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制覇3 完結編  作者: 渋谷かな
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京1

栄枯盛衰。その言葉が1番当てはまるのかもしれない。栄華を誇った足利家は没落し、今や京や畿内は、三好長慶の率いる三好家が支配していた。


「た、助けて・・・。」


京の民の生活は貧困を極めていた。足利家と三好家の戦いの場となってしまったからだ。京の都が戦場になったということもあり、食料はなかなか調達できなかった。民は飢えに苦しんでいた。道端には息絶えた者たちが放置されていた。


「お母さん!? 死にたくないよ!?」

「大丈夫!? 大丈夫よ!?」


京の都には、伝染病が広がっていた。死体が腐敗したのが原因だった。病原菌に感染した免疫力の弱い子供から病気の餌食になっていった。助けを呼んでも。誰も助けてくれない。


「人間の魂、いただいた。ヒヒヒッ。」


戦で、飢えで、病気で死んでいった人間の魂を悪魔たちが集めている。たくさんの人間が死ねば、悪魔は潤うのであった。だから悪魔は人間である三好家に力を貸してくれているのかもしれない。


「京の都なんか、歩きたくないな。ウッ!? 吐き気がする。」


一人の武将が歩いている。今の京の町中は死臭が漂う怨霊の街である。人が息をせず倒れている。大人も子供も、赤ちゃんも。その魂を悪魔が集めている。もしかしたら見なくても良い光景を見ているのかもしれない。


「笛の音?」


どこからか、きれいな笛の音が聞こえてくる。武将が音の聞こえる方を見ると、屋根の上で1人の女性が笛を吹いていた。そして武将を確認すると笛を吹くのを止めて、武将に問いかけた。


「三好義興さんですか?」

「いかにも。拙者は三好義興でござる。」

「いや~良かった。三好さんの誰かと会えなかったら、僕が怒られるところでした。」

「おまえは何者だ!?」

「僕? ただの愉快犯ですよ~♪」


女は、死者の霊を蘇らせるという、布瑠のふるのことで生き返った際、男は女に、女は男に性転換してしまっている。楽しそうに話す女。ついつい口が滑らか過ぎる。


「源頼朝っていう、歴史に名を残す者なんですけどね~♪」

「なに!? では、おまえが足利家が雇った助っ人という奴らか。」

「正解です~♪ うわあ!? 詳しいですね~♪ 正確に言うと、陰陽師に魂を甦らせて、こき使われている可哀そうな死人なんですけどね~♪」

「・・・。」


源頼朝は、誰にでも分かりやすい簡単な説明をする。三好義興は、相手が女性の姿をしているのも不可思議であり、死人が甦ったと言われても、戸惑うしかできないのだった。


「あと、言いたくて仕方がないから言いますけど、いい?」

「なんだ?」

「三好さんは、自分たちが先制攻撃を仕掛けたと思っていると思うけど、僕がここで待っていたのは、どういうことかわかる?」

「なに!? まさか!?」

「その通り~♪ 僕たちの方が少しだけ、先に行動してたんだよん~♪ 今頃、三好さんのお屋敷は、大量の鬼に囲まれて、総攻撃を受けているんじゃないかな。」


三好家よりも、巻き返しに必死な足利家の方が先に行動していたのだった。三好家には余裕があるが、後がない足利家にとっては、必死の逆襲だったのだ。



その頃、鬼4量産型の大群にすっかり取り囲まれていた三好家のお屋敷。


「陰陽師さま、総攻撃の用意が整いました。」

「そうか、ちょうど行き違いで三好の家臣たちは出払っているみたいだし、中にはは三好長慶ただ1人。我々の勝利は決まったようなものだ! ワッハッハ!」

「・・・。」


聖徳太子は何も言わなかった。この偉そうにしているのが、陰陽師の名家、安倍晴明一族の安倍曇明である。聖徳太子を始めとする歴史に名を残す者を甦らした張本人である。


「よし! 鬼どもよ! 三好の館に総攻撃をかけるぞ! 準備しろ!」

「おお!」


この曇明の、他人から常時、安倍晴明と比較されて育ってきた劣等感が、全ての元凶であった。歪んだ心が死者を甦らし、鬼のような抽象的なモノを具現化することになってしまったのである。



