↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第3章 雪雪危機一髪!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
89/441

第089話 ヒゲの男


「どう見ても営業してないな。完全に閉(し)まってる」


 店を開けるどころか完全休業を示す看板(かんばん)が立てかけられ、店前は文字通り閑古鳥(かんこどり)が鳴いていた。閉(し)められた戸を叩(たた)いて誰(だれ)かいないか呼(よ)びかけてみても、中からは反応がなく、いきなり出鼻(でぱな)を挫(くじ)かれてしまった。おい親方、どうなってんだよ!?


「おーい、誰(だれ)かいませんかー……。ってクソ、こんなことしてる時間ないのに」


 屋根の上を見てみれば、雪が積もりすぎて今にも建物が崩(くず)れそうだ。恐(おそ)らく長いこと人の出入りがなかったのだろう。周囲の店を見てみても、同じく人影(ひとかげ)がなく、客の姿(すがた)すらない。果たしてどうしたものか。


 しかしその時、俺(おれ)の頭上で居眠(いねむ)りしていたモコモコさんが、クンクンと鼻を鳴らし始めた。そしてどこからかいい匂(にお)いがすると目を光らせ、「あっち行く!」と俺(おれ)の手を引っ張った。


「おいおい、急にどうしたんだよ」


 どこをどう見ても廃墟(はいきょ)となって瓦礫(がれき)の山と化した寂(さび)れた一角に入っていくポンチョ。フガフガ匂(にお)いの出どころを探(さが)して駆(か)けていく。悪いが今はモコモコさんの遊びに付き合ってる余裕(よゆう)はないんだけどなぁ……


「ポンチョ、お腹(なか)すいたー!」


「はいはい、あとでご飯にしましょうね~って……。あれ、マジでどこからか香(こう)ばしい匂(にお)いがするぞ。どうしてこんなところで?」


 半壊(はんかい)した荒屋(あばらや)だけでなく、手入れされていない折れた木々の数々、そして元は原っぱだったかのような開けたスペースの先から、薄(うす)っすらと煙(けむり)が立ち昇(のぼ)っている。四つ足で駆(か)けていったポンチョを仕方なく追いかけていると、突然(とつぜん)「うヒャア!?」という誰(だれ)かの間抜(まぬ)けな声が聞こえてきた。


「ちょ、おのれ、急に飛びかかって、ワシの飯食うな! やめれ!」


 横風を防ぐように立てかけられた壁(かべ)の隙間(すきま)から中を覗(のぞ)いてみれば、ポンチョと食い物の争奪(そうだつ)戦を繰(く)り広(ひろ)げている誰かの影(かげ)が……。「こらポンチョ!」と呼(よ)びかけるが、どうやら大慌(おおあわ)てで騒(さわ)いでいる何者かの食材を、ウチのモコモコさんが食っちまったらしい。こいつは失敬(しっけい)。


「キサマ!? ワシの取っといた干(ほ)し肉(にく)焼いたの、食った! なんつーこと……。ワシの、ワシの肉……!?」


 ボロ服を着ている痩(や)せ細(ほそ)ったヒゲの男が、ポンチョを引(ひ)き剥(は)がそうともがきながら嘆(なげ)いていた。俺(おれ)はモコモコさんを彼(かれ)から引(ひ)き剥(は)がし、「うちのが申(もう)し訳(わけ)なかった」と詫(わ)びた。


「申(もう)し訳(わけ)ないで済(す)むか! 最期(さいご)の食料じゃ、どないする!?」


「そ、そいつはすまん。代わりの食材をやるから我慢(がまん)してくれ……」


 俺(おれ)はポンチョのリュックから食いかけのイモを出し、それをヒゲの男に渡(わた)した。


「わ、ワシの肉が、コリツノイモなんぞに、コリツノイモなんぞに……」


「ま、まぁそう言わずに食ってみろよ。美味(うま)いからさ」


 文句をたれつつも包みを剥(は)がしてイモを口にしたヒゲ男は、不服そうな表情が一転し、目の色を変えてがっつき始めた。そしてものの数秒でイモを食い終えるなり、ツバを撒(ま)き散(ち)らしながら「美味いっッ!」と叫(さけ)んだ。


「そりゃ良かった。迷惑(めいわく