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序章
序章
雨が降る。
今日も降る。
たぶん…明日も降るんだろうな。
この季節はじめじめして好きじゃない。
この季節は気分的に好きじゃない。
空を見上げて、憂鬱になるから。
空を見上げて、ウンザリするから。
ここ暫く僕は、この雨空以外を見ていない。出掛けていない。
要するに…
単純に…
退屈なんですよ…
家にある本は読みつくした。
家にある暇つぶしはしつくした。
でも、何よりも…困る事は一つ…
雨の日は、僕が経営するお店には人は来ない。
雨の日は、僕が経営するお店には人以外が来る。
人が来なければ、死活問題…
人以外が来れば、無理難問…
結局は…困ることだらけなんです。
結局は…それが雨の日の暇つぶし…
そして本日も、この店の扉の鈴が軽やかに鳴る。
人の訪れを知らせる音色か…
人ならざるものの訪れを知らせる音色か…
それは知らない。
それは分からない。
けれど、だけれど……僕の心が躍るのは確かです。