その頃、源頼朝と三好義興。


「僕も、三好のお屋敷に行かなくっちゃ~♪」

「おまえも長慶さまのいるお屋敷には行かせん。」


義興は刀を抜き構える。屋根の上にいた源頼朝は軽い身のこなしで、地上に舞い降りる。まだ顔はニヤニヤ笑っている。余裕があるのか、どこまでも愉快犯だった。


「悪いけど、悪魔を召喚されるとややこしそうなんで、その前に勝負を着けさせてもらいますよ~♪」

「なんだと!? なめているのか!?」


源頼朝は、鞘から刀を抜く。髭が生えた様な、ふざけた造りの日本刀だった。それでも切れ味が鋭そうなのは、一目見れば分かる輝きを刀身は放っていた。


「源家の家宝の髭切です。これで決めさせてもらいますね~♪」

「なめているのか!?」


源頼朝は笑顔のまま、ピョーンっと加速して義興に斬りかかる。源頼朝の1の太刀をカキンっと義興に受け止められる。


「これしきの力量では、私を斬ることはできないぞ! なめるな!」

「誰もなめているなんて言ってないじゃないですか~♪」


源頼朝は2の太刀として、もう1本の刀を抜く。形としては二刀流の形になるが、一本を受け止めている義興に、隠し刀のような2本目の刀を防ぐ術はなかった。


「ギャア!?」

「腕1本か~♪ 殺せると思ったのにな~♪」


義興の右腕が宙を舞った。義興は後ろに飛び、紙一重で源頼朝の2の太刀をかわしたかに見えたが、源頼朝の刀の振りのスピードが早く、全てをかわすことができなかった。


「この刀は、膝丸です~♪ 髭切と揃いの刀なんです~♪ 卑怯にも1の太刀に隠して、2の太刀として繰り出したんで、今まで外したことが無かったんですけどね~♪ 義興さん、やりますね~♪」

「油断した!? 腕を斬り落とされるとは!? なんという失態だ!?」


義興の斬られた腕から血が滴り落ちる。出血が止まらない。相手のことを知らず、自分なら大丈夫だという過信の代償が、この有り様である。義興の血の色が赤から黒に変わり始める。


「ああ~♪ やっぱり1撃で仕留めないとダメだったんですね~♪」

「許さん、許さん! 許さん!!! いでよ! バフォメット!」


義興は自分の不甲斐なさに激昂する。それだけだはなく、戦国時代に京を支配した天下の三好家の家臣としてのプライドの高さも邪魔をして、自分が傷つけられたことにも怒りを抑えることができないのだった。


「ガオオ!!!」

「困っちゃうな~♪ 悪魔になっちゃった~♪」


義興の姿が人間の姿から、黒い山羊の顔、背中に黒い翼が生えて変わっていく。切断された腕も新しく生えてきて元通りになった。(服は着ているが両性具有らしい。)義興は悪魔バフォメットを呼び寄せ、その力を自由に扱うことができるようになった。


「我は黒ミサを司る悪魔、バフォメット。おまえの好き勝手にはさせないぞ!」

「怖い~♪ 僕みたいな、お調子者相手に本気にならないでくださいよ~♪」

「いつまでふざけている気だ? 真面目に戦え!」

「僕はいつでも真面目ですよ~♪」

「そうか。」


バフォメットは相手に返事を聞いたのがバカだったと結論にした。両手を広げ五芒星の魔法陣を描き、闇を呼び寄せる。黒い邪悪なものが悪魔バフォメットの五芒星に引き寄せられるかのように、闇が渦を巻いて現れる。


