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第3話。

敵視点で書いてみた。

「敵の動きが止まった、追い付くぞ。」


先頭を走る一番機からの通信だ。


「三番機より一番機、待ち構えられてるかもしるれない、気を付けて。」


俺達は強奪された実験機の奪還を目的に、急遽編成されたチームだった。三人とも今日が初めての顔合わせである。お互いに名前は知らないし、名乗らなくても良いと上から言われた。噂話にしてほしくない作戦らしく、出撃前に誓約書を書かされた。


(馬鹿真面目だな、三番機の奴。)


見ず知らず同士で組んだチームとはいえ、お互いの声は大体わかる。誰かが送信してる間は他の人間が送信できないタイプの通信方法である為、わざわざ名乗るくらいなら1秒でも早く通信を切って欲しい。


一番機が止まる。それに合わせて自分の二番機、並走していた三番機が一番機の後ろで止まる。


「一番機、先行する。」

「三番機了解。」

「了解。」


一番機が助走を付けて角を曲がる。少しでも敵に照準を付けられにくくする為に、スピードを付けてコーナーをアウトギリギリで曲がり、蛇行しながら通路を進んでいった。


「なんだあれ。」


一番機が何か異変に気付いたようだった。


「ちょっと来てくれ。」

「了解。」

「三番機了解。」


角を曲がると100メートル程先に件の実験機が見えた。よく見る前に癖でロックオンしてしまったが、どうやら動く気配は無いようだ。


「見ろ、ハッチが開いてる。」


コクピットのハッチが開いており、中には誰も居ないようだ。


「自爆は?」

「三番機より二番機へ、自爆機能は作動していないようです。」


「あっそ。」と心の中で返す。


「一番機、近くにパイロットはいたか?」

「いや。」


件の実験機はコクピットハッチを開けたまま、何故か自分の左手を見つめているようなポーズで立っていた。確かに「なんだあれ。」と言いたくなる光景だ。


「三番機より一番機、本部への報告は?」

「一番機だ、もうやってる。」


本部からの返信は早かった。大型の輸送車を手配してくれたらしい。これで帰りは車に乗って楽に基地に戻れる。


一通りの本部とのやり取りを終え、一息ついた瞬間だった。


「気を付けろぉ!後ろだ!」


不意に誰かが無線で叫んだ。


リラックスしかけていた体が一気に強張る。機体を急旋回させ振り向きライフルを向ける。自分よりやや遅れて三番機も同じ行動を取っていた。恐らく一番機もだろう。


振り返った先には何もいなかった。それと同時にある疑問が頭に浮かぶ。


(誰の声だ、今の…?)


直後、背後から銃声が聞こえた。


ドドドドドッ!


俺達の装備しているライフルの銃声ではなかった。


「撃たれた!実験機!」


一番機の声だ。


(嘘だろ!無人じゃなかったのかよ!)


急いで振り返ると既に一番機が実験機と交戦していた。一番機がライフルで実験機を狙うが一発も当たらない。一番機が照準を合わせた直後に、実験機は恐ろしい位の反応速度で射線から逃れていた。


(化け物かあの動き…!)


一番機の背部にはマシンガンの弾痕があった。そのうち二発は不味い箇所に被弾している。一番機に加勢するべく実験機にライフルを向けてトリガーを引いた。


「ビビーッ!」


(フレンドリーファイアのアラート!?)


味方と識別されている機体に発砲できないよう、味方機が射線付近にいる場合には撃てないようになっている。すぐにフレンドリーファイアのロックを解除し、援護射撃を加えた。


「一番機、脱出しろ!それ以上動かすと誘爆するぞ!」

「さ、三番機より一番機、その位置に居られるとロックがかかって撃てません!移動してください!」

「誘爆すっから動かすなっつったろうが!フレンドリーファイアのロックを解除しろ!」


突然、一番機が叫んだ。


「弾が出ねぇ!なんでだよ!」

「リロードしろぉ!」

「ちがう!弾切れじゃないんだ!」

「つーか脱出しろっつったろうが!」


その時、一番機が急旋回しこちらを向いた。そのままライフルを三番機に向けると、一発、二発と発射した。


「何やってんだぁー!」

「ちがう!俺じゃない!」

「お前だろうが!」


被弾しながら三番機が後退する。


「わかった!ハッキングされ…」


一番機が五発目を撃ち終わった直後、一番機の背部から小さな爆発が起こった。爆発がオイルに回ったのか、すぐさま一番機の胴体が炎に包まれる。火だるまのまま三歩進むと、オートバランサーが切れたのだろう、前のめりに倒れて動かなくなった。


(ハッキング…って言ってたか…!?)


ドドドッ!


少しの間唖然としていたが、マシンガンの銃声で我に返る。片膝をついて両腕でマシンガンを構えている実験機が見える。腕の隙間から実験機のコックピットが見えた。


コックピットには誰も居なかった。


(ゴースト…ッ!?)


三番機へ向いていた銃口がこちらへ向くのが見える。


(ーーーーーッ!)


左にステップし回避を試みるが、少し遅かった。右腕に命中しライフルごと肘から先が無くなった。


「うぅ…あぁあああ!」


機体を急旋回させて実験機に背を向けた。そのまま角を曲がりビルに隠れて射線を切る。実験機の方を向いて後ろ歩きに後退する三番機のコックピットは、マシンガンで正確に撃ち抜かれていた。


ガチガチガチガチガチガチ…


恐怖で歯が震える。呼吸も定まらなかった。


(武器…武器…)


機体の腰にマウントされている予備武器のハンドガンを左手に装備させる。まだ呼吸が収まらない。


レーダーを見る。実験機はゆっくりとこちらに近づいているようだ。三番機の反応もまだ生きていた。


ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ


三番機が後ろ歩きのままビルの角を曲がって姿を現した。そしてゆっくりとこちらに向き直る。


(生きてるのか!?)


「おい!大丈…」


こちらからの無線が入らない。誰かが無線を開いているからだ。


「三番機より、二番機へ。」


(………………!?)


三番機がゆっくりと近づいている。


「フレンドリーファイアのロックを解除しました。」


(アイツの声じゃ…!?)


(「わかった!ハッキングされ…」)


一番機の断末魔を思い出す。


三番機の銃口は二番機のコックピットに向いていた。




「発射シマス。」

長くなっちった。

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