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お助けキャラは変態ストーカー!?  作者: 雪音鈴
3章 呪縛で歪む愛故に
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XX 47 XX 油断は禁物(裏)


~シアン視点~


 心臓が破裂しそうなほどの速度で動いている音が聞こえる。ここまで走ってきたこともあって、息も尋常じゃないくらい乱れている。きっと顔も真っ赤だろう。


 静かな彼女の部屋の中――僕の荒い息遣いの音だけが響いている。


 僕は扉を見つめながら動くことができなかった。


(ど、どどどどうしよう!?)


 後ろには下着姿の彼女――

 目を閉じれば、先程バッチリ目撃してしまったセクシーな彼女の姿が脳裏に浮かぶ。


(し、鎮まれ僕の鼻血!! ルチアーノの部屋を血まみれにしたくはないし、何より、彼女にかっこ悪い所を見せたくない!!! そ、そもそも、なんで扉閉める時にこっちに入っちゃったの!? バカなの!? 確かに彼女に怪我がないかとか色々心配ではあったけど、どどどどどうしよう!!!!!?????)


 僕はグルグルと回る思考を落ち着かせるよう、ギュッと白衣を握りしめる。その時、髪から零れた雫がポタリと腕へと落ち、その冷たさに驚いてしまう。

 火照った身体にはちょうど良いかもしれないその雫に、自分がどんな格好でここに辿り着いたのか気付かされ、カッと全身が余計に熱くなった。


(急いでたから気にしてる理由なかったけど――僕、シャワーの途中だったから、髪も濡れたまんまだし、何より――――白衣しか着てない!? 白衣の下全裸ッッッッッッ!!!! え、変態!? 僕、変態なの!!?? どどどどどうしよう――このままだと、僕もルチアーノに変態認定されちゃう!!!???)


「えっと……シアン?」


「あわわわわわわ、ごごごご、ごめん!!! その、ルルルルルチアーノのことが、その、し、心配でい、急いで来ちゃって!!!! その、あの…………」


「そ、そっか、心配してくれてありがとう」


「ルチアーノのためならこ、これくらい――」


(ルチアーノ、君のためならなんでもしてあげたいんだ……僕の自己満足だけど、君がずっと笑顔でいられるように守っていきたい。誰かのために行動したことなんて今までなかったから、上手くできるか分からないけど、それでも、彼女のために――)


「け、怪我とかはなかった? 大丈夫?」


「怪我はないよ。ま、まあ、色々と驚きはあったけど――」


 彼女の言葉に、とりあえず胸を撫で下ろす。


(怪我がなくて本当に良かった……変態さんはもちろんだけど、あのリヒトとかいう生徒――気をつけないとな)


「あ、でも、シアンはなんで私の非常事態が分かったの?」


 彼女の何気ない疑問に、身体が冷や水を掛けられたように冷たくなり、サアッと血の気が引いた。


(どどどどうしよう――彼女の危険が分かるようにって、部屋に盗聴用魔力術式仕掛けちゃってたなんて言えない!!!)


 嫌な汗がダラダラ出てくる。


「あ、もしかして、シェロンが急いで来たの見て!?」


「ふぇ、ああ、その、うん、だから――」


「そっかあぁぁ、ありがとう!! 心配かけちゃってごめんね? 髪濡れてるけど、風邪引かないようにね?」


「これは、だ、だだだ大丈夫だから!!! で、でも、その、心配してくれてあ、あり、がとう……」


(うぅ、変態さんを理由に使ってしまった――)


 彼女の純粋な気持ちに、だんだんといたたまれなくなってくる。


「あ、シアン、もう着替えたからこっち見ても大丈夫だよ」


「ご、ごごごごめんなさああああぁぁぁぁい!!!」


「え、あ、シアン!?」


 彼女が発した『着替え』という言葉に、今まで考えの外にやっていた彼女のあられもない姿と、聞こえないようにしていた衣擦れの音を思い出し、頭から蒸気が出るほど血が沸騰して、思わず逃げ出してしまった。


(うわあああん!!!! 僕、やっぱりめっちゃかっこ悪い!!!!)