「なら、死んでしまえ! 闇の闇!」

「うわあ!?」


バフォメットは両手を源頼朝の方に向け、闇を放出する。闇は源頼朝に向けて早いスピードで一直線に伸びていく。そして闇は源頼朝を呑み込んだ。ただそこには黒い闇だけが残っていた。


「たわいもない。私を相手にふざけているからだ。足利将軍の首でも取りに行くか。」


バフォメットが、この場を去ろうとした。その時だった。源頼朝を呑み込んだ闇が切り裂かれていく。


「なに!? 闇が!?」


ズバズバズバズバ! っと闇の中で、源頼朝が2本の刀で闇を切り裂いている。ズバッと闇を切り裂いて闇の中から源頼朝が出てきた。


「危なかった~♪ もう少しで闇に取り込まれるところでしたよ~♪」

「闇から出てくるとは!? どこまでもふざけたヤツだ!?」

「髭切は鬼も斬るから鬼切丸とも言われ、膝丸も土蜘蛛を斬ったから土蜘蛛切と言われたり、僕は闇に強い刀を持っているので、闇ぐらいは斬れるみたいです~♪」

「闇を斬る刀だと!?」


信じられなかった。悪魔は最強で、死者を甦らせた陰陽師の力など、大したことは無いだろうと思っていた。それなのに目の前にいる歴史に名を残す者の源頼朝は、悪魔化した自分と互角!? いや、それ以上かもしれないと義興は戸惑い始めていた。


「まぐれに違いない! 今度こそ闇に呑み込んでやる! 闇の闇!」

「もう闇に呑み込まれるのはごめんです~♪ 紙芝居スキル~♪」


バフォメットは闇を源頼朝に向けて放つ。源頼朝は刀ではなく、紙芝居の木枠のようなものを出す。これは源氏物語的な発想から生まれた、初期から使用している、相手の攻撃を紙芝居のページをめくり、無かったことにしてしまう、攻撃無効化スキルである。


「闇が消えた!?」

「紙芝居に写る闇の絵を、ページをめくって何事もなかったページにします~♪ これ義興さんの闇は、どこかに消えてしまいました~♪」

「なに!? 時間を飛ばしたとでも言いうのか!?」

「僕もよくわかりませんが、そんなものです~♪」


これで義興の攻撃は源頼朝には通じない。攻撃する術を失った義興に、形勢が逆転した源頼朝が髭切と膝丸を軽く素振りしながら、悪魔化した義興に、いつも通りの笑顔でふざけながら近づいていく。


「あんまり長く戦っていると、他の仲間から、ふざけてると怒られるので・・・すぐに切り刻んで、終わらせますね~♪」

「クッ!? 三好家に敗北の2文字はない!」


義興も自分の立場が相手よりも悪いということは認識している。しかし、それでもここで負ける訳にはいかないのだ。自分が負けてしまっては、大殿、三好長慶の身が危険にさらされるかもしれない。三好家の家紋を背負っている以上、負けることは許されないのだ。


「いきますよ~♪」

「ムムッ!?」


笑顔の源頼朝が一気に加速して自分の間合いに悪魔バフォメットを捉える。そして名刀の髭切と膝丸の二刀流で悪魔を切り刻む。


「ダダダダダダダ!!!」

「ギュア!?」


悪魔バフォメットの闇をどんどん切り裂いていく。切られた闇は周囲に飛び散り、徐々にバフォメット本体の闇が小さくなっていく。悪魔バフォメットなのか、三好義興なのかは分からないが、源頼朝の刀が本体に刃が届き始め、致命傷のダメージを与えていく。切り続け疲れた源頼朝は、勝負を決めようと連撃の速度を、さらに早めていく。


