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お助けキャラは変態ストーカー!?  作者: 雪音鈴
XX サブイベントep1 XX
35/55

XX 30 XX ルチアvs植物型モンスター(前編)

★ ★ ★




はい、今回はルチアvs植物型モンスターの戦闘シーンがあります。植物型モンスターと聞いて、ちょっとウフフな想像をした人すみません。ガチの戦闘シーンです☆


また、今回はそこに行くまでの世界観説明が多いため、2話に分けました(^_^;)

そんなわけで、問題のガチ戦闘シーンは次話になります。ご了承くださいm(_ _)m




★ ★ ★



 結局、リヤンに特別優遇のカードを返した後も(ちなみに、私には最後まで3人のうち誰がリヤンなのか分からなかった……)クレアは見つからず、いつもと変わらぬ一週間を過ごした私は寮のベッドに盛大にダイブした。


(はあ……今日も一日疲れたなあ……とりあえず、ちょっと仮眠取ったら戦闘訓練しよう)


 いつもべったりのシェロンから離れ、気持ちに余裕も生まれている私は、左右にゴロゴロしながらこの時間を満喫する。


 寮の部屋は十六畳ほど。床も壁も天井も全て白で統一されている。魔力で収納空間を広げてはあるが、見た目は少々小さめの桃色のクローゼットに、白色の花が鏡の縁を飾る桃色のドレッサー。部屋の隅に置かれた小さな冷蔵庫に、ピンク色のカバーがかけられた等身大の姿見。魔力によりほんのりと桃色の光を発している部屋全体――もうツッコミはいれないと決めたが、何故かベッドは天蓋付きの桃色のダブルベッドである。


 どの部屋も全て防音強化されていることも相まって、本当にどこに力を入れてるんだと言いたくなるが、これこそが【異種族交配】を掲げた新世校しんせいこう。さすがと言わざるおえない。






 もちろん、全て私の趣味ではない。これがこの寮の女子部屋のスタンダードなスタイルなのだ。


 うん……この部屋は乙女チックすぎる&どこぞのラブホのようにしか見えない(一度も行ったことはないが)ため、ここは全力で私の趣味ではないことを強調したい。






 まあ、お金をかけたり、成績優秀者の特別待遇を行使したりすることで部屋の改築(隠し部屋も作れるらしい)や模様替えができるようだが、私はお金の無駄遣いをしたくないし、成績優秀者とかはさすがに今の段階では夢のまた夢だし――ってな訳で、今後もこの部屋で我慢する予定だ。


 さてさて、私のこの後の予定が【戦闘訓練】ということで、『なぜそんなことを?』と思う人のためにサラッと話しておきたい。ゲーム中では寝る前の行動をプレイヤーが決められた。選択肢は強制イベントがない限り3つ。




 【勉強】【情報収集】【戦闘訓練】




 勉強は知識パラメータを上げる。ちなみに、これが一定値以上ないと、フェル様のイベントで毒草回避ができずデッドエンド直行、シアンのイベントでシアンの毒体質に気付けずデッドエンド直行などなど――知識がなければ回避できなくて死んで当然だよね? という仕様だ。


 情報収集は夕食時でも可能だが、攻略対象の情報のみをより限定的に詳しく知るためにお助けキャラ――つまり、シェロンから情報をもらえる。ちなみに、これでもれなく攻略中のキャラの情報と執着しゅうちゃく度、殺戮さつりく度が上がる。


 殺戮度――物騒な名前の通り、物騒なパラメータ……これが一定値を超えると、文字通り殺戮エンドとなる。ここで、執着度が一定値以上であればルチア以外を皆殺しエンド。執着度が足りないと、ルチア殺しエンドで幕を閉じる。どちらも正直嫌なエンドだ。しかも、攻略対象全員にこの二つのエンドが用意されている。まったくもって勘弁願いたい……。


 そこで重要なのがこの【戦闘訓練】だ。これで殺戮エンドを回避できる場合がある。全部は回避できないが、回避できるものが多い方がいいに決まっている。特に、まだ関わってはいないが、魔王様攻略中はこの戦闘力が高いかどうかでエンディングが分岐するから、この訓練は欠かせない。