 来た時と同じように全力で長い廊下を駆けていると、背後から彼女の声が飛んできた。


「シアン、私は大丈夫だよ!! 下着なんて水着みたいなもんだから、気にしないで!!!」


「ルチアーノはもうちょっと気にしてよ!? き、君はとっても魅力的なんだからああああぁぁぁ!!!」


 彼女の発言に、僕は反射的にツッコミを入れてしまっていた。もちろん、飛び出してしまった自身の言葉に、頭を抱えたくなったのは言うまでもないだろう。


(わああぁ、わああああぁぁ、僕のバカアアアアアァァァ!!!! あれじゃ、まるで告白みたいじゃないか!! こ、これからどんな顔で彼女に会えば良いの!?)


「シーアーンー!!! ありがとうね!!!! やっぱりシアンは優しくて良い子だね!!!!!」


 彼女の言葉に、僕は曲がり角をちょっと過ぎた所で盛大に転んだ。転ばずにはいられなかった。


「う、うぅ、良い子って……そういうのじゃなくって、僕は君が――君のことが……」


(好きだからなのに――)


 廊下にうずくまり、恋愛対象としてはまだ1mmも考えてもらえていないことに、思わず呻いてしまう。


「ま、まあ、まだ全然言えるような感じではなかったから良かったのかもしれないけど、はあああああぁぁ」


「残念だったな、根暗」


「なんだよ、変態さん。僕は今、君の相手をしてるほどのメンタルがないから、さっさといなくなってよ」


 廊下に額をこすりつけ、ため息をつく。


「根暗も変態だろう? 裸に白衣だし」


「う、うるさい――な……って、はあああああああぁぁ!!!????」


 顔を上げて抗議しようとした僕は、腰にタオルしか巻いていない変態さんが、堂々と立ちふさがっていることに、盛大に驚いてしまった。


「うるさいのは根暗の方じゃないか」


「いやいやいや、だって、へ、変態さんこそ、な、ななななんて格好を!!! ま、まさかルルルルチアーノの部屋にその姿で!!!???」


「根暗が白衣なんかを羽織っている間に、俺はそのままでルチアの元に駆けつけたからな!! ルチアの危険に一番に駆けつけられないなんて、やっぱり根暗はまだまだだな!!!」


 得意げな変態さんに、沸々と苛立ちが沸いてくる。


「へぇ、そう、そっか――なるほどね、彼女の発言からして、変態さんはその汚らわしいモノを彼女の視界に入れさせちゃったんだ。ああ、そうだね、床に座ってる場合じゃなかったよ。君を――即刻排除しないとッッッ」


(やっぱり、変態さんが一番油断ならない!!!!! 普通の危険からだけじゃなく、変態さんの毒牙からも彼女を守らなくっちゃ!!!!!)


 毒針と毒霧を操り、変態さんを攻撃したが、やはり軽くかわされた。


 まあ、その後、僕がうっかり変態さんのタオルを毒で溶かしてしまい、近くを通ったリスのように小柄な学生達が黄色い声を上げ、興味津々に僕らの姿を見つめていたのは……なんというか、殺意もどこかに行ってしまうほどマヌケな光景だったので、今日の戦闘はお開きになったのは言わなくてもいい話だったかもしれない……うん。





☆★☆★☆




今回、評価をしてくださった読者の方々がたくさんいらっしゃって、最近低下していた執筆したい力がようやく湧いてきました.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.


読者の皆様のお声や反応が、いつも励みになっています(*´ω`*)

本当に本っっ当に、ありがとうございます(///ω///)♪


また、次回の投稿は【2019/1/27(日)】までに行いますので、今後とも何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m


※2019/1/21(月)記載




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