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8話目です
岬が言った事は本当のことであり、僕らは目の前の光景を疑わずにはいられなかった。
しかしまずは彼女に謝罪すべきだと一瞬頭に罪悪感が過ぎったが、下のライトから照らされた宇宙船の胴体を見たときにすぐに忘れてしまった。
卵をそのまま横にやや広げ、そのまま大きくさせた巨大な宇宙船が僕らを見下している。
その宇宙船に大勢の大人たちが群がり、金属同士が擦り切れる音や鈍い金属音が聞こえてくる。
「どう?言った通り、面白いでしょ」
彼女の声など耳に入らないまま、僕らは胸を高鳴らせたままその姿に見惚れたままの状態となった。
「あんたたち、聞いてるの!」
耳元の怒鳴り声で僕が我にかえった。
「う、うん。確かにこれは面白いね……すごい」
再び僕は青色の卵に視線を戻した。僕ら二人の少年の心は完全に虜となってしまった。
「あ!おい!!」
下のほうから僕らを怒鳴る声が聞こえた。
慌てて見るとヘルメットを被った一人の大人が僕らを見つけたらしく、指をこちらにさして周りの人間に伝えている。大人たちの多くがその指先を探り、僕らを見つけると驚きの声をあちこちであげている。
その中で慌てて拡声器を持って駆けつけた大人がおり、こちらに向けてその場を動かないようにと言いだした。
「逃げるわよ!」
彼女が来た道を戻りはじめ、僕らも急いでおいかける。
行きが急だったおかげで帰りは楽だと思ったがそうはいかないらしい。
来る時以上の疲れと大人に捕まってしまったらという恐怖感で足の感覚が鈍り、もつれながらも体勢を正常に保ちながら外を見つける。
階段のところまできた。
あとはここを昇り、裏口目指して廊下を一直線にいけば外へ出れる。
「足音が聞こえるぞ!」
野太い声が目的地の方から聞こえ、僕らの足音と差がハッキリわかるほど大きな音が複数聞こえてくる。
「どうしよ!!」
正志が今まで聞いたこともない裏返った声で肩を震わせながら驚いた声をあげた。
僕は何かないかと考えたが、ここまで何も考えずにきたせいか頭を使う前に岬の顔を伺った。
視線が合うもすぐに彼女はすぐにはずし、顎に手の甲をあて考えはじめた。
何かないものかと周囲を見渡すと、換気扇の横に取り付けられた排気口が目に留まった。
僕らの体が辛うじて入ることができるほどの大きさで、曲がり曲がりながらその行く先は裏口の方へと続いている。
「これで逃げよう」
僕は服が引っかからないように注意しながら頭から入る込んで手本を見せた。
中は真っ暗で何も分からなかったが、正志が気をきかせて小さな懐中電灯を手に渡してくれた。
それを口に咥え、スパイ映画のように匍匐前進しながら空きのスペースを作ってやり、早く中に入るように言うが、岬は服が汚れるといって一向に後に続かない。
「ここまできといて、そんなこと心配しないでいいじゃないか」
「私は女の子なのよ。体が汚れるなんて絶対に嫌」
「もう十分汚れてるよ」
「どういう意味よ!」
足音はもうすぐそこまで迫っている。正志が僕の靴を叩いて前進を促す。
「お願い岬。早く中に入ってもうすぐそこまできてる」
しばし沈黙があり、彼女が入るのを確認して僕らは出口を求めて前進をはじめた。




