俺のチャペル
おう俺は山賊だ。
今は大都市の近くの森を根城にしてる。
この森の近くには街道がいくつもあってそれが美味い。
獲物なんてより取り見取りよ、好きな時に好きな奴を選んでひょいパクってわけだ。
気ままな毎日だそれがうめえ。
まあ気を抜くことはできないがな。
俺は今当然の如く広域手配されてる、やらかしたことがデカくなっちまったからな。
あの鉱山にいる衛士全員のしたら囚人が皆脱獄しちまったんだ。
あいつ等下向いてやがったのに、衛士がいなくなったとたん現金なもんだぜ。
礼もなしに好き勝手に逃げやがった。
たまんねえよ。
それで主犯が俺になってるんだぜ、ちょっと人間不信になっちまった。
子分のラースともお別れだ。
まあ元々あいつは外に出たら旅に戻るッつう話だったからしょうがないんだけどよ。
それから俺はここにいる。
今回の手配は範囲が広くてなあ、外に出るのは止めてむしろ足元に潜むことした。
そうここは帝都近くの森だ。
これが案外ばれねえ、客を捕獲した時の処分には苦労してるが何とかなってる。
むしろ帝都から離れた場所はやべえ。
信じられねえぐらい気合いの入った帝都騎士団が俺を探し回ってるらしく、周辺の山賊、盗賊問わず潰しまくってるっつう話だ。
どうもあの鉱山に衛士を派遣していたのが帝都騎士団だったらしくな、皇帝がおかんむりで騎士団解体の危機だ。逆に株を上げたのが衛士の受け入れ先の近衛騎士団だな。まあ特に何をしたわけじゃあねえが対抗が下がったから、持ち上がったッつうのがもっぱらの噂だ。
そして俺が噂の渦中のブルーバードだ。
近衛からは幸運のブルーバードと呼ばれ、帝都騎士団からは不幸のブールバードって呼ばれてるみたいだ。
まあそういうわけで、懸賞金がすげえ吊り上がってる。
聞いた話によると城が立つとか立たねえとか。
それにビビった俺は子分が作れなかった。
だがいねえことにはしょうがねえ、俺は挑戦したみた。
一回だけ、ほんのちょっと試してみたら、騎士団や村人の山狩りが可愛く見えるレベルで襲撃されたんだ。
逃げれば逃げるほど追いかけてくる奴らが増える、世界中の人間が敵になったような気がした。
もうどうしようもねえと思った時に助けられたたんだ、今の俺の子分にな。
そう、元司祭のアイリだ。
こいつと出会ったのは崩れた教会だ、俺が隠れる場所を探しに入った講堂の中で出会ったんだ。
アイリは指名手配を食らった俺を匿ってくれた、匿う事がばれたら死罪さえあり得るのにこいつは迷える子羊を救うのが私の使命ですと言い切りやがった。
俺は惚れたねこいつの有り様に、格好良かった痺れたぜ。
女だけどこいつは漢だ、俺はすぐに子分になるように説得した。
駄目だった。
スゲエ拒絶しやがる、何度も粘って頼み込んだが私にやる事があると言って聞きやがらねえ。
それで俺は聞いた何がしたいんだってな。
「私はあまねく人々に神の教えを伝えていきたいです」
「だが、見たところうまくいってねえようだが」
「…それは、恥ずかしいですが私の不徳のなすところです、けれども私は諦めません」
「諦めねえのは感心だがな、誰も来ねえところにいてもしょうがねえだろ」
「これは神の試練と考えております」
「そうか、じゃあその神の試練俺も手伝おうじゃねえか。だから一緒に来い、試練っつうのは待つものじゃなくて、自分から受けるものだろ?」
「……少しだけお話を聞かせて下さい」
こいつも参っていたんだろうな。
アイリの事情を聞いたがこいつもわりと可哀想なやつだった。
上司から迫られていたのを躱したら放火の容疑で逮捕されて、なんとか無罪を勝ち取り教会に戻ると自分の席はなかったそうだ。
そのうえ実家にも縁を切られてて着の身着のままこの教会に流れ着き、以来細々となんとかやってきたとか。
確かに線がすげえ細いな。
俺が持っている飯を恵んでやるとすげえ喜んで食いだした。
ある程度腹が膨れると、自分の事を浅ましいとか言って恥やがる。
俺は言ってやったね。
「久しぶりの飯を喜ぶのは当たりめえだ、飯を食うのは恥じゃあねえ、本当の恥ってのは、…………俺みてえな奴だ」
本当の恥を思いつかなかった。
しょうがねえから俺だと言ったら何故か感動されてな。
一緒について来ると言いやがる、棚からぼたもちだがおれはアイリを子分にした。
それから苦労した。
アイリは俺の山賊行為を酷くお気に召さないからだ。
こいつは子分の筈なんだが、まあしょうがねえからこっそり山賊して路銀稼いだ。
それ以外はアイリは優秀な奴だ、すくねえ金で一杯の食糧を買ってくるし、食える野草にも詳しい、水場のある場所も嗅ぎつけやがる、前歴が本当に司祭なのか疑わしいぐれえ逞しい奴だ。
俺の手配を逆手にとって帝都近くに潜もうと言ったのもコイツの提案だ。
その発想はマジでビビる、漢らし過ぎんだろ。
元聖職者じゃなくて暗殺者とかなら納得できるわ、身のこなしも鋭いしな。
まあそういう訳で俺は帝都近くに森に潜んでる。
俺はいつものように人通りの少ない林道を歩く行商人を襲った。
奴は一人だった、帝都に近いからか油断しながら馬を引いている。
俺はゆっくり獲物を見定め所定の位置に着いた。
ヒム・チャペルフォーメーションだ。
獲物の前面をゆったり塞いで上で、丸太で作った十字架をもって飛び出すのだ。。
渋るアイリを納得させる為に作った俺の忍耐の陣形だ。
この陣形を使うようになってからは、腕の筋肉がパンパンだ。
俺は信奉する善行の神シャラスナに祈りを捧げた。
早く説法が終わってくれってなあ。
「天国に行きたきゃ、説法受けてお布施を置いてきな!」
いつもの口上、いつもの陣形、いつもの獲物。
俺は目深いフードを被り笑みすら浮かべ奴に迫った。
これは俺の美学だ。子分がしたいと思う事をさせてやる度量のでかい俺のカリスマだ。
俺はいつものように十字架を掲げると、いつものように子分に合図を送る。
そうするといつものように獲物の正面に歩いた子分が辻説法を始める。
いつものように獲物が不可解そうな顔を作り、次第に話しに呑まれていく。
「貴方は神を信じますか」
ありがとうございました




