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炎の騎士の悪巧み

 歓迎会という名の宴会の準備が終えると、日は傾き加減の夕刻となった。

約束の時間が近付き、炎の騎士は炎の屋敷で二人の友人を待つ。

一人は親友と呼べる人物で、もう一人は戦友と呼べる人物だった。兄弟である二人は、仕事の都合で、滅多に揃う事が無い。

それ故に貴重な時間であったが、リシェアオーガと言う、これまた珍しい客人が来たので、その時間を客人に提供しても惜しくないと思った。

特に戦友には会わせた方が良い、彼がどんな反応をするかも見物であった。

昼間、部下達のそれを目の当たりにし、面白がった紅の騎士は、あの時のリシェアオーガの言葉で今度は、友人に他愛の無い悪戯を仕掛ける事にした様だ。

屋敷の使用人が彼等の到着を告げ、彼等を紅の騎士・アーネベルアが待つ部屋へ誘う。通された彼等は、屋敷の主人たるアーネベルアに挨拶を告げる。

「今晩は、べルア。御招き頂いいて有難う…

予定が変わったって言ったけど、何処へ行くのかい?」

「今晩は、べルア様…そう言えば、予定変更って言ってましたね。

良い店でも見つかったのですか?」

レナフレアムから伝えられたアーネベルアの知らせで、場所の変更を聞いた彼等は、一応に尋ねる。すると、彼は微笑を浮かべて答える。

「違うよ。新しく、光の屋敷に入った子がいるんだ。

それで今晩、その子の歓迎会をするんだけど、一緒に行かないかい?

その子に君達の事を話したら、会いたいって言ってね、二人には悪いけど、連れて行く約束をしたんだ。」

リシェアオーガの姿を思い浮かべながら告げる、紅の騎士へ、部下と友人が快い返事を返す。

「ああ、そういう事でしたら、御一緒しましょう。」

「私も構わないよ。…私達に会いたいって?どんな子だろうね……

……え…?光の屋敷…まさか……。」

何かを気付いたような親友に、アーネベルアは微笑み、隠すのは無理だったかなと、内心思った。戦友と違い親友は、人に関係する勘が鋭い。

仕方無く二人へ、意味深な言葉を掛ける。

「それは、行ってからの御楽しみだよ。…おや、彼方から迎えが来た様だ。」

二人が来た扉から再び使用人が、客人を連れて来た。

光の館からの迎えとして来たのは、青く波打つ髪と冷たく感じる瞳の青年と、白い髪と好奇心旺盛な虹色の瞳の青年。

水を具現化したような青年は細身で、その体に月と太陽、葡萄の房の装飾を施された青い騎士服を纏い、風を具現化した細身の青年は、風と星を示す装飾の白い騎士服を纏っていた。

共に精霊剣を持つ彼等に、アーネベルアの友人達は釘付けとなった。特に親友の方は、完全に悟ったらしく、見覚えのある風の精霊へ言葉を掛けた。

「レア殿、御久し振りですね。あの時は、御世話になりました。」

改革の時と生誕祭の時の事を言っている彼へ、名を呼ばれた精霊は、にこやかに返事をした。

「久し振りだね、バート。あの時は私の仕事だから、お礼には及ばないよ。

で、こちらの彼は初めましてだね。私はエアレア、風の騎士だよ。

べルア、お久し振り~、今回も私がお迎えだよ~。」

明るい声が聞こえ、それを叱咤する静かな声が響く。

「…レア、御遊びで来ている訳では、無いのですよ。

御久し振りです、炎の騎士殿、マレーリア王国の宰相殿。そして、初めまして、宰相殿の隣の騎士殿。

私は、とある尊い方に仕える騎士で、ネリアと申します。主の命により、御三方を御迎えに参りました。」

感情の籠らない声に二人は苦笑し、初めて会う者は警戒をする。その様子に、風の騎士が溜息を()くが、警戒した騎士が礼節を重んじて口を開く。

「初めて、御目に掛ります。

俺はこの国の騎士で、アーネベルア様の部下の、ハルトべルアと申します。」

堅苦しく挨拶を告げるハルトべルアへ、エアレアの楽しそうな声が掛る。

「ハルトだね、ネリアの事は気にしなくて良いよ。

ネリアの表情が無いのは何時もの事だし、警戒心が人一倍強いのは、主を第一に思っての事だからね。」

本音を言われた様で今度は、ネリアと呼ばれた青の騎士が溜息を吐く。

言わなくても良い事を、風の騎士は容赦無く、暴露する。

誰に疑われ、警戒をされても彼には関係無いし、気にもしない。主に害が及ばなければ、それで良い。

それが目の前の、青の騎士の性格であった。

風の騎士の言う事に納得したハルトべルアは、ネリアと呼ばれる精霊騎士を見る。

服の装飾は月と太陽と葡萄の房…普通の水の精霊騎士なら仕える神は、水の神であるが、彼の装飾はそれでは無い。その装飾を付けるのは他の神であるが、二つ同時に付ける神はいない。

不思議に思い、ハルトべルアは尋ねる。

「ネリア殿…でしたね、つかぬ事をお尋ねしますが、

貴方の仕える方は、光の神なのですか?それとも、大地の神なのですか?」

「主の事は一切、御答え出来ません。

一緒に来れば判る事ですし、私が教える必要もありません。」

帰って来たのは、素っ気無く、突き放すような言葉。

表情一つ変えず、声も荒げずに言われ、彼も苦笑するしかなくなった。

行けば判ると告げられ、半ば納得しかねた彼だったが、他の二人の態度で、危険の無い事だと感じた様だ。

特に兄であるバートこと、バルバートアの態度は、何時にも増して嬉しそうだった。


友人二人と共に、紅の騎士は光の屋敷へ向かった。そこで友人達が如何いう反応を示すか、楽しみでもあった。 

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