蝦夷・津軽海峡
アマイモンに時空を飛ばされたライと師走ちゃん。たどり着いたのは、蝦夷だった。そこで雪竜に出会い、雪竜の使いの雪ちゃんを仲間にした。凸凹トリオの竜を探す旅が始まる。
「それにしても、よく降る雪だな。」
ライと雪ちゃんの足取りは重かった。それは降り積もる雪のためであった。
「邪険に言うな! よく見ろ、空から舞い降りる天使のように、カワイイ雪じゃないか!? ライ、おまえには雪の良さが分からないのか!? そんなことでは、雪竜さまに認めてもらうことはできないぞ!」
「は、はあ。」
雪ちゃんは、雪のことになるとフワッとした性格から、海ちゃんみたいにやさぐれた性格に変わるみたいだ。
「大変でござる!」
そこに偵察に行っていた、へっぽこ忍者の睦月ちゃんの分身の師走ちゃんが帰って来た。すごく慌てている様だった。
「おまえたち、師走ちゃんがいない間に、いちゃついてないだろうな?」
「バレたか~♪」
「なに!? 浮気をするとは許せん! ライのゲス野郎!」
「何もしてませんって。」
軽い冗談に巻き込まれるライであった。まあ、何もないのに否定するのもおかしいのだが・・・。
「大変だ! 本州につながる橋が無いんだ!?」
「なんだって!?」
本州と蝦夷を結ぶ橋がないというのだ。
「そうだよ。橋なんかある訳が無いだろう。荒れ狂う津軽海峡なんだから。」
「そんな!?」
ライは、なんとかして、本州に渡る策を練る。
「よし! 竜の背中に乗っていこう!」
「無理だね。ライ、おまえは雪竜さまの竜玉を持っていないから、雪竜さまを呼び出すことはできない。他の竜は寒すぎて、登場するのを拒否するだろうし、火竜さまなんかは、寒さにビビって、絶対出てこないだろうな。」
「制覇2」から「竜を呼び出す」「竜に乗る」という機能を実装して、良いことばかりだったが、「制覇3」にもなると、悪いことを考えつきもするのだ。
「じゃあ、どうすればいいんだ!?」
「困ったでござる。」
ライと師走ちゃんは困り果てていた。
「そこで雪ちゃんの出番です~♪」
「なにか策があるの?」
「雪だ。雪を降り積もらせて本州に渡るつもりだ。」
雪ちゃんは、雪を自由に扱える。雪を積もらせて、津軽海峡を渡るつもりだった。
「雪で!?」
「そんなことが可能でござるか!?」
「そのつもりで、ずっと雪を降らし続けていたんだ~♪」
「この雪は、おまえの仕業だったのか!?」
「そのとおり~♪」
津軽海峡を雪で覆うために蝦夷には何メートル、何十メートルという雪が降り続き、ライたちの行く手を阻んでいた。
「前もって先に行ってよね!」
「津軽海峡に着いてから、雪を降らした方が、こんなに移動に苦労しなくて良かったんじゃないでござるか?」
「かもね~♪」
「首を絞めてやる!」
「ギャア!? やめろ!」
こうして、ライたちは、津軽海峡に着いた。
「うわあ!? 海に雪が降り積もっている!?」
津軽海峡に雪が降り積もり、雪が橋のように本州までの道ができていた。差し詰め、雪の道といったところである。
「すごいでござる!」
「さあ、ここにソリの発射台があるので、勢いよく出発するよ~♪」
スキーのジャンプ台のような、雪の坂が出来ていた。雪ちゃんは、ここから雪のソリに乗って、雪の道を滑って行こうというのだった。
「よし、いくぞ!」
ライが1番手でソリを滑らそうとした時だった。
「あ、言い忘れていたが、津軽海峡には、人食いマグロと、昔、海で溺れたリンゴが大好きだった女の子の霊がでるから気をつけてね~♪」
「え?」
「いってらっしゃい~♪」
「ギャア!?」
ライのソリは勢いよく、津軽海峡にできた、雪の道の上を滑っていく。