「僕、もう疲れました~♪ そろそろ、終わりにしましょうね~♪」

「そうだな。終わりにしよう。」

「あれ? 観念したんですか? 面白くないな。」


源頼朝は、まだ気づいていない。切りはがした闇が源頼朝の体にまとわりついていく。次第に源頼朝の刀による攻撃のスピードが落ちていく。


「ん!? なんだ? この黒いのは? これは・・・あ!?」

「そうだ。これはおまえが削いでいった、私の闇だ!」

「闇が僕にまとわりついている!?」

「離してくださいよ~♪ 義興さん~♪」


笑顔の源頼朝は刀をバフォメットに突き刺す。刺し口から黒い血が噴き出し飛び散る。源頼朝は自身の勝利を確信する。どんなに悪魔が化け物であっても、悪魔化した人間を刺身にすれば、どうといったことはない。


「これで僕の勝ちです~♪」

「それはどうかな? 私は絶対に負けないぞ!!!」

「なに!?」


闇が源頼朝の全身にまとわりつく。源頼朝は動くことができなくなった。必死にもがき紙芝居を取り出そうとするが、手に闇が絡まって、動かすことができない。


「動けまい。ふざけたヤツだが、おまえの強さは認めてやる。さすが鎌倉に幕府を築いた歴史の英雄だ。」

「それはどうも~♪ だったら離してもらえませんかね? 僕には、まだまだやらないといけないことがたくさんあるんです~♪」

「だが、だがな! おまえみたいな危険なヤツを野放しにしておくわけにはいかない。私と一緒に闇の世界に連れて行ってやる!!!」

「ぼ、僕はただの愉快犯です・・・うわあ!?」


源頼朝は身動きが取れない状態で闇に呑み込まれた。三好義興はスッキリとした顔で瞳を閉じて、悪魔バフォメットの五芒星が作り出す闇に呑み込まれていく。


「これでいい。これで私の役割を果たすことができた。天下は、三好家のものだ!」


京から、三好義興と源頼朝の姿が消えた。2人とも闇に呑み込まれてしまったのだ。三好家の悪魔と足利家の歴史に名を残す者の戦いは、引き分けから始まった。


「人間とは、理解できない生き物だ。他人のために自分の命を犠牲にするなどと。悪魔には分からないな。」


闇の渦が現れ、悪魔バフォメットが姿を現す。三好義興が死んだことにより、義興との契約から解放されたのだ。


「一度、サタン様の元に戻るか。サタン様のことだから大丈夫とは思うが。」


そういうと、三好義興と源頼朝が戦った京の通りから、悪魔バフォメットは何事もなかったように去って行った。人は死に、悪魔が生き残ったのだった。



ここは足利家、鬼の生産工場の足利屋敷。


「お調子者が消えたか~♪ ふざけてばかりいるからだよ~♪」

「精々しました。」


歴史に名を残す者のおもちゃ大好きっ子の卑弥呼と、眼鏡っ子の藤原くんこと、藤原道長がいる。


「これで源頼朝の跳躍力・瞬発力・俊敏性が手に入ったね~♪」

「私の設計にミスはありません。」

「僕も手伝ったもん!?」

「もめたくはありません。そういうことにしておきましょう。」

「やった~♪」


卑弥呼と藤原くんの前には、1機の鬼がいた。鬼4型のような量産機ではない。これがプロトタイプとして完成していた、自分の意志を持つとされる鬼ゼロ型である。


「次は僕が戦場で散ってくるよ。」

「私が先に行きますよ!?」

「いいよ。少しだけで生き返って、なんやかんやと楽しかったけど、誰かに意識を乗っ取られて、嫌なことをやらされるより、こいつの1部になりたいんだ。」

「卑弥呼・・・。」

「僕たちは元々、死んでるわけだし、やっぱり自分が生きた時代が一番、いいや~♪」

「そうですね。私も平等院鳳凰堂に帰りたいです。」

「藤原くん、今まで仲良くしてくれてありがとう。」

「こちらこそ。卑弥呼、ありがとう。」


2人は握手をして、互いを認め合う。どちらも歴史の1ページを作って来た英雄なのだから。そして卑弥呼は、三好家の待ち構える京の街へと出陣した。卑弥呼の後姿を藤原くんは見つめていた。


つづく。

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