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お助けキャラは変態ストーカー!?  作者: 雪音鈴
XX サブイベントep1 XX
26/55

XX 22 XX この世界の捉え方


 シアンと友達になったことで気付いた本来のルチアの友達【クレア】こと、本名【クレア=アンデッド】のことが気になり、ここ何日間かクレアとの友情イベント発生場所巡りをしているのだが、緑色の長いウェーブがかかった髪の毛と薄桃色の短い髪の毛という左右でまったく違う髪質、髪型が特徴的な彼女の姿が、どこに行っても見つからない……。


(やっぱり、会ってないからイベントが発生しないんだろうなあ……)


 肩を落としながら伝承学の講義へとおもむく。本来ならば、伝承学の講義もクレアと一緒に受講しているはずなのだが……彼女の姿はやはり見受けられない。ちなみに、本名からもう既に分かっているかもしれないが、彼女――クレア=アンデッドは、そのファミリーネームの通りアンデッド……この世界では【ゾンビ】という種族だ。


 【ゾンビ】という種族は人魚と同じく非常に希少な種族で、その子供には、もれなくゾンビというオプション効果が付く。ここで皆さんに言っておきたい。この世界での【ゾンビ】は、噛み付かれた瞬間増えるような伝染病のようなモノではなく、有性・無性に関わらず自然発生して生まれるもので、その不死というオプションがマイナスに働いていないということだ。そう、彼らはただ不死身なだけで、別段、知能が低いわけでも、醜い姿をしているわけでもない。


(むしろ、クレアはビジュアル系バンドでもやっていそうなほどカッコイイし、可愛い! 顔のツギハギ部分を隠すように大きな眼帯をしてるから、左目の萌葱色の瞳だけが輝いてて、パッと見海賊の女船長さんみたいだけど、あのちょっと迷惑そうな顔しながら色々と面倒見てくれるところとか、本っっっ当にイイ!!)


 ……ちょいと私の思考がハッチャケちゃったけど――端的に言えば、この世界での【ゾンビ】は不死という効果そのものに対して言われており、例えば非常に極端な話、母【ゾンビ】× 父【ドラゴン】= 子【不死のドラゴン】といった計算式が成り立つ。


 どの種族も喉から手が出るほど欲している最強の王冠――不死。それを自身の種族に取り込めるとなれば……どんな手でも使いたくなるもの。


 そんなわけで、ゾンビであるクレアは、必死に自身の種族を隠して学校に通っている。別に新世校は異種族間交流のみの場所ではない。本来の学校としての機能もきちんと果たしているため、彼女はその機能を存分に利用し、自分の身を守るすべを学んでいるのだ。


(いやあ、本当に勉強熱心で良い子なんだよね、これが! 魔王の章ではクレアに良いお相手も見つかるし――うん、鬼の種族の恋人……できちゃうんだよなあ、クレア……。ぶっちゃけた話、私の中でのクレアはこの病んだ【キスイタ】の世界での癒しだったから、私のクレアに何するんじゃい!!! 的な心境で、クレアがあの鬼に愛想を尽かさないかなあとか思っちゃってました。すみません)


 ああ、そうそう、このゾンビっていう種族が子を産めばその子もゾンビという属性を持つのに、そんなに不死の奴らいないのは変じゃない? って思うかもしれないから、一応説明しておこう。不死の子が生まれるのは、純粋なゾンビという種族が親である場合のみだけだ。しかも、純粋なゾンビは子が出来にくい。確か、ゲーム中で聞いた話だと、早い時には2000年に一度、遅い時には5000年に一度くらいのペースでできるらしい。まあ、こればかりは運でしかないので、せっかくゾンビを捕獲しても子種が出来ず――という種族が後を立たないのも仕方がないと思う。


 ほんと、世の中って上手く出来てるよね……でも、捕獲っていうのが嫌だなあって思う。愛する人が不死ゾンビだったなら良いんだけどね――ま、そんなわけで、不死が広まっていないっていうのが実状だ。


「じゃあ、今日の講義を始めるぞー。今日はこの世界の創造主と神についての伝承だ」


 耳に届いたハティ先生の落ち着いたハリのある声に、ハッとして教卓を見ると、既に今日の議題である創造主と神という文字が黒板に書かれていた。


(神――か……そういえば、この世界の神は私を気に入ってるってじっちゃが言ってたなあ……)