 また、勉強していなければ回避できないイベントに至ってはもう、イベントを全て知っている私には何がデッドエンドのキーになってしまうかが分かっているので、全力でこの【戦闘訓練】により肉体、精神を強化中だ。


 ……正直、シェロンとかシアンとの関わり方が完全にシナリオから外れてるから、今後もイベントに沿わないかもしれないけど――とりあえず、今はより生き残りが期待できる【戦闘訓練】一択で頑張っていきたい。


 うん、決して、勉強が苦手だから体を動かす方に集中しているわけではない。

 ま、まあ、勉強は得意じゃないけど……。


「よし、とりあえず、訓練場行こうっと!」


 気合を入れてふかふかのベッドから飛び降り、私は鞭を簡易ベルトに装着し、黒ジャージ姿で寮に備え付けられた訓練場(という名のトレーニングルーム)へと出かけるのだった。






 ☆ ☆ ☆






 訓練場の【0127】と黒字で書かれた青い扉の右横にある小さな長方形の青いプレートに生徒手帳にもなっている腕輪をかざすと、ピピピッ――という無機質な音が鳴り、青い扉が半透明になる。その中をくぐり抜け、六畳ほどの全面白塗りの一室に入ると、青い半透明の扉は使用中である赤色に変わり、再び半透明ではなくなった。


 ちなみに、青は予約中、赤は使用中、白は空きとなっている。予約は訓練場に入る前に腕輪に付いてるシステムで行うことができるが、予約していなくても白い扉の部屋は自由に使用していい決まりになっている。


 腕輪での予約は食堂にあった巻物みたいな感じで、腕輪に埋め込まれている黒い球状の石を押しながら魔力を流すと半透明な青色の盤が展開し、メニュー画面の予約ボタンから食堂の席や訓練場、実験室等々――いろんな席や部屋を予約できる仕組みだ。他にも腕輪のIDを交換した者同士は通話やメールができたり、電子マネーの機能も付いている。


 電子マネー……そう、ここにもあるのだ。

 でも、私は未だに慣れず、この機能を使いこなせていない……。


(だって、現世いま前世むかしも田舎暮らしだったし、ずっと現金支払いだったし――)


 なんだか、ファンタジー世界というよりは微妙にSFチックなハイテク感のせいで、正直、最初の頃はかなり落ち着かなかった。未だに他の設備で驚かされたりするし――空間移動を使ったエレベーターもどきの設備とか……所々に魔力使ってくるのがまた面白い。


(まさか、乙女ゲームの世界にこんなふうな設備が揃ってて、その主人公であるルチアがこんなふうに戦闘訓練を行っていたなんてスゴイよねぇ)


 真っ白な部屋の中央に浮かんでいる青い球体に生徒手帳にもなっている腕輪をかざして魔力を展開させる。それに合わせて浮かび上がった半透明な緑の盤に簡易的な設定を入力し終わると、青い球体が赤色に変化し、目の前を赤い光で覆い尽くした。


(設定はもっと細かくもできるけど……今回は一般的に用意されてる設定で良いよね――)


 あらかじめその光を想定し目を閉じながらそんなことを考えていると、遠くから鳥の奇妙な鳴き声や猿の甲高い鳴き声のようなものが聞こえ、ジトリと張り付くような熱く湿った空気が肌をなでる。鼻につく沼のような泥臭さに顔をしかめ、そっと目を開くと、そこには広大なジャングルが広がった。


 今回は【熱帯雨林ver2】というフィールドと追加のネガティブ効果【毒】を選択してみた。ここは一種の魔力空間になっており、自身の魔力を青い球体に展開させて設定を選ぶと、それに合った異空間が作れる仕様になっている。


 この作られた空間で、同じように自分でレベル設定をした擬似的な敵と実戦を経験できる。今回私が選んだ敵のレベルは70、種類は植物型モンスターだ。レベルは全部で100まであり、70はどっかのRPGのストーリー中盤くらいに出てくるダンジョンのラスボスくらいのイメージだ。


 もちろん、様々なモンスターを何体も出して一度に多数の敵と戦う訓練も積めるので、モンスターのレベルが100までと言いつつも、難易度は無限大だ。


(いやあ、こうやって一瞬で好きな場所を選択できるから、休日の息抜きに【妖精の花畑】っていうどこまでも続く花畑が広がっているフィールドを選択して、チビっこいもふもふの可愛いモンスターを大量にポップさせて、ピクニック感覚☆ で来れるのも良いよねぇ――もちろん、もふもふにはめっちゃかじられるけどね!)


