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怒涛の暴露大会

 リシェアオーガが出て行った部屋では、残されている彼女(彼?)の友人達の遣り取りを大人達が、未だに微笑ましそうに見ている。

その横では、精霊騎士達も和やかに見つめている。そんな中、レニアーケルトが、思い出した様にラングレート家の兄弟へ質問をする。

「オーガ君は、引き取られた屋敷で、何時もあんな感じでしたか?」

問い掛けられた物で首を横に振り、心配そうな顔でバルバトーアが答える。

「いいえ、寧ろ、私達と祭りに行った時位でしたね。

…あの子、無理をしていないかな?」

心底気にしている彼の言葉に、リシェアオーガの幼い頃を知っている大地の精霊・アンタレスが口を挟む。

「無理はしていませんよ。リューレライの森の頃は、あんな感じでした。

他の年若い精霊達と戯れながら、楽しそうでした。」

彼等の会話に入って来た大地の精霊へ、視線が向く。リュース神の祝福を受けて生まれた、精霊剣士の言葉に彼等は納得した。

「じゃあ、あれがオーガ君の、本来の性格なのかな?

子供らしくていいけど、これから大変だね。」

彼等の心配を聞きつけた、緑の騎士と光の騎士が会話に加わる。

「普段は先程の様に、子供らしくないのですよ。恐らく、彼等といる所為でしょうね……リシェア様は、彼等に心を許しておいでです。

同じ位の歳の友人として、接しているのでしょうね。」

「それと、リーナ様の影響も、御有りでしょう。

常に一緒に居られましたし、余り甘え無いリシェア様を何時も、焚き付けていらっしゃいますから。」

緑の騎士と光の騎士の返事に、レニアーケルトも納得した。

ふと、大地の精霊が、少女(少年?)の幼い頃を知っている事に気が付き、尋ねると、紅の騎士と宰相が訳を話す。その話が終る頃、リシェアオーガの着替えも終わった様で、この部屋へ帰って来た。


 戻った部屋では、件の友人達が待っていた。変化した体付きと顔立ちに感心し、頷き合っている。

あの頃と同じ背丈で、違う髪と瞳の色。

服装も貴族の子弟の様な物でいて、やはり神聖さを醸し出している。彼等の視線に気が付いたリシェアオーガは、不思議そうな顔をして尋ねた。

「エニア、ファム、レト、如何かしたの?」

聞こえる声の変化にも感心したエニアバルグは、彼に向き合って話し始める。

「いや~、べルア様の所でも思ったけど、お前、全然背が伸びていないな~。」

「…エニア、仮にも神子相手に、その口調は無いだろう?

まあ、確かに、前と同じ背丈だよな。」

「仕方無いよ。父と母に、これ以上成長して欲しくないと言われたからね。

それに…この方が、何かと都合が良いし…ね。」

砕けた口調で話し出すリシェアオーガに、安心した彼等は、以前と同じ様に話をし出した。同世代の青年の話を楽しそうに聞き、口を挟む。

親友とも言える人間と、会話をしているリシェアオーガの姿は、精霊達にも安心感を与えた様だった。


 何時しか彼等の輪の中に、神官であるカルダルアも加わり、一層賑やかとなった。レトヴァルエは見習い神官である筈の彼が、正神官の服装をしているのに気が付いたが、敢えて触れない。

見た事も無い神官服の装飾で、新しい神の神官になったんだろうと思い、別段気にも留めなかった。まさか、その神が自分の傍にいるとは、想像しなかった様だ。

しかし、レニアーケルトはそれに気付き、不思議そうな顔をした。

神官の服に描かれているのは、銀色の長龍と金銀色の二本線と紫の実。

金銀色の線と紫の実は、光の神と大地の神の神子を示しているが、共にある銀色の長龍は、何を示すか判らない。

長龍自身は恐らく、神龍の一種を示していると思われたが、銀色の者となると皆無であった。光の神龍でさえ、金色であったからだ。

だが、彼はリシェアオーガの右中指に、先程まで気付かなかった、双頭の銀蛇の指輪を見つける。青紫の瞳と赤紫の瞳の銀蛇は、とある聖獣だと知っている。

とある剣の護り手であり、その剣の正当な主が見つかり、その手に渡ると、主の護り手と役目を変える聖獣。

彼等を象った指輪が、リシェアオーガの右手にあるという事は…。

彼の視線に気が付いたアーネベルアは、微笑みながら告げる。

「レニア、君の思った通りだよ。神子様は、とある役目を御持ちだ。

あの方はもう、邪気に侵されない、寧ろその反対に、我等を護ってくれるだろう。」

表立って真相を明かさないまでも、何を言っているか判る上司の言葉に、レニアーケルトは納得した。

「成程、今までの出来事は、そういう事だったんですね。…しかし、あの者達は、それに気が付いているのでしょうか?」

リシェアオーガと仲良く会話している部下達の姿に、不安を覚えたらしい言葉が返って来たが、アーネベルアが楽しそうに返事をする。

「エニアとファムは、本人から教えて貰っているよ。

だけど、レトは…気付かない振りをしているのか、気にしていないかの、どちらかだね。あの子は、ああいう所が抜けているからね。」

部下の欠点を的確に言う上司に、確かにとレニアーケルトは頷く。

気にしていない方が、正しいなと思いながらも、その対応が少年と向き合うのには、正解だとも言えた。

私的な場では、線を引かれる事を拒む神々。

況してや、相手が自分の正体を知らないのなら、尚更砕けた関係を望む。正体を知って、恭しく対応される事を特に嫌う光の神の神子なら、今の対応が望ましいのだ。

そう言えば…と、思い出した様にアーネベルアは、もう一人の部下であり、友人であるハルトべリルへ尋ねる。

「ハルトは、あの子の事を知っていたのかい?」

「ああ、兄上から教えて貰っている。

神子という事と、役目を持っている事だけはな。只…両性体だなんて、一言も聞かなかったんが…。」

頭を抱えながら告げる彼へ、説明をした本人から声が掛る。

「ハルト、あの子の役目を知ったのなら、判るだろ?

あの役目は、特殊なのだからね。」

さらっと答える兄の言葉にハルトべリルは、苦笑した。

確かにリシェアオーガの役目…神龍王は、特殊であった。

生まれながらに、光の神の祝福を受けた容姿を持ち、両方の性別を持つ者であるが、その姿に戻る為に、幾多の試練が待ち受けている。

生みの親と別れ、育ての親の許で成長し、その親を失った結果、宿命を持つ子供は、生まれ持った内なる邪気に身を任し、世界に厄災を齎す。

そして…その邪気に見事打ち勝った者が、真の神龍王となるのだ。

敵を知らねば戦えぬという信条で、大いなる神が齎した宿命である。

当の本人には辛い物であるが故、それを乗り越える力を持つ者は、心身ともに力強い物となると言われている。その神龍王に、義理の弟であったオーガがなれた事は、ハルトべリルにとって、自慢の種でもあった。


只…両性体である事をすっかり忘れて、少女の姿を見せられた時は、完全に混乱してしまったが……。 

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