第6話。
「各部異常なし、システムオールグリーン!」
(…いや、違うな。)
敵の輸送車を待っている間、余りにも暇すぎるので「ロボットに乗ったら一度は言ってみたい出撃台詞」を片っ端から試していた。
途中クーゴとキャリアーに話し相手になってもらおうと思って話しかけたら、「仮眠をとりたい」と拒否された。構ってちゃんだと思われたくなかったので「わかった」とだけ返した。
もしかしたら二人でこっそり通信してるかもしれないと思って、何回か周波数チェックをした。
「戦闘システム、起動!」
(…んー、シンプルすぎる。)
何を喋ってみてもどことなく微妙に感じるのは演技力が足りないからだと思い、30分程「AIぽい機械的な喋り方」の練習をした。
(暇潰しができるゲームとかないかなぁ)
って考えてたら検索ウィンドウが開いてマインスイーパーを見付けてきてくれた。なんであるんだよ。
百回以上地雷が爆裂する音を聞いた。さすがに理不尽な二択は考えて解けるものじゃない。
検索ウィンドウくんに「暇を潰す方法」とかふざけて入力したら「スリープモード」が候補に出てきたので、スリープモードにしてみた。
気がつくと、クーゴがコックピットに乗り込んでいた。
「でええええええええ!?」
「うわぁぁ!何だ何だ!?」
「なんでお前がここにいるんだ!」
「その声はジューゾーか!?お前どこ行った!?」
「これが俺だよ!」
「だからどこだって!」
「……………………。」
無言でクーゴに見えるようにモニターにウィンドウを表示させる。OSの表示にテキストで「この機体のOSが俺だ。」と補足を入れる。ついでだから先の3機との戦闘記録も別ウィンドウで流しておいた。
「嘘…だろ?」
正直、自分自身でもまだ夢なんじゃないかって思っていた。目が覚めたら布団の中にいて、ネトゲ仲間にSNSで「今起きた」って送信して、FPSオンラインゲーム「アームドタイタンズ」で俺TUEEEをする。そう思ってた。
「これが、俺だよ。」
クーゴに言ったつもりだったが、自分の言葉に自分が一番ショックを受けていたと思う。
「ゴースト、だったのか…」
「…ゴースト?」
ゴーストについてクーゴが色々教えてくれた。元は無人のATが勝手に動き出す事の意味らしい。以前までは怪奇現象のような扱いだったが、ここ数年で意味が変わってきたそうだ。
「例えば、こんな話がある。」
クーゴが話を続けた。
「一機のATにとある部隊が壊滅させられた。その部隊の生き残りに、敵のATのコックピット内に座るパイロットを見たやつがいたらしい。曰く、生きてるか死んでるかわからない、ただ少なくともまともに操縦できるはずのない、血まみれのパイロットが座っていた。とかな。」
「………………………………。」
「最初は皆ホラ話だと思ってたよ。ただ証拠のない嘘話は増える一方だし、ゴーストに壊滅させられた部隊のATの残骸から、無人のコックピットが映ってるログも上がってる。」
(俺みたいな奴が他にもいるってことか。)
「変なこと聞くが、そんなゴースト野郎と話してて怖くはないのか?」
「味方になるつもりなんだろ?頼もしいじゃねーか。」
「そっか、ありがとう。」
クーゴの言葉に安堵した反面、俺は自分以外のゴーストの存在が気になっていた。