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お助けキャラは変態ストーカー!?  作者: 雪音鈴
3章 呪縛で歪む愛故に
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XX 37 XX 決意と歪み


 フェル様と友達関係とやらになり、その空中庭園(文字通り浮いてる)から地上へと帰る。来る時にも乗った大きな鳥籠のような銀色の格子に巻き付いた蔦が動き、扉が勝手に開いてくれる。この蔦は魔力に反応し、勝手に動く仕様らしい。


 うん、この世界にも自動ドアはあったんだね……


 他にも応用例がありそうだけど、今のところ私が生活している空間では手動式のドアしか見たことがない。まあ、魔力で出来たドアが消えるという現象は見たことがあるけど――


  鳥籠の中に入ると、蔦に着いていた桃色の蕾がふわりと花開き、途端に雰囲気が明るくなる。いや、明るくなったのは雰囲気だけではなかった。花自身もほんのりと桃色に光っている。おそらく、夜に見れば最高に美しい光景だろう。今がお昼時なのが悔やまれる。


 私の後から金髪ショートの美少女が乗り込んで来て、カシャリと格子の扉が閉まる。私と美少女が乗ってもまだまだ余裕がある鳥籠の中だが、空気が非常に重く、息苦しさを感じる。ちなみに、この親衛隊の美少女はフェル様から私をお送りするように頼まれてここにいる。


 フェル様の友達になるのならば、少なからず関わっていくことになるであろう彼女――毒華三姉妹のリーダー、エンゼ=シルキー=リャナン。彼女の得意科目は家事全般。フェル様はかなりの甘党なので、特にお菓子作りにおいて彼女の右に出る者はいない。


 金髪ショートを綺麗に揃え、キリリとつり上がった細い眉と黄緑色のつり目、ツンとした鼻に左目の下にある泣きぼくろ――このようにどこぞの悪役令嬢のようなキツイ見た目の彼女だが、印象とは違い、非常に家庭的で世話焼きなタイプなのが彼女だ。


 うん、本当なら是非ともお嫁にほしいレベルなんですよ……。そう、是非とも仲良くなりたいんです。


(よし――)


 私はゆっくりと下へと降りていく鳥籠の中で決意を固める。


「エンゼ様、これからよろしくおね――」


わたくし、貴方とよろしくなんてしたくありませんわ」


 私の言葉を遮り、冷ややかな黄緑色の視線を寄越してきた彼女……あ、その業界ではご褒美ですなんて思ってませんよ?


 でも、美少女ってどんなことやっても絵になるね!! おかげで私のライフはもうゼロだよ☆


 ほんと……美少女からの拒絶って一番心抉られるわ――


(うん、今日、部屋帰ったらマジで枕に顔うずくめて泣こう)


 そんな決心をしていると、彼女は腰に手を当て、ビシッと私を指差した。


「貴方のことはもう調べ尽くしていますわ! 精霊王様のご学友としては知力がまっっったく足りていない、ただの怪力馬鹿の貴方のことをこの親衛隊隊長のわたくしが認めるなんて――絶っっっっ対にありえませんわ!!」


(うわあ、怪力馬鹿とか――確かにその通りだけど、地味にヘコム……まあ、自業自得だけど)


「でも、私のことはエンゼで構いませんわ」


「え――」


(ま、まさかのツンデレ!!)


「精霊王様を呼び捨てになさるのに私達親衛隊を様付けなんて――貴方、やっっっっっぱり馬鹿ですわ!!!」


(あ、ですよねー)


 金切り声をあげる彼女に、ガックリと肩を落としてしまう。切実にツンデレのデレの部分がほしいです。でも、彼女がプリプリと怒っている姿も可愛らしくて、私のライフ、少し回復しました。


(いやあ、キーキー言っててもやっぱり美少女は目の保養ですね、癒されます……)


 鳥籠が下へと到着し、彼女が横に控え、そこから私だけ降りる。地面に降り立ち、再び庭園へと上昇していく鳥籠の彼女を何となしに見やると、彼女は私を見下し(実際に物理的にも見下されているのがなんとも言えない……)、余裕綽々の表情でニタリと笑った。


「これから覚悟なさい――ですわ」


 こうして、理不尽にも宣戦布告(?)を受けた私の受難、それはまだまだ始まったばかり……ああ、もう、面倒事は変態ストーカーだけで充分なのに――


 これから続く疲れる毎日を思い、いつの間にかハアハアしながら背後に控えていたシェロンを力いっぱいに殴り飛ばして気合いを入れる。


「やってやろうじゃん――フェルとその親衛隊の攻略!!!」






 ★ ★ ★






「面白そうなオモチャだ」


 地上へと降りていく花の檻――通称【華籠】を眺めながら、フェルはニタリと笑った。


「流石にウロコの一族に手は出せないが、最近は退屈してたところだ。それに………………かもしれないしな――」


 ぼそりと何かを呟いたフェルが暗く笑い、クッキーへと手を伸ばす。


「せいぜいオレを楽しませてくれよ」


 フェルが自室へと去り、蔦が絡まった扉がシュルシュルと動く。扉が完全に閉じ、空中庭園の妖精達の動きも指定の位置で停止した頃、空気がゆらりと揺れた。揺れた空間から現れた暗い影が、そっとクッキーへと手を伸ばす。フェルのせいで無残にも粉々にされたクッキー……影がそれに触れた途端、それは黒い粒子へと変わっていく。


「な、んでッ――――しの方がッ……のに……」


 フワフワと空へと上っていく黒い靄のようなソレを気にもとめず、影は折れそうになるほど強く奥歯を噛み締めた。鋭い眼光の先は、華籠――いや、正確には華籠の中にいる女性に向けられていた。


「赦せ、ないッ――」


 暗い感情を吐き出し、影はまた空気に溶けるように消えた……。

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