 ちなみに、この世界ではモンスターと魔物は区別されている。前者は誰かの手で作り出されたもの。後者は有性・無性関係なく、自然発生するものだ。どちらも普通の動物と違い、魔力が使えるのが特徴だ。そして、この魔物が一定以上の知識を持った者の総称が魔族である。


 また、訓練場には探知魔法と回復魔法が展開されていて、危険状態になった瞬間に自動でスタート地点に戻される仕組みになっている。そのため、絶対に致命傷にはならないのだ。まあ、訓練中に死んだら元も子もないので、ありがたい仕様である。訓練終了後にも自動で回復魔力式が展開されるので、本当に至れり尽くせりだ。


 肌にまとわりつくような粘っこい暑さにジャージの袖を肘まで捲くりあげてジャングルの中を進んでいると、ほどなく大きく開けた場所に出た。


 その瞬間、地面から足元に絡みつくように伸ばされた大きな緑色の蔦を反射的に横へと飛ぶようにかわし、ベルトから鞭を抜く。普通なら、拳や蹴りが一番の得意攻撃の私だが、近接戦だけでは危険が多いため、今は中距離攻撃も練習中だ。


 魔力を込めた鞭を硬化させ、地面へと突き立てる。そのまま魔力に火属性を付加させて一気に地面へと流し込むと、地面が割れ、ボッと赤い炎が上がった。それに続いて毒素の強い紫色の気体が一気に辺りに散布するが、咄嗟に魔力の膜を張ることで漂う毒素を吸い込まないように警戒した。


 魔力の膜は自分を覆うように球状に展開できる便利なバリアのような存在だ。よく、ゲームのスマ〇ラなんかで色付いた丸いのあるよね、イメージはあんなのだ。ただ、常時分厚い膜を展開するには魔力の消費量が多すぎるため、基本、薄っぺらい膜しか展開しない。


 そのため、物理攻撃を防ぐためではなく、モンスターや魔物などが体外へと放出する痺れ粉や毒の霧なんかを防ぐ時に使用するのが常だ。


 ふと足場の揺れを感じ取り、即座に鞭を引き抜いて後ろへと跳躍する。先程まで私がいた場所には大きなトゲ状の茶色い幹のようなモノが突き立てられ、意味を成さない甲高い奇声を上げながら大型の植物型モンスターの本体が地中から外へと出てきた。開けた場所のちょうど中央、私からの距離はザッと見積もって50mほど先の位置。


 ちなみに、余談だが、この【キスイタ】の世界では近接戦は0~25m、中距離戦は25~100m、遠距離戦は100m以上の距離で行われる。今回の相手は、中距離戦の相手としては非常に練習しがいのある相手だと言えるだろう。


 地面から出てきた植物型モンスターの本体は、濃い緑色の体に毒々しい紫色の斑点がついていたが、形はまるでハエトリソウのようだ。カパリと裂けた大きな口には、ギザギザに生えた赤い牙――いや、もはやトゲのようなモノがズラリと並び、ヨダレのように紫色の毒を垂らしている。


(……うん、正直、めっちゃ気色悪い!!!)


 視界による精神的ダメージを受け、少しだけネガティブ効果で毒を選択したことを後悔しつつも、私はその気持ち悪いモンスターと退治する。毒属性付きのモンスターは気色悪いものが多いので、精神を鍛えるためにも良い練習相手だ。


(まあ、一度に二度おいしい鍛錬だし――)


「いっちょりますか」


 私は自分自身に気合を入れるため、大きくしならせた鞭を一度強く地面に打ち付けたのだった。


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