Ⅲ
「…分かったわ
もし偽りや間違いがあってうちの人に何かあったら、絶対許さないから」
その女性は、サリアに言われたことに加え男手を連れて来る。
はっきり言って助かることだ。
普通の錬金術では組織を再生できるが、肉体の組織を繋ぐことは難しく、精度が必要だ。
(細い筋肉繊維や毛細血管を体外から見ずに繋ぐのは至難の技だ)
まぁサリアにもできなくもないのだが再生でなく、活性化させ高速治癒させることで、組織はより強くなるし、何より完治は早く、後遺症もサリアがやったなら100%ない。
しかしサリアにリスクがある。
活性化を誘導するため、みずからのサリア自身の生命力を呼び水にするため、やり過ぎると若すぎる衰弱死である。
だからいつもは緊急の患者にしか使わないのため
普段普通の成人男性一人なら簡単に支えられるが、少しでも負担を減らすためには有り難いことだ。
男達に指示する。
手元ばかり見ているのに男達の動きを全て把握しているかのように。
「じゃあさっそくお願いします。
怪我人に紐をつけているので、
まず赤の人をこちらに集めて行って下さい
紐は脚か腕につけているので。」
術を酷使しながら言う。
途端
少し冷たいと言える声でサリアは言う。
「決して紐を変えたり、とかしないで下さい。
赤紐をつけている人は生死の間際の人ですから」
「分かった従うぜ。サリアちゃん(アリテレス先生)」
ここらへんに住む人はサリアの正しさや優秀さは既知の事実だ。
それだけ地域の人に慕われる存在なのだ。
身分など関係なく…
一方キーリの方では
「うっわーこりゃ骨が折れるぞ。
あーああの3人もく…」
「俺達のことか?」
キーリが独り言を言っていると
それに応えた人がいた
「ケイト、ユリア」
ケイトと呼ばれた方は金髪に灰色の瞳の男性で
ユリアと呼ばれ方は蒼い瞳にまるでお姫様のように栗色のくせ毛を巻いている女性
2人ともキーリ達と同い年か少し上に見える。
「生憎俺達2人だけどな。
アリシアはまぁ一応身分が身分だからな」
キーリがぼやいていた3人がこの3人のことだ。
ケイト・ハーウェイ。
ユリア・エイレン。
ア
リシア・ライラック。
ちなみに3人ともキーリ達の2つ年上で20歳。
キーリとサリアにとっては
最も親しい友人であり
気軽に話せるお姉さんお兄さん的存在であり、
そして誰よりも互いを認め合い、
キーリ達にとって唯一の信頼し力を託せる相手だ。
「驚いている暇があればさっさとしますわよ。
キーリ、ケイト。サリアは別行動かしら」
率直な
オブラートに包まれた
最もな言葉。
ユリアの性格を知らなければ、
まるで怒っているかのように見え、表情も無表情だ。
だが
「OK」
「分かってるって。
ちょうど12号車あるし一人ノルマ4な」
2人ともが普通に受け答える。
彼女は言葉が少ないだけで、全てが真を指すから。
ケイトは指を弾く。
正確には、両方に嵌まった精巧な紋様が入った銀の指輪を、
白いや銀の光が放たれる。
見えない塊が当たったかのように鋼鉄製の列車の扉へぶち当たり、
しかもそれは倒れ込まず不自然に浮き上がり、安全な場所へと落ちる。
これが彼の実力だ。
ケイト・ハーウェイ
キーリやサリアと同じ十二蓬華の一人で二つ名は"白薔薇"。
その証にしている手甲は白薔薇が黒地の上に鮮やかに描かれていて、
ペンダントについた透明ないや少し蒼がかった石が光る。
あれと思うかもしれないがキーリもサリアもそれぞれの色の石を身につけている。
この石は普通の錬金術師には術法増幅機になるが
彼らにとっては強すぎる力の抑制剤となる。
話は逸れたが、
ケイトには通り名がある
神風と
その名の通り
空気や風-気流を操る錬金術を得意とする。
今のも風を操り、様々な衝撃を緩和したのだ。
次々と開かなくなった扉を打ち壊していく。
自分のノルマが終わると風で自らを僅かに浮かし、
中に入り瓦礫を撤去し
下敷きになった人を助ける勿論全員息があるわけではない。
なるべく動かさないように注意しながら、
息がある人を風で外へ、サリアの元へと送る。
「ちょっとケイト来てくれない?」