 そんなことをぼんやりと考えながら黒板の字を写していると、いつものごとく魔力によって生まれた風によってプリントが宙を舞い、各自の机の上にフワリと乗る。


「この世界は創造主である三柱とその眷属けんぞくによって作られたのは、皆、知っているな」


 三柱――まあ、つまりこの世界の根幹を作った創造主は三人いるってことだ。おそらく、これはこのゲームの製作陣のことなのではないかなあと私は勝手に思っている。製作陣……この世界の言葉を借りるなら、創造主の三人がこの世界の世界観なんかを作っていて、その眷属っていうのがこのゲームを完成させるために協力してくれた人達っていうのが、この世界の認識なのではないだろうか?


「創造主である三柱がこの世界を創った後、そのうちの一柱であるこの世界の核を創った最高創造主は、この世界を統治する神――ゲーニウスを創造し、その後、創造主三柱は各々この世界に溶け込んだとされている」


 ハティ先生の説明に、おもむろに私と通路を挟んで左隣にいた男子生徒が手を挙げる。


「どうぞ」


 先生の短い言葉を受け、挙手した紫色の髪の生徒が優雅に立ち上がる。この世界の住人は美形ばかりのため、この優雅な感じがしっくりくるほど似合ってしまうのがスゴイところだ。横髪だけ長いその髪を軽く揺らし、彼がその薄い唇を開く。


「世界に溶け込んだというのはあくまでも通説で、この世界に転生を遂げたという考えもあるようだが――それについてどう考えているのかを問いたい」


「良い質問だね。今日はそれについても少し触れていこう」


 ハティ先生がクイッとメガネを押し上げ、ニッコリと微笑む。先生は立ったままだった綺麗な男子学生に軽く手で座るように促した後、【創造主の転生】という文字を黒板に書く。最後にオマケとばかりに白いチョークに炎の魔力を付加させ、赤い文字に変え、そこを強調する。


 転生――正直、今の私以外にも転生者……それも創造主がいるとなると、心強いのかもしれない――けど、やっぱり面倒事にしかならない気がする……。だって、考えてもみて下さいよ。もし私の推理通りなら、その転生者はこの鬼畜なヤミゲーの製作者ですよ?


(出会ったら最後、ただただ余計に死亡フラグが上がるだけってことになりそうな予感が……。そもそもさ、この世界での創造主って神レベル――いや、神を創造しているからもしかしてそれ以上の力を持っている……のか? まあ、とりあえずそんな扱いだけど、実際どうなの? もし、そんなチート能力の奴が私に関わってきたら――私の残機、何個あったら足りるんでしょうか?)


「【創造主の転生】――それはしばしば、この世界はゲーニウスに任されたとみなす【神派】と再び創造主が世界の頂点に立つべきだと考える【創造主派】の派閥を生んでいる。神派は別名【ゲーニウス派】、同じように創造主派は世界の名を冠するヴェルトという語句から【ヴェルト派】などとも言われているな」


 ただでさえ、チート転生者がいたらどうしようってことを考えてて頭がグルグルしているのに、ハティ先生が軽快に書いていく文字に横文字が多くなってきたせいで、思わず眉間にシワが寄ってしまう。わざわざ名前を分けなくても、普通に神派と創造主派で分けていいと思う。


 そして、実は私……この世界の神様の名前、初聞きです。すみません、うちの家族、ずっと神様と創造主様ってしか言ってなかったです。それから、そんな派閥があったのも知らず、両方崇拝してました……うん。うちの家族、ちょっと自由すぎない?


