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俺の教会 前

 おう俺は山賊だ。

 今も吊り橋を根城にしてる。

 この吊り橋に近くには俺演出の青空教会があってな、この教会ってのが美味い。

 この橋を利用するのは村人と旅人くれえだからだ。

 すげえ安全に稼げるうえに、金に食糧も貰える。

 それがうめえ。


 ちげえ。

 スゲー超うめえ、もうここを離れたくねえぐれえだ! 

 俺達は今最高に輝いていやがる。


「頭、一番テーブルで主神の聖血、拝領(はいりょう)です」

「おう、福音はなったか?」

「天上まで響きました」

「そりゃスゲエッ、よっしゃ、最高のを出してやる」


 俺は崖下に垂らしてある縄を引っ張り上げると、川で冷やしていたワインを回収した。


「頭様、四番テーブルで主神の涙、拝領(はいりょう)たまわりました」 

「チッ、しけてやげる。福音は?」

「いつか訪れるかと」

「そうか、水はそこのもってけ。村に伝えてくらぁ」


 俺は営業用の狼煙(のろし)の脇で、流民用の狼煙を上げた。


「かしらっ、三番テーブル天に召されるって」

「おおそうか、使徒様は今生でどれだけ徳を積んだのかなっと」

「…かしら、やっぱ趣味悪くない?」

「馬鹿言うな、コレが大事なんだよ。見ろ羊たちの満足そうなツラをよ」


 みんな不敬すぎ、焼かれちゃえばいいのに、と呟くマーシェ。

 俺は客から寄付を受け取った。


 働くってのは最高だな。

 俺は最高だ!

 もうここはだだの教会じゃねえ。

 子羊を導き、(けがれ)れを(はら)い、善行を積ませ、天に還す。

 こいつ等を一連の流れとして行う事のできる、最強の教会だ。

 アイリから聞いて学んだぜ。


 懺悔(ざんげ)……罪を告白して悔い改める事

 聖体拝領(せいたいはりょう)……主神と教えの実存を信じる事と、主神との一致。

 赦祷(しゃとう)……自身の信仰や善行によって、罪の許しを乞う事。


 まあ他にもゴチャゴチャ言っていたが、無視だ。

 我が教会では


 懺悔(ざんげ)……入店から注文。

 聖体拝領(せいたいはいりょう)……実食。

 赦祷(しゃとう)……会計。


 という無駄なく、素早く、満足できる教えを提供している。

 この教えを導入してからもう客がわんさかよ。

 ここまで仕上げるのはすげえ苦労した、もう戦いの連続だ。

 俺は諦めずに粘り続けたそしてこの形を作った。マジで自分に感謝だぜ。


 戦いの相手は勿論アイリだ。

 いきなり今の形にはできなかった。だから小さな勝ちを重ね続けたんだぜ。


 俺達が協会を作ってからは順調だった。

 金のない流民は村の労働力に。

 金のある流民は、説法と引き換えに寄付を。

 村人は、教会を始めてからは食料だけじゃなく寄付もくれた。

 だから良かった。

 食うには困らねえし、僅かだが蓄えもできた。

 俺達はこのままいけると思ったんだが、状況が変わりやがった。


 流民がパタリと来なくなったんだ。


 そう、騎士団と教会の争いが落ち着きやがったんだ。

 俺達は困ったね。

 流民が儲けの大半を占めてたからだ。

 しょうがねえから、一人辺りの寄付のさらなる増額を考えた。

 だがこれが難しい。

 既に説法は長時間仕様になっていて、これ以上説法を伸ばして稼ぐのはむしろ良くねえ。

 アイリにゃ悪いが説法はつまんねえからな。

 かといって今以上にどんな演出をすればいいのか、考えつかねえ。

 まだまだ精進が足りんな。

 俺達は何も思いつかず日々をただ無駄に過ごしていた。

 減っていく蓄え。

 増えていく雑草。

 荒れていく心。

 そんな時に客の一人がこう言った。「水を一杯いただけないでしょうか」とな。

 俺は気持ちよく水をくれてやった。

 そしたら客が寄付に色を付けやがった。


 俺の頭に稲妻が走ったぜ、そして後悔した。


 なんで俺は今までトークンや場所等の質の向上しか考えていなかったのか、もっと単純で確実で絶対的なサービスがあったと言うのに!

 そう、飲食物の提供だ。

 だが単純に出すだけじゃあアイリが認めるはずがねえ。

 教会は食堂じゃねえとな。

 だから俺は勉強することにした。

 アイリに頭を下げて神の教えをこうた。

 あいつは気持ち良く教えてくれた、そして頭様もついにってすげえ喜んでくれた。

 俺達はその時、確かに一つになったんだ。


 そしてすんげえ怒られた。

 俺がなんのために勉強しているのか、ぽろっと口に出したらキレちまった。

 教会は食堂じゃあねえと。

 恵むのはいいが商売はできないと。

 やっぱり言われちまった。

 だが、このままじゃあ俺達はジリ貧だ。

 それはアイリも理解してた。

 だから儀式として少しだけっつう事でサービスが始まった。


 始まりは聖水だ。

 まあただの水なんだが、一応アイリが祈って聖別した水だ。

 効果は知らんがありがたみはある。

 この水を説法後に羊に振りかけてやるんだ、希望すれば飲ませてもやる。

 いわゆる堅信ってやつだな。

 神への信仰を堅め、恵みが増えるッつう話だ。

 ホントかよ。

 この儀式を、お手軽かつ何回でもやってやったんだ。

 アイリは一回しか駄目ですって言ってたが、それはいつの間にか崩れちまった。

 羊が何回でも欲しがったからだ。

 欲しがる羊達に、食うのに困っていた俺達、秤のバランスが揃っちまった。

 それに羊の喜ぶ顔を見てアイリはほだされた。


 それからは説法に聖水が加わった。

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