伊勢志摩・淡路
こちら伊勢志摩。
ライと師走ちゃんと別れた、島津家の4男の島津家久とへっぽこ忍者の睦月ちゃんの分身の霜月ちゃん。
「未だにライと交信ができないじゃないか!?」
「痛い!? 頭を力いっぱい握るな!?」
携帯電話の無い時代、忍者の以心伝心の術で連絡を取り合う。とアイデアがひらめいたのはいいが、お互いが睦月ちゃんの分身に頭をのせていないと連絡が取りあえないという欠陥忍者だった。
「仕方が無いだろう! 頭に触れていないと連絡できないんだから!」
「もっとこう、頭を優しくなでなでしてくれればいいのに。」
「おまえは幼女か!?」
「わ~い~♪ 霜月ちゃんです~♪」
忍法、幼女変化の術である。物事を都合よく進めるたい時は、なんでも忍法にしてしまえばいいということに気がついた。これも忍者モノのいいところ~♪
「もうすぐ那智の滝だと思うんだが?」
「霜月ちゃんが忍者らしく、先に行って偵察してきてやろう。」
「気をつけてな。」
「ハ~イ~♪ 行ってきます~♪」
霜月ちゃんは、幼女変化の術のまま、那智の滝の偵察に出かけた。やれやれと思う家久であった。しかし、家久は喜んでいた。
「ついに、ついに、俺、メインで書かれる日がキタ~!!!」
家久は、今までは戦闘では、敵に吹っ飛ばされ役。出陣しようとすれば、お留守番。悲運の末っ子であった。同じ年なのに大活躍のライに、劣等感を感じていた。
「今回、カッコよく活躍して、もっと出番を増やすんだ!」
家久の心の中は燃えていた。それにしても、偵察に行った霜月ちゃんの帰りが遅い。
「そういえば霜月ちゃん、なかなか帰ってこないな? ・・・まさか!?」
そのまさかである。霜月ちゃんが無事に帰って来て、ご飯を食べる。これが1番平和ではあるが、忍者としての仕事をサボっている。しかし、真面目に忍者の仕事をすると、へっぽこ忍者なので、敵に見つかり捕まってしまうのだ。さすが霜月ちゃん。
「きっと敵に見つかって、捕まったに違いない!」
大正解。
「助けに行かなければ!」
家久は、霜月ちゃん救出に、竜がいるかもしれない那智の滝を走って目指すのであった。
ここは滝の上からロープに吊るされている霜月ちゃんサイド。
「キャア!? やめろ!? 離せ!? 助けてください!?」
霜月ちゃんは敵の魔の手に捕まっていた。
「私の名前は、サタナキア。私は女性を意のままに操ることができる。おまえ幼女だったくせに、私のテンプテーションが効かないとは何者だ!?」
霜月ちゃんは分身なので、誘惑は効かなかった。サタナキアは、アガリアレプトと同じく悪魔の将軍である。伊勢志摩に配備されていた。残念なことに、家久と睦月ちゃんの分身の霜月ちゃんしか、やって来なかった。
「霜月ちゃん!」
そこに家久がやって来た。想像通り霜月ちゃんは敵に捕まっていた。
「家久!? 助けてくれ! 死にたくないよ!」
霜月ちゃんも家久が来たのに気づく。モゴモゴ動くのでロープが切れそうだ。
「オカマの次は男か、本当に女運がないな。」
「誰がオカマだ!?」
オカマとは、意のままにならない、睦月ちゃんの分身の霜月ちゃんのことである。サタナキアは、女性を操ることができるので、女と戦う方が得意である。
「どうせ戦うなら、竜使いの少年の方がよかったな。」
「なに!? 俺だって、ライと同じくらい・・・いや! ライよりも、俺の方が稽古もしてるし、俺の方が強いんだ!」
家久は、ライとの力の差を埋めようと日々、剣術の稽古を積んでいる。悪魔1匹くらい刺し違えてでも倒すつもりである。
「あっそう。そんな強い人と戦って、ケガでもしたら痛いから、やめとくわ。」
「え? あの・・・戦ってもらわないと盛り上がらないんですが?」
「知らない。」
サタナキアは、戦いにはあまり興味がない。ロープを大きなハサミで切ろうとする。これが悪魔の罪滅ぼしである。
「じゃあ、これで許して。」
「ギャア!? やめろ!? 滝つぼに落ちる!?」
「さようなら。ブチ。」
ハサミでロープを切った。そして笑顔でサタナキアは、消えていった。
「うわあ~!?」
霜月ちゃんは、那智の滝の滝つぼに落ちていく。
「霜月ちゃん!?」
家久が叫んで駆け寄るも助けることはできず、ズボーン! っと霜月ちゃんは滝つぼに呑み込まれる。
「霜月ちゃん!?」
家久が滝つぼを覗き込むも、滝に呑み込まれた霜月ちゃんの姿はなかった。かといって、家久が滝に飛び込んでも命の保証はなかった。
「クソー!」
家久は、自分が不甲斐なかった。自分一人で悪魔を倒し、霜月ちゃんを助けることができなかった。悔しさで目から涙が出てくる。
「なんだ!?」
その時だった。滝が光り出し、滝つぼから霜月ちゃんが2体現れる。そして滝から声が聞こえてくる。
「あなたが落としたのはへっぽこ忍者の睦月ちゃんの分身の霜月ちゃんですか? それとも純金の霜月ちゃんですか?」
「純金の霜月ちゃんです!」
家久は、若さからの過ちか、金に目がくらんだのか、へっぽこっではなく、純金の霜月ちゃんを選んだ。