「私たちは、雪の道が平和になったら、出発することにしよう~♪」
「それがいいでござる。」
「ハハハハハ!」
雪ちゃんと師走ちゃんは、カワイイ乙女であった。
雪の道をソリで滑るライのサイド。
「あれが人食いマグロだな。」
ライの行く手を、海から巨大なマグロが飛び出し、ライを襲う。
「海竜覇!」
海の上ということもあり、ライの放つ海竜覇の威力は強かった。人食いマグロたちを次々と倒していく。海竜さまの力で、津波も竜巻も自由自在に扱うことができる。
「海竜斬!」
飛び掛かってくる人食いマグロを三枚におろし、きれいなマグロの刺身が完成する。美味しそうだ。
「海竜さま、ここは海だから、海竜さまに乗って、津軽海峡を渡ることはできないんですか?」
ライの素朴な疑問に、海竜の声が聞こえてくる。
「ここは雪竜の支配地。ここでは私の力より、雪竜の方が本来の力を発揮する。それに、ライ、おまえはまだ、雪竜に認められていない。」
確かにその通りである。雪竜に認めてもらわなければ、雪の降る場所では、ライは苦戦を強いられる。
「リンゴ~♪ リンゴ~♪」
その時、雪の道の先から、女の子の声で「リンゴ~♪」という声と共に、ライに近づいてくる影がある。
「雪ちゃんの言っていた、リンゴが大好きな女の子の霊だな。」
「お兄ちゃん、リンゴが海に落ちたの。海に潜って、リンゴを拾ってきて~♪」
昔、女の子は海に落ちたリンゴを拾おうと海で溺れてしまい、人食いマグロに食べられてしまい、今も海の底のリンゴを探し続けて、彷徨っている。
「火竜覇で焼いてしまうか? でも、それだと女の子の霊は成仏できない!? どうする!? どうすればいい!?」
これまで「制覇1」でも、既存の妖怪の弱さ、ネームバリューの無さ、某ゲゲゲの金太郎で、ほぼ使用済み。というより、ゲゲゲの金太郎が元を作ったといえるのだろう。
「リンゴ~♪ リンゴ~♪」
ということで「制覇2」で、既存のぬらりひょんの娘、ぬらり子と妖怪は鉱物をベースにして作成することにした。悪魔は三好家。天使は、まだ出ていないが起用先が決まっている。
「おいしいリンゴだよ~♪」
ということで、ご当地妖怪も既存のモノをベースに考えると使えないのが多いので、「制覇3」は、オリジナル妖怪を気軽に創作することになった。
「お嬢ちゃん、リンゴは海の底にあるの?」
「そうだよ。」
「俺が取ってきてあげるよ。」
「ありがとう。」
ライは、海の中に飛び込んだ。寒い北の湖。それでもリンゴが大好きな女の子のために。ライは、竜の力で海の中でも呼吸をすることができた。
「でい! 雷斬!」
迫りくる人食いマグロの群れを3竜雷剣で斬り倒す。剣の雷が海の中では、とても伝道するので、人食いマグロに電気ショッカーとして、よく効いた。
その頃、雪の道付近の海面。
「どうして、マグロが気絶して、浮いてくるんだろう?」
雪の道に1人の男の影があった。
再び、ライのいる海面に戻る。
「リンゴ、女の子のリンゴはどこにあるんだ?」
ライが探していると、海底に女の子の霊が現れる。
「こっちだよ。」
ライが女の子の方に行くと、海底でも光るリンゴを見つけた。
「あった。」
ライがリンゴを取ろうとする。
「ダメ! リンゴに近づいてわ!」
「え?」
女の子の霊が突然、リンゴには近づいてはいけないと言う。
「ギャオ!」
リンゴが魚の形になった。ライを目掛けて襲いかかってくる。
「なんだ!? こいつは!?」
「こいつが私とリンゴを食べた。」
「え?」
「取って、私とリンゴの敵を取って。」
「・・・そういうことか。」
りんごの女の子の霊は、今も成仏できずにいた。それは、自分がリンゴを落としたから、海に落ちてしまったからでもない。女の子とリンゴは、このリンゴ魚の化け物に魂を縛られていたのだった。
