俺はブルーバード
おう俺は山賊だ。
今も大自然に囲まれた山を根城にしてる。
この山には洞窟があってな、この穴から運び出される岩石が重い。
この岩石を利用するのは帝都の商人や職人ぐれえだからだ。
こいつ等は俺の事情をお構いなしにデカい岩石を好みやがる。
だからおめえ。
あれから順調に反乱を失敗し続けた。
もう22回目になるかなあ。
最近は惰性で反乱を続けてるような気がしてきたぜ。
衛士にはブルーバードって呼ばれてるしな。
まあそんなことより反乱だ。
駄目だった。
今度こそと思ったが、後ろからの援護がなかった。
…もうジョルダンとペアの時は反乱を止めだ。
アイツは俺の可愛い子分だが、あいつは俺より岩の事を愛してるみてえだな。
たまんねえよ。
こんな失敗だらけだが、実は一回マジで成功しかけた時があった。
衛士をぶちのめし、千切っては投げ千切っては投げの過去最高の活躍だ。
俺はそのとき確かに自由だった羽ばたいていた、そしてそのまま外に突っ切ろうとしたら、デディがブルっちまった。
刑場の出口に何かいるのか、しきりに手を振るばかりで動きやがらねえ。
ペア組んでるときは紐でお互いが結ばれッてから俺も動けねえ。…だから俺も出口に向かって手を振った。
デディとは意味が違うけどな。
それからも反乱は続けた。
もう衛士との馴れ合いみてえなもんだ。
あいつ等は俺をぶちのめせば帝都に帰れる。
俺は一度でも成功すれば脱獄できる、まさにウィンウィンな関係だ。
ただ子分どもが皆いなくなっちまった。
まず初めに折れたのはダフィンだ。あいつの牙は既に抜けていたからな、五回反乱に付きあわせたらもう懲りちまった。
ジョルダンはもう岩石と離れられないと告げてきやがった。
ホイタンはビビり過ぎてもう医療小屋から出てこねえ。
鞭で叩かれて喜んでいたデンチンは、馴れあいの折檻はお気に召さないらしく、愛が足りん、と言って抜けた。
ヨーイとデディはちょっと異常だ。あいつら最近一心不乱に何かを祈っていやがる。祈りの文句を聞くと俺もブルっちまうようななにかを呼びたいらしい。当然子分は止めた。
そして誰も居なくなった。
少し落ち込んだ俺だが、良い事があった。
新しい子分が出来たんだ。
元詩人のラースだ。
こいつは最近鉱山に入れられたらしく、まだ何も知らねえ希望に溢れた奴だ。
そして、こいつは俺をやる気にさせるのがすげえ上手い、なんでも歌にして褒め称えてくれやがる。
俺はこいつに救われた、やる気になったんだ。
そっから俺達は調子を上げ反乱を続けた。
暑い日、雨の日、嵐の日、寒い日、いつでもいつまでも。
ラースは折れなかった、当然親分の俺もだ。
俺達は拳を振り上げ続けた。
そして気付いた。
衛士の数が減っていることに。
衛視は俺達をぶちのめせば帝都に帰れる。
勿論、帰った衛士の代りは補充される、その事は知っていた。
だから気付かなかった。
補充を上回る速度で衛士を帝都に帰していたことにな。
気付いた時にはマジでビビったぜ。
こんな事あるのかってな。
信じられねえが補充と帰還は部署がちげえのか。
なんちゅう縦割り行政、騎士団よりひでえ。
俺達はさらに調子にのって回転を上げた。
俺はいつものように照り付ける太陽の下、囚人を監視をする衛士を襲った。
奴は一人だった、荷車の前に立って呆けてやがる。
俺はゆっくり獲物を見定め所定の位置に着いた。
モンテクリストフォーメーションだ。
馴れあいに油断しきった獲物にマジの一撃を入れる、囚われ続けた俺の復讐の陣形だ。
この陣形は初めて使う、必ず成功させる。
俺は信奉する悪徳の神リーファイスに祈りを捧げた。
反乱の成功と補充はまだ来るなってなあ。
「命が惜しけりゃ、鍵とナイフを置いてきな!」
初めての口上、初めての陣形、いつもの獲物。
俺は笑みすら浮かべ奴に迫った。
これは俺の美学だ。負け続けた俺がついに鳴らすことのできた鐘の音だ。
俺はいつものように手枷を鳴らすと上段に構え、いつものように子分に合図を送る。
そうするといつものように俺の後ろから子分が岩石を投げつける。
「後五人」
ありがとうございました