「なんだキーリ」
呼んだのはキーリだった。
「この助けてる人も赤紐つけてる人だけでいいから、
サリアに送って。」
「…カンタンだからいいけど」
(簡単なんかじゃないよっていうか高等技術だよby作者)
「あっそっちの人らは気をつけてね。
その球壊さないよう。」
見ると、
火傷したであろう傷を
水の球が包み込んでいる
重力に反し宙に浮いた
水
ケイトが得意とするのが風、地に関するものなのに対し
キーリが得意とするのは今までから分かるように
水や氷
しかも空気中に漂う水蒸気を利用する
またかなりの脚力を見せたが、
あれは自らの血流を操作し筋力をあげ脚力が上昇したもの。
ケイトは風で送る。
「で残りはどうすりゃいいわけ?」
「後でユリアに頼んでも大丈夫な程度だから」
「ふぅんじゃあ言っとくな“ユリア”」
“何ですの”
聞こえるはずのない声が返ってきた。
風により声を運ぶ。
彼女らは風言霊と呼んでいる。
まぁケイトの錬金術の応用超高等技術だ
“終わったらきてくれ。重体のやつは"運んだ"“
“‥人使いの荒いこと”
そう確かにユリアの声が届いた。
その頃
ユリアは何車両も離れた場所にいた。
周りには不自然な生え方をした植物がありしかも、ありえないほど強く車両を浮き上がらさせている。
見えないが手甲には黒地に白で描かれた鈴蘭、そしてちらりと見える翠の石のペンダント。
鈴蘭
それが彼女に授けられし花名。
同じく十二蓬華の一人で見ての通り植物を使う。
またサリアと同様に医療錬金術も優れており、
ただ彼女の場合は自らの生命力でなく大地の気を利用するので緊急事態以外は
極力ユリアがすることになっている。
のため
高位医術師でもある。
だからこそ、
キーリは彼女を呼んだのだ。
この事件では
15人死亡(全て即死)
重傷者120人
軽傷者30人
という結果に終わり、そのうち半数以上の重傷者は早急な治療により命を取り留めた。
また、ケイトのその後の風による調査により
原因が究明され、発覚した。
原因は線路に積み立ててあった小石。
どうやら子供達の悪戯だったらしい。
犯人特定までに至った時
被害者の人や関係者、警吏のものが
その子供達が昔でいう下級身分であることもあり
理不尽な罰を受けそうになった。
その時
黄金の色が輝く。
「やめなさい、
悪気があったわけではないでしょう。」
割って入ったのは、 ソプラノの声。
黄金の髪に少し色黒い肌(普通より浅黒い程度)
王族に近しいものの証の
翠がかった銀の瞳。
彼女が
アリシア・ライラック。
サリア達と親しい者であり、
この国の王族の王位継承者第一候補である、この国の第一王女だ。(王族はいまだに権力を持っている、)
「あら、アリシアやっとですの」
王女にタメ口。
普通なら不敬罪で、処罰ものだ。
だが5人はとても親しい仲なのだ…
「もう…いろいろあるんだって。
一応王女だしね」
そして民草に向き合う。
「今回のことは責任をもって
倒れた家屋などは修繕します。
どうか怒りをお抑え下さい。
第一王女アリシア・ライラックとして
また十二蓬華"向日葵"の名において」
権力や力で捩伏せるのは簡単だ。
彼女の得意とする錬金術は雷を使うもの。
超攻撃型錬金術だし、術の媒体の腕輪はきちんとしている。
しかも仮にも王女なので、権力を使えばすぐだ。
「それでも足りないなら
十二蓬華
"紅桜"サリア・アリテレス
"水仙"キーリ・アリテレス
"白薔薇"ケイト・ハーウェイ。
"鈴蘭"ユリア・エイレン。
の名も連ねるわ」
女ながら
また身分を関係なく
ひたすら生きる
彼女達(約1名違うが)
身分でいうなら
総じて高い。
アリシア以外も高位貴族で、
候爵家がサリア、キーリ、公爵家がユリア、伯爵家がケイト。
だが皆がその身分をむやみやたらに使用することなく、
だがいざ必要な時は
躊躇わず、自分の力を使う。
まっすぐな人間なのだ。
だからこそ権力に執着する家族に幻滅もしていた。
サリアとキーリは
3人を兄、姉のように
また朋のように思っていた
人は脆い
簡単に壊れてしまう。
そのことをなに1つわかっていなかった。