だけで防ぐことができますかね。」
ウリエルは神の光と炎を同時に放つ。アガリアレプトも闇の水を放ち応戦するが光と闇の同時攻撃に水だけでは対抗できなかった。
「ギャア!?」
「倒れるのはまだ早いですよ。私の炎と光は剣にすることもできるんです。最後は剣で突き刺して天国に送ってあげましょう。」
「く・・・くそ!?」
「さようなら。」
吹きとばされた三好長逸に、光と炎を剣に変換したウリエルが迫る。そして2本の剣を三好長逸に突き刺そうとする。
「ほお、まだそんな力がありましたか。」
「これでも武士の端くれ、天下の三好家の武将だ!」
重症の三好長逸は刀でウリエルの剣を薙ぎ払い、なんとか生きている。三好長逸を動かしているのは武将としての誇りだけである。
「いいでしょう。武士の気概に免じて、私の堕天した姿をお見せしましょう。」
「なに!?」
ウリエルの姿が闇に呑み込まれていく。その姿はまるで悪魔のようだった。頭上の天使の黄金の輪は黒く光り、背中の羽も黒くなった。
「ギャア!?」
画面は景色に移り、三好長逸の悲鳴だけが京に響いた。三好長逸はウリエルに敗れ、足利義昭は織田家に保護された。
つづく。




