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神子の正体

 先程の質問と挨拶での少年の声は、二人の壮年の騎士達に聞き覚えがあり、何か言いたそうな表情を隠していた。

それに主であるマーデルキエラ公が気付き、彼等へ目配せをし、エーベルライアムへ向き直った。

何かを察したらしい国王は、仕方無いなという顔をし、神子へ話し掛ける。

「リシェア様、堅苦しい挨拶は、ここまでにして、こちらに座って下さい。あっと、話し方も何時もの通りで。

それと、他の人達も遠慮しないで、話していいよ」

「判った。ライアムも、其方の方々も、敬語を止めて欲しい。

……昨日の口調で良いの?」

子供らしいそれに頷き、昨日と言う言葉に、マーデルキエラ公が反応した。

ちらりと横目で国王を見て、大きな溜息を()く。

「…陛下、夕べ王宮にいなかったのは、そういう事ですか…。」

「その、陛下って呼び方と敬語は、止めてくれないかな?

仮にも父親なのだし…。」

「え…?やっぱり、ライアムのお父さんなの?」

二人の会話に思わず声を上げた少年へ、全然似てないだろうと言う、国王・エーベルライアム。

確かに彩は似ていないが、雰囲気が似ていた。

堅苦しい事が苦手そうではあるのに、王族と言っても頷ける、威厳の様な物。

これに加えて、国の事を第一に思う心…そういった物が似ていると感じた少年は、素直にそれを述べる。

少年の言葉に、親子は驚き、お互いを見合わせる。

そして…彼等親子の言葉が出て来た。

「本当に、似ていると思うのかい?」

「初めてじゃのう。儂とライアムの似ている所を、一発で見抜いたのは。

流石、光地の神子様だのう、良い子じゃ。」

驚くエーベルライアムと、少年の頭を優しく撫でるセルドリケル。可愛らしい神子を構う事にした彼は、二人の騎士に告げる。

「お主達も、この可愛らしい神子様に、尋ねたい事があるのじゃろう?

神子様、良いかな?」

撫でている手の主の言葉に、覚悟を決めた少年は頷き、騎士達へ質問をする。

「僕に聞きたい事とは、何でしょう?あの…コーネルト公?レントガグル候?」

真剣な顔を彼等へ向けた筈だったが、二人の表情で不思議そうな顔になった。

主の行動に先程までの警戒心が失せて、唖然とした顔をする二人は、少年の視線で我に返り、一つ、咳払いをしたコーネルト公が、口を開く。


「神子様、オーガという名を御存知ですか?

いえ…率直に申し上げます。オーガと言う人物は、神子様ですね。」

()ってから覚悟していた言葉に、少年は再び真剣な眼差しとなり、コーネルト公を見つめる。

「そうだと認めたら、如何するの?僕を拘束して、罰するの?」

子供らしい口調のまま告げる彼の言葉で、後ろへ控えていた精霊騎士達が動こうとするが、少年は彼等へ、何もするなと指示を出す。

彼等の動きを見て、コーネルト公も話を続ける。

「いえ、今は、そんな事をしません。ですが、もし、以前と同じ事をされるのなら、それも致し方無いとは思っております。」

不安に駆られた言葉を告げる彼へ、エーベルライアムが言葉を掛ける。

「コーネルト公、リシェア様の姿を見て判るだろうけど、この方はもう、邪気に侵されないよ。だから、同じ過ちは繰り返さない。

それに、この度の訪問は、この国を思ってされたのだからね。

…そうですよね、リシェア様。……あ…っと、バートとハルトに会いに来たついで…の方なのかな?」

コーネルト公達の不安を遮る発言を、彼等の国の君主であり、主の息子であるエーベルライアムが一掃する。

今の少年の姿は、父親である光の神の特徴を受け継いでいる…つまり、光の神の祝福を生まれながらにして、受けている姿と同じ。

それは、最も邪気の犯され難い神の特徴であり、如何なる邪気に対しても、対抗し()る姿でもあった。

国王の傍に控え、その事を知っている二人…炎の騎士も、横にいる宰相も、己の主の意見に頷く。

そして、もう一つの意図を察した彼の発言に対して、少年も頷く。

「ライアム、義兄上達に会う序でじゃあなくて、その反対。

ライアム達の助けをする序でに、義兄上達に会いに来たんだよ。」

エーベルライアムの言葉を否定するそれを、言い放ったリシェアオーガは、この国へ来た真相を語り始める。

「僕の仕出かした事で、この国が荒れてるって聞いたし、父上達にも、後始末は責任を持ってちゃんとするようにって、言われたんだ。

だから、今は、レア達に色々調べて貰ってるんだよ。で、集まった情報の中で、この国に必要な物を、ライアムにも知らせようと思ってるんだけど……良い?」

情報を齎すと言う神子に、エーベルライアムは喜んで受けた。

何事であれ動く為には、情報が多い方が有利だったし、風の精霊が齎す情報なら、より一層、確かな物となる。

それが神々に仕える者ならば、余計に重要であった。その為に少年は、国王へ数人の風の騎士を派遣する事を告げた。

「レアは無理だけど、他の風の騎士を数人、ライアムの許へ行かせるよ。念の為、光の騎士も何人か、ライアム達の護衛に付けるよ。

…あの馬鹿共が、何か動いているみたいだから。」

光の騎士を護衛に付けると聞いて、周りの者達は不思議に思ったが、あの馬鹿共と聞いて、思い当たる節があった。

忌まわしき国・ディエアカルクの残党…オーガという、愛称を持つ王族に間違えられた少年が、光の神の預かりとなった事は、その忌まわしき者達も知っていた。

かの者達が、その少年を捜す為、混乱しているこの国に拠点を置いたままであったが、彼等を排除しようとしても、未だ少々混乱気味のこの国では容易で無い。

然も彼等の一部は、この国をあの忌まわしき国へ変えようと考えているのだ。

それを目の前の神子が、知っているとは思えなかったが、国王に精霊騎士の護衛を付けると告げた事で、彼も承知していると周りの者達には判った。

加えて、神子はある提案を示して来た。

「ライアム、あの馬鹿共の事は、七神から僕に任されたんだ。だから、ライアム達の手を煩わせる必要は、無いよ。

こっちでちゃんと処理するから、ライアムはこの国の安定に専念して。

あ…っと、ライアムの方で問題が起こったら、風の精霊達を使って、僕か、レアに知らせてね。」

手が空き次第、エーベルライアム達を手伝うと言う光地の神子は、奥の手とも言うべき最終手段をも提示する。


目の前の神子と神々が、国王であるエーベルライアムに、手を貸しっている事を公表する。


この一番重大な事を、楽しそうに言う神子に、周りが面喰っていた。

一部、アーネベルアとバルバートア、レナフレアムは納得したようで、苦笑気味だった。その最終手段で、かなりの打撃を相手に与える事は明解であったが、それを神子が承諾した事に、悪戯を思い付いていると感じたのだ。

実際、生誕祭の時に、彼の仕掛けた悪戯は体験済みであった為、これが敵となった相手に容赦無いとも判っていた。

後に無慈悲な神とも囁かれる少年は、その片鱗をここにも見せていた。

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