「お兄ちゃんが、すぐに助けてあげるね。」
「うん。」
ライは、迫りくるリンゴ魚の化け物を正面にとらえる。そして、精神を集中して、技を繰り出す。
「3竜雷斬!!!」
ライの剣から、3竜が放たれて、リンゴ魚の化け物に斬りかかる。
「グギャ!」
ライの1撃は、リンゴ魚の化け物を切り裂いた。ライは、リンゴ魚の化け物を倒した。これでリンゴを海に落とした女の子も救われたのだ。
「お兄ちゃん、ありがとう。」
「くれるの?」
「リンゴ、美味しいよ~♪」
「ありがとう。」
女の子はライにリンゴを手渡した。この世の未練やしがらみが無くなって、自由になることができた、その表情は、スッキリしていた。
「バイバイ~♪」
女の子は、笑顔で手を振りながら、海底から上昇していく。海面に抜け、その姿は見えなくなった。
「成仏したんだろうな。」
ライは、自分が少しだけ役に立てたのがうれしかった。そして、ライは海底から海面へと泳いでいく。
ここは雪の道付近の海面。
「プハ・・・はあ・・・はあ・・・。」
ライは、海面に顔を出すと、息を吸い込む。しかし、すぐに目の前にいる1人の男の気配に気づく。
「カー!?」
「おまえ・・・ライか!?」
ライの目の前にいたのは、西之島の長の息子のカーである。カーは母親を殺し、本州に逃げてきた、と同じく西之島のアマさんとギュウさんから聞いた。
「どうして、おまえがこんなところに!?」
「それはこっちのセリフだ。こんな、クソ寒い海でよく泳ぐ気になるな。」
ライは、海からあがり、カーのいる雪の道にやって来る。そして、カーを問い詰める。
「ナミさんを殺したというのは本当か?」
「あれは事故だ! 俺は殺そうと思って殺したんじゃない! オヤジが勝手に、俺を犯人に追い詰めたんだ!」
こういう時にモノを言うのが、日頃の行いである。好き勝手に自分中心に生きてきた、カーを知っているので、ライはカーの言うことは信じられない。
「そんなことはどうでもいい。おまえをアマさんとギュウさんに引き渡す。」
ライは、カーを力づくで取り押さえるつもりである。西之島では、ライはカーに負けたことはない。まして、3竜の力を手に入れたライは、あの頃よりも強くなっている。
「できるもんなら、やってもらおうか?」
カーは、一度も勝ったことのないライに対して何とも思わないのか、冷静なのか、微動だにしなかった。それどころか余裕すら感じる。
「いくぞ! カー!」
ライは、カーに突進していく。奢りからか、先入観からか、カーには勝てるという思い込みがあり、カーの変化に気づかなかった。
「うわあ!?」
ライは、剣も抜いていないカーに弾き飛ばされた。ライは何が起こったのか理解できなかった。
「なんだ!? カーは何かしたのか?」
「何もしてない。格の違いというヤツだ。」
「格だと!?」
ライは、まだカーの言葉の意味が分からない。
「ライ~♪」
「ライどの~♪」
そこに雪ソリで楽しそうに滑ってくる、雪ちゃんと師走ちゃん。そして、ライのいる所でソリから飛び降りた。
「なんだ!? この化け物は!?」
「こいつからも竜を感じるでござる!?」
「なんだって!?」
ライは、西之島でのカーということでしか見ていなかった。雪ちゃんと師走ちゃんの言葉を聞いて、自分の知っているカーとは違う違和感を初めて感じた。
「今までのカーと別人みたいだ!? 」
ライは冷静にカーを眺めてみた。いつもクソ生意気な口を叩いていたカーが黙っているのだ。まるで落ち着いていると言えるのかもしれない。
「ギャア!? ギュワア!? ドゥヤア!?」
突然、師走ちゃんの気が恐怖で狂い始めた。
