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紅の親子の対話

 一方、国王から部屋を設けられ、話し合う事になったコーネルト親子は、通された一室で向かい合っていた。

同じ髪の色で、瞳の色だけが違う親子は、久し振りの対面となった。部屋に入り、用意された椅子に座ると、父であるアレントベアが最初の言葉を掛ける。

「べルア、本当にあの神子が、あのオーガって子なんだな。」

父の言い草に苦笑しながら、息子であるアーネベルアが答える。

「そうですよ。あの子は変ったでしょう?

先程のあれが、本来のあの子の姿と、性格なんですよ。本当に素直で、可愛らしいものでしょう?」

「確かに、変ったな。

心の内に秘められた憂いと怒りが完全に無くなると、あんなにも可愛らしく、愛くるしい者になるもんだとは……何だか、気が抜けるな。」

溜息と共に返される返事に、アーネベルアも頷き、詳細を話す。納得の出来る説明を、アレントベアは無言で聞いていた。


一通り説明が終ると、やっと重い口を開く。

「家族同様の者達を失っては、邪気に付け込まれるのも、当たり前だな。

13にも満たない子供なら尚更、奪った者を恨む…仕方の無い事だが、あの子はそれを、罪として自覚している。」

真剣な顔で両腕を組んで告げるアレントベアは、その片方を顎へと移動させる。

「七神からの罰を考えると、あの子はこの先、罪の意識だけで世界を護れるのかと、心配だったが…無用な物だったようだな。」

何かを考え込む姿勢に、アーネベルアは不思議に思い、父親を見つめる。

「父上、何故、そう思うのですか?」

まだリシェアオーガが、神龍王である事を説明していない状態での、父親の発言に、疑問を投げ掛けた。そんな息子の問いに、軽い笑顔を見せながら答える。

「何故、そう思うかだと?あの子の目を見れば分かる。

あの子は、陛下を護るべき者と捉えている。いや、陛下だけでない、傍にいる宰相殿も、騎士であるお前さえ、護る者と認識している。

それにあの子の目は、以前と全く違う。何というか…陛下と同じ目をしていると言うのが、正しいのかもしれん。」

先程のお茶会での、神子の眼差しを思い浮かべ、自分の意見を言う父親へ、息子が再び問う。

「それは、王たる者の目という事ですか?」

エーベルライアムと同じ目をしている…という事は、王たる者の目と推測し、その事を口にしたアーネベルは、アレントベアの言葉を待った。

「ああ、そうだ。王たる者の目を持っている……?

ん?…そう言えば…あの子の本当の姿は、ジェスク様と同じだったな、という事は…もう一つの噂も、本当だった訳か。」

この後、説明しようとしている事柄へ、辿り着いた父親に、アーネベルアは苦笑した。未だに衰えない、父親の先を読む力は、リシェアオーガのもう一つの正体まで想像出来た様だ。

流石だと思いながらも、話を続ける。

「父上、もう一つの噂とは、神龍王の事ですか?」

息子から投げかけられた質問に、当然という顔で父親は即答する。

「他に、何があると言うのだ?

あの子…いや、あの神子は神であり、神龍王であるという噂を聞きておる。それが確かな物だと、陛下はおっしゃったが、私達も自分で確認したかった所だ。

陛下や公に何か、危害があってはならぬと、心配であったが……全く以て、無用の物だったわい。」

溜息交じりで本音を漏らすアレントベアに、アーネベルアは微笑を返しながら、同意の言葉を吐く。

「そうですね…本当に、無用な心配でした。

私も、生誕祭の時に、あの子の事を確かめに行きましたけど…実際会ったあの子は、己の役目に自信と誇りを持っていましたよ。」

あの時のリシェアオーガの事を思い出すと同時に、周りにいたルシフの人々の事も思い出した。

少年の護りたい者達の事を思い浮かべ、続きを口にする。

「あの子は既に、護りたい者達を心に決めていますよ。…恐らくこの国が、あの者達を害しない限りは、あの子も私達の味方になってくれます。

まあ、陛下は、あの子のお気に入りみたいですけどね。」

リシェアオーガの、エーベルライアムへの懐き様を考えて付足された言葉に、アレントベアも同意する。

「陛下がいる限り、あの子の護りたい者を害する事は、無いだろうな。しかし…ルシム・シーラ・ファームリアも、更に強い味方を付けたものだな。

七神はおろか、戦の神まで護りに付けるとは。」

しみじみと件の国を思い、感慨に耽るアレントベアへ、アーネベルトが補足的な言葉を付け足す。

「父上、あの国の方々は、神々にとって、特別な方々ですよ。

神々が護るのは、当たり前です。万が一、陛下とあの国が争うようになれば、私も陛下を捨てて、神々の許へ行かなければなりません。

まあ、そういう事が無い御方だからこそ、炎の騎士の、もう一人の主になれるのですが……ね。」

エーベルライアムと、神々の遣り取りを思い出した炎の騎士は、自分の主である彼を誇りに思うと同時に、神々が彼を信頼している事を、暗に示す。

それに父親も同意する。

「当たり前の事だな。我等も、神々が護る国を攻撃しようなど、思わない。

友好関係にある方が、最も望ましい。もし、それを脅かす王が現れるのなら、この度と同じ事が起こるだろうな。」

国を大事とすれば、神々と事を構えるのは避けるべきと言う考えは、この親子の共通の物である。

いや、この親子だけでない、王族の親子にも言える事だった。


只…この国の王族親子に関しては、神々に剣を向けるより、知っている神子を可愛がる事の方が、重要であったのは言うまでも無い。

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