第8話。
「ズドン!」
自分が元いた地点に正確に着弾する。どうやら敵の練度は高いようだ。
「また撃った!」
クーゴが叫ぶ。自分もレーダーに目は離していない、黄色い光点が一つ震えるのが見えた。
(迫撃砲装備は1機だけか。)
敵の狙いはまたしても正確だろう。だが正確だからこそ何処に落ちるか簡単に予測できる。視点を上に向けるとまだ落下運動に入っていない砲弾が見える。
(ゲームと比べるとぬるいもんだ。)
アームドタイタンズのゲーム内ではもっと弾幕の密度が濃かった。36vs36の72人同時対戦では、戦闘開始直後に両軍全力のぶつかり合いは珍しくない。何処に落ちるかも解らない複数の砲弾を、その着弾を目視で予測し回避しながら前進することに比べたら、ゲームのチュートリアルよりも簡単だ。
(さて、そろそろかな。)
先程まで色々と機能を試していたのが早速役に立つときが来た。ジャミングの機能を発動させる。
「やられた!敵のジャミングだ!」
レーダーが見えない事にクーゴがすぐに気付いた。
「慌てんな、俺のジャミングだよ。」
ジャミング機能は元のゲーム内には限定的にしかなかったが、この世界では一般的な機能らしい。通信遮断、レーダー障害、ロックオン妨害など、種類も豊富だ。ちなみに機能はヘッドパーツによって異なるらしく、前の戦闘で撃破した敵機のヘッドパーツはそこまで機能が充実していなかった。
「敵の位置が分からないのに突っ込む気かよ!」
「位置ならわかる。地形は頭に入ってる。」
「そうじゃない、敵は4機だぞ!」
「だーかーらー、ジャミングかけたらすぐ突っ込むんだよ。ソッコーで突っ込めば1分かからずに着くだろ?」
なにやら理解していなさそうだったので返事を待たずに続けた。
「敵は1分の間に何が出来る?通信出来ねーからまずジャミングを解除しようとするかな?多分無理だけど。ATだけなら良いけど、輸送車が完全にお荷物だな。輸送車の護衛で離れらんねーし、勝手に動く訳にもいかねー。状況確認に手一杯で動けねーかな?」
敵が輸送車から離れて包囲しにきていたら状況は違っていたかもしれないし、ゲームだったらまず輸送車から離れて包囲する。
(でもまぁ、ゲームとは違うしな。)
ゲームでないなら、ATの次に怖いのは生身の歩兵の存在だろう。
(まぁ、もっと怖いの拝ませてやるけどな。)
途中から建物の上に飛び移り、屋根から屋根へブーストを吹かしながら進んだ。
建物の下、アスファルトで舗装された道には2機のATが自分に合わせて並走していた。
次回、戦闘。