「正直でよろしい。へっぽこ忍者の睦月ちゃんの分身の霜月ちゃんをお返ししよう。」
霜月ちゃんは、滝つぼから陸地に戻ってくることができた。まだ意識は失っていて、気絶している。
「あなた様はいったい!? 滝の神さまですか?」
「私は、水竜さまの使いの、水ちゃんやで。」
「俺は島津家久。まさか!? やさぐれ海ちゃんや、青春一直線の火ちゃんのお友達ですか?」
「海ちゃんや火ちゃんを知ってるんか? あの子たちは、ちょっと変わってるからな~。」
「そ、そうですね。」
家久は「あなたも変わってますよ。」と心の中で思ったが、言葉にはしなかった。霜月ちゃんを助けてくれたのは、水竜の使いの水ちゃんだった。
「水竜さまは、近江の琵琶湖にいるで、がんばって会いに来いや。」
「琵琶湖!?」
伊勢志摩から近江に行くのは、かなり遠いのだった。
「敵と遭遇したくなかったら国境を歩いておいで。敵に見つかる可能性が下がるで。」
「良い情報をありがとう。」
水ちゃんは、頭が賢いというよりは、ずる賢い感じだった。竜の使いも、いろいろな性格の竜の使いがいるのだった。
「それでは琵琶湖で待っとるで。さいなら。」
「必ず、琵琶湖にいきます。」
そう、言葉を交わすと水ちゃんは消えていった。
「俺は必ず琵琶湖に行く!」
家久の次の目的地は、琵琶湖に決まった。
「zzz。」
もちろん、霜月ちゃんは、まだ眠っている。
こちら淡路。
讃岐で悪魔のうどんをおいしく食べた、島津義弘、鍋島直茂、空ちゃん、ヨナちゃんである。
「ここが本州か~♪」
ヨナちゃんは、初めての本州に上陸することを楽しんでいた。
「違う。ここは淡路島。」
冷たく? 冷静に言い放つのが空ちゃん。
「違うのか!? 悪魔娘に騙された!?」
「私だって、本州に来るのは初めてなんだから!? そこの空女に言ってよ! あんたも知っているなら、知っていると言いなさいよ!」
「聞かれなかった。」
「ウキ~!?」
空ちゃんは、義弘の背中に駆け足で隠れる。ギロっと睨むヨナちゃんが怖いのだ。
「義弘、助けて。」
「うむ!?」
無口な義弘は、一言しゃべるだけで精一杯である。そして、その様子をタマネギ畑からコッソリと眺めている者たちがいた。
「あの中に入るの嫌だな~、なんか怖そう~。」
「おかしいな? 3人しかいないはずなのに?」
「もう少し様子を見よう。」
この3人は、へっぽこ忍者の睦月ちゃんの分身の神無月ちゃん、長月ちゃん、葉月ちゃんである。携帯電話の無い時代の連絡手段として、西日本制覇隊の各自に遣わされたのだが、3人は険悪な雰囲気に合流を躊躇している。そりゃあ、連絡がつかないはずである。
「さっさと島なんか後にして、本州に上陸しよう。」
「無理。」
「なんで無理なんだ!?」
「敵さんのお出ましよ!」
「タマネギ!?」
いきり立つ鍋島であったが、鍋島たちは、ご当地妖怪の人食いタマネギの大集団に囲まれていた。その数は2、300はいそうだった。
「なんだ!? このタマネギの数は!?」
「大豊作。」
「ふざけている場合か!?」
空ちゃんが鍋島をからかっている間に、ヨナちゃんが自己紹介の決めゼリフを始める。
「私は、ヨナルデパズトーリ! 邪心テスカトリポカの化身の冥界の悪魔だ! おまえたちの魂は頂くよ!」
「タマネギ~♪」
ヨナちゃんの決めゼリフは決まったが、タマネギには聞こえていないようだった。タマネギはコロコロ転がって、楽しそうにしている。
「わ、私を怒らせたわね!」
ヨナちゃんは、決めゼリフを聞き流されたのを恥ずかしく感じているが、それを周囲に気づかせないように、両手に地獄の渦を作り始める。
「くらえ! 闇落ち!」
「タマネギ!?」
タマネギたちは、ヨナちゃんの作った闇の中に消えていく。それでも数が多くて、全てのタマネギを吸い込むことはできない。
「いくぞ、義弘!」
「おお!」
「がんばれ。」
鍋島と義弘も剣を抜いて、大量のタマネギに応戦しようとする。空ちゃんは、基本、テンション低めの竜の使いなので、戦う気はない。
「おまえも戦えよ!」
「鍋島、うるさい。」
「一緒に戦おう。」
「義弘が言うなら。」
「この差はなんだ!? この差は!?」
空ちゃんは、静かを好む。口うるさい自称天才の鍋島は嫌いで、口数の少ない口下手な義弘が好きなのだ。
「空竜奥義、タマネギの皮むき、かまいたち。エイ。」
空竜の竜の使いの空ちゃんが手を振る。キレキレの突風が現れて、人食いタマネギの皮をどんどんむいていく。
「タマネギ!? ・・・タマネギ!!!」
皮をむかれたタマネギたちは・・・凶暴化した。皮のむかれたタマネギたちは、怒りに身を任せ、勢いをまして、突撃してくる。
「怒らしてどうする!? おまえは馬鹿か!?」
「バカっていうヤツがバカ。」
「・・・。」
「あんたたち手伝う気があるの!? それとも邪魔しに来たの!?」
さすがのヨナちゃんもタマネギの数が多すぎて、闇の渦の中に吸い込み切れない。鍋島たちは、このまま人食いタマネギに食べられてしまうのか!?