「それで――だ、ここで一つ、その創造主に関して面白い伝承を紹介しよう。これは、創造主は三柱とも役割があったという言い伝えだ」


 肩まである燃えるように赤い綺麗な髪を揺らし、ハティ先生が持っている白いチョークが滑らかに緑色の黒板の上を動く。


「最高創造主はこの世界の核である世界・種族の性質や性格を創造してその全てを愛する博愛主義者、右翼である創造主はこの世界の自然の摂理を創造してそれを見守る傍観者、左翼である創造主はこの世界の悪しき流れを断ち切り新しい芽吹きを促進させる革新者。それが、この三柱の特徴だとされている。ああ、いきなり出したが、右翼は保守派、左翼は革新派という認識でいい。それで――だ」


 先生が左翼と革新派という言葉、それから最高創造主の説明にあった博愛主義者という言葉をキラキラと輝く赤文字に変化させ、トンッと軽く黒板を叩く。


「ある伝承での話だが、どうも、左翼である創造主は最高創造主が掲げている博愛主義が嫌いだったそうなんだ。だから、この伝承では最高創造主を左翼が殺し、世界と同化させたとされている。そんなにこの世界が好きならこの世界になってしまえ――とね。いやあ、この伝承を聞いた時は、さすが革新派なだけあるなあって感心しちゃったよ」


(いやいやいや、誰かを殺したことに感心しないでほしいでよ、先生!! それ、めっちゃ物騒な話だからね!?)


 ハティ先生が教卓に両手を付き、ニッコリと笑ってこちらにその魅力的な黄色い瞳を向けてくる。


 ……うん、毎回思うけど、ハティ先生ってただニッコリ笑うだけでもこっちがドギマギするような無駄な色気を出してる気がする。正直、心臓がビックリするから、大人の魅力的な色気はほどほどにしてほしい。


「まあ、これにはそれとは違うもう一つ別の伝承もある。かの眷属達は最高創造主の創ったこの世界に過度に干渉し、最高創造主が思い描いたものと違う世界に変えてしまった――それを嘆いた最高創造主が自身の代わりに世界を託せる神を創造して姿を消し、左翼である創造主は最高創造主の意にそぐわない行動をした眷属達を皆殺しにして最高創造主の後を追った……っていうのが、そのもう一つだ」


(どっちにしろ、左翼怖いんだけど!?)


 どちらの伝承でも殺しを行っている左翼にフルリと身体が震える。正直、もし左翼の創造主が転生していたら、絶対に関わり合いになりたくない。


(――ってか、こんな物騒な伝承があったなんて……今までずっと『創造主=ゲーム製作者』だと思ってたんだけど、違ったのかな? もし本当に殺人鬼(?)が制作陣の中にいたんなら、さすがにニュースになると思うし、好きなゲームの情報ならなおさら私が知らないのはおかしいし……うーん、伝承が間違いなのか、そもそも創造主達と製作者達は別個なのか――)


「まあ、後半の伝承は簡単に言うと最高創造主がこの世界を捨てたってことに繋がってしまうから、かなりの論争を生んでいる――が、さっき質問にあった【転生】に繋がる伝承だとも考えられている。姿を消したという最高創造主とその後を追った右翼と左翼はこの世界に転生を遂げ、この世界を守っている。だから、世界を捨てたのではなく、内側から変えていこうとしているだけなのだというのが【創造主転生説】だな」


(世界を捨てたのではなく守ってる――だから【転生】か……)


 若干、こじつけなような気がしなくはないが、それでも、自分達が捨てられたと考えるよりは良いかもしれない。


(誰かに必要とされなくなるのは嫌――だよね)


「まあ、これらはあくまでも伝承で、先生は本当の出来事がどうだったかなんてことは知らない。しかも、結局、どうしてその右翼までもが世界に同化または転生したのかは、これらの伝承では語られていない。だから、この話をどう捉えるかは君達次第だ。先生は君達の知識欲には応えられるだけ応えてあげよう。でも――」


 ハティ先生がメガネの奥の黄色い瞳をスッと細め、楽しそうに口を歪めて笑った。


「そこからどんな答えを導き出すかは君達次第だ」


☆★☆★☆




次回からはハティ先生の大人な魅力(?)にルチアが大慌て!?

ということで、ようやく、先生の意味深な話が聞けそうです(笑)




それから、ブクマ登録をしてここまで読んで下さった読者の皆様方、本当にありがとうございます!!


いやあ、実は総合評価が上がる度にテンションが上がって変な奇声上げちゃってます(笑)

(あ、もちろん、誰もいない時を見計らってですよ?)


そんなわけで、毎回、更新する時はドキドキなんですよね……はい、評価が気になるチキンな性格なもんでして(;^ω^)


でわでわ、今後も皆様に見放されないよう、頑張って執筆していくので、どうかこれからもよろしくお願いします(*´ω`*)




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