「ら、ライ!? こいつ会ったことがあるぞ!?」
「ええ!?」
「こいつから、伯耆で出会った8首の竜の気配を感じるでござる!?」
「ヤマタノオロチ!?」
ライたちは、伯耆でヤマタノオロチと戦っている。その時は、ギュウさんがいたので、なんとか勝つことができたのだった。
「大正解。おめでとう。」
カーの体が8つ首のドラゴンに変わっていく。まさに化け物である。
「俺はオヤジに首を斬られた。しかし、俺は死ななかった。そして、本州に渡り、強い体を手に入れることができたのだ。どうだ? すごいだろう。」
「カー・・・。」
「こいつはヤバイよ!?」
「完全な化け物でござる!?」
雪ちゃんと師走ちゃんは、目の前のカーの圧倒的な強さに恐怖を感じている。しかし、ライはカーが8首竜になったことが、まだ信じられないのである。
「くるか? 今の俺には、おまえなんか戦う価値もない。見逃してやるよ。」
「なに!? なんだと!?」
ライもカーとの実力の差を感じてきた。それほど自分より強い者と戦うのは、疲労感がハンパないのだ。ライは、剣を構え技を放つ。
「3竜雷覇!」
ライが3竜を放ち、カーを攻撃する。衝撃で周囲に爆煙が起こる。
「やったか!?」
爆煙が晴れてきた。
「そんな!?」
爆煙の中から、8首竜の鎧を身に着けた、カーがいた。ライの攻撃で、ダメージはほぼ受けていない。これが3竜と8竜の差である。
「化け物だ!? 逃げろ!?」
「死にたくないでござる!?」
雪ちゃんと師走ちゃんは、パニックで騒ぐだけである。カーは、鞘から剣を抜いた。ライの攻撃を受けて、攻撃する気持ちが生まれたのだった。
「やっぱり、俺も攻撃するわ。」
カーは、少し機嫌悪そうに、攻撃開始を宣言する。カーには、ライには、ライだけには負けたくないという気持ちが強かった。
「3竜の鎧で、8首竜の必殺技が防げるかな? 死ね! ライ! これでおまえとの腐れ縁も、ここまでだ!」
カーの剣から、8首の竜が牙をむき、炎を吐く。
「8首竜斬り!」
カーの強烈な1撃がライたちを襲う。もうダメだ!? とライたちが目をつぶった時に、リンゴが光った。
「なんだ!? リンゴが光っている!?」
リンゴが好きな女の子の霊がくれたリンゴである。そして、リンゴは形を変えていく。
「ああ!? あれは、雪竜さまの竜玉!?」
リンゴは、雪竜の竜玉に形を変えた。そう、北の海に縛られていた、リンゴの女の子の霊を解放するのを見ていた、雪竜はライのことを認めていたのだ。
「4竜雷剣!?」
雪竜の竜玉はライの剣の柄の部分に消えていった。そして、ライたちを逃がすかのように、吹雪が周囲を包み、完全に真っ白な世界、ホワイトアウトしていた。
「ライたちがいない!? まあ、いいか。」
吹雪が収まり、カーの視界が通常に戻った時には、ライたちはいなかった。しかし、今のカーにとって、小物であるライなど、どうでもいいのだった。
こちら本州の最北端に上陸できたライたち。
「うわあ!? ここはどこだ!?」
「8首の化け物は!?」
「ここは陸奥の国だね。雪竜さまが私たちを逃がしてくれたんだよ。」
今のライが雪竜の竜玉を手に入れても、まだ4竜。8竜が相手では、到底、勝つことはできない。
「カー・・・。」
ライは戸惑っている。バカ息子だったカーの変貌ぶりに。決して、強くもなかった。劣等感の塊のような男だった。そんなカーが、8竜という強い力を手に入れて、別人のようになって現れた。ライはカーに対して、初めて恐怖を感じた。
「さあ! 次の竜に会いに行くよ!」
「元気を出していくでござる!」
「そうだね。」
深刻な顔をしていたライは、雪ちゃんと師走ちゃんの間抜けな明るさに救われるのだった。
つづく。




