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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

"魔鍵ができるまで"

掲載日:2026/06/05

魔鍵と呼ばれる『其れ』は、教徒に伝わる話の中で『あらゆる事に使用された結果、完成する』と言われて居る


『何かが足りない』のは明白だったが、『何が足りて居ないのか』は、手掛かりの影すら掴めて居なかった



朝から、木机の上に置いた、子供の身長程の大きさの魔鍵を監察し続けて居る


やはり、動き出す気配は感じられない

この悪魔を模した金属製の像は、伝統的な製法を遵守し、人血を混ぜ混んだ鋼で僕が鍛造したものだ


完成した場合、魔力を発したり自立的に行動し始めるらしい



『あらゆる事』を僕は試したつもりだった

この場合のあらゆる事とは、『ラクドス教徒としての、あらゆる事』だ


この魔鍵を完成に導く為、僕はこの像を自分の喉にも肛門にも尿道にも通過させたし、魔鍵を使って他人を殴打した事も切り裂いた事も、もちろん突き刺した事も何度も有る


それら行動の実施には、主に友人親戚知人を使ったのだが、いま振り返れば思慮が足りなかったと思う

きちんと道筋を立てて実行すれば、せめて絶交まではされずに、一人の人間を複数回利用出来たかも知れないからだ


そうでなくても、同じラクドス教徒を使えば軽蔑はおろか、むしろ畏敬と賞賛のもとで魔鍵は完成して居たかも知れない

常ならば『思慮』とは我々の敵でしか無かったが、だからこそ視落としてしまったものは大きかったようだ


一方で、僕の身体機能は上記した実験の為に再利用が不可能となり、現在では部分的に魔導義体に置き換えられて居る

こちらに関しては悔いは一切無い



当然、こんな事ばかりして暮らして居る為、家には既に何の食料も無い

床に幾つか転がって居る、昨日殺したその辺の人間でも食うかと思い、僕は屈んで死躰の一つに顔を近付けた


倫理とかどうとか以前に、臭くてとても食べようと云う気持ちになれ無かった


くそっ、と僕は死躰を踏み付ける

汚い汁が靴に飛び散り、とても不快だった



途端、玄関の扉が勢い良く開かれ、聖職者の祭服を纏った、小柄な少年の姿が家に入って来る

君だった


相変わらず、君は僕の部屋の様子に顔を(しか)める

『なら、なんで僕の事が好きなのだよ』と思ったが、納得のいく説明を聞けた試しが無かった



「まだこんな事をしてるの?」


咎める様に言う君を、僕は取り押さえて口付けようとした


いつものようにはいかず、君は珍しく抵抗を視せる

僕の腕を振り払うと、机の上の魔鍵を床へと倒し、ベルトから抜き放った鎚鉾を振り上げる


僕は、咄嗟に魔鍵に覆い被さった



骨の砕ける音



他人の躰から聴く事には慣れて居たが、自分の内側から聴くのは、とても久しぶりだ

過去に、強い興味から自分で骨を砕いた時以来だった


酷く気分が悪い

口の中に血が溜まり過ぎて居た事もあり、僕は血と吐瀉物を吐いた

それらの一部は、びちゃびちゃと魔鍵に吐き掛けられて、そして、それが当然であるかの様に鍵へと染み込んで消失した


僕は意識を喪いかけて居たが、鍵が血を飲む姿を視て、はっとした


ばかりか、魔鍵は緩やかな動きながら活動を視せ、鎚鉾の一撃を受けて皮膚を破って突き出た、僕の肋骨の一つを自らの手で掴んだ


魔鍵の顔の部分が、僕に近付く

鍵は、明確な意志をもって骨を齧ろうと動きを視せ───しかし停止してしまった



「ち、違っ………こんなつもりじゃ───」


声と鎚鉾を取り落とす音に、僕は顔を向けた

君は泣きながらその場にへたり込んで、視開いた眼で僕を凝視して居た



「おい───」


僕はよろよろと立ち上がると、君の前髪を掴む


「痛えな………」



「ああ!?」


君の顔を魔鍵に叩き付ける


一度、


二度、


三度………


痺れを切らして、その次は鎚鉾で後頭部を滅多打ちにした



結果

君は絶頂したみたいに四肢をびくつかせ、それきり二度と動かなくなった


机に有った煙草に火を付ける

「ついにやっちまったか」と思った


まあ、いくら何でもウザ過ぎた


というか、人の好きな物を馬鹿にして、あまつさえ壊そうと奴なんて、こうするしか無いって気もする


ふと視ると

魔鍵は完全に完成をみたらしく、一個の生物のように立ち上がり、部屋を不思議そうに歩き始めて居た



魔鍵が君の死躰の、悪しくを片手で掴んで逆さに持ち上げる


僕は煙草を床に放り投げると、「待って!そいつ、後で防腐処理したら僕が性玩具にするから食べないで!」と叫んだ

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