「おかしいな~。この班はみんな強かったはずなのに?」
「どうする? 助けにいくか?」
「危ないだろう!? もう少し様子を見よう。」
それがいいとへっぽこ忍者の睦月ちゃんの分身の神無月ちゃん、長月ちゃん、葉月ちゃんは静観することにしました。自分の命が1番大切だからです。
「ダメ!? このままではタマネギなんかに食べられてしまう!? 助けて! ライ!」
ヨナちゃんは叫ぶが、ライはアマイモンに性で北の大地、蝦夷に飛ばされてしまった。ヨナちゃんの声は、ライには届かない。
「何か策は無いのか!? 策は!?」
「困ったでござる!?」
「今夜は、タマネギカレー。おいしそう。」
全員がタマネギに食べられて死んでしまうことを考えた。その時だった。1人の男が現れた。
「静まれ、タマネギたち。」
男が言うと、ピタッとタマネギたちは動きを止めた。男は、タマネギたちの間を抜けるように鍋島たちに近づいてくる。
「私は、悪魔タンムーズです。」
「悪魔だと!? 三好の手先の者か!?」
男の名前は、タンムーズ。悪魔だというのだ。鍋島たちは悪魔だと聞いて、身構えるのだった。
「私は悪魔といっても、牧羊の神ですから、戦いは好みません。ただ・・・。」
「ただなんだ!?」
「カレーライスをするので、よかったら、ご一緒にいかがですか? タマネギを拾うのを手伝ってくれると助かります。」
「やった。タマネギカレー。」
こうして、鍋島たちはタンムーズという悪魔と一緒にタマネギを拾った。以前に讃岐で悪魔のうどん屋さんアスモデウスに出会っているので、良い悪魔もいることを知っているので、悪魔と仲良くするのも抵抗がなかった。
「こんにちは~、へっぽこ忍者の睦月ちゃんの分身の神無月ちゃんです~。」
「義久さんに言われて、へっぽこ通信用に派遣されました。」
「カレーライスですか? タマネギを拾うの手伝いますよ!」
今だ! という安全なタイミングで、神無月ちゃん、長月ちゃん、葉月ちゃんたちは現れた。鍋島たちは疑心暗鬼な顔で、へっぽこ忍者たちを睨む。
「あれ~? 歓迎されてない~?」
「・・・おまえたち、俺たちが人食いタマネギと戦ってるのを見ていただろう?」
「バレてる!?」
「こら!? 認めるな!?」
「元がへっぽこなら、分身もへっぽこだな。起こる気にもならん。」
鍋島は、睦月ちゃんの活躍ぶりを知っているので、分身の神無月ちゃんたちに多くを期待しないのであった。仲間が3人増えたので、タマネギも早く拾い終わった。
「おいしいな、カレーライス。」
「いける。」
「淡路産のタマネギがおいしいですね。」
「私も食べ物屋さんでもしようかしら。」
「おいしい。タマネギカレ-。」
「働いたあとのカレーはおいしい~。」
「戦の前の腹ごしらえ。」
「腹八分でござる。」
鍋島たちは、おいしそうにカレーライスを残さずに食べた。人間と悪魔も分かり合えるのだ。元々、ヨナちゃんも悪魔だしね。
「お腹もいっぱいになったし、今度こそ本州に上陸だ!」
「おお。」
「今度こそ、ライに会いに行くわよ!」
「みなさん、がんばってくださいね。」
「おいしかった。タマネギカレー。」
「もう食べれません~。許してください~。」
「本州の名物は何ですかね? 偵察に行かなくては!」
「あ、通信手段を教えるの忘れてた・・・。」
束の間の平和を楽しんで、次こそは本州を目指すのだった。
こうして、淡路を制覇した。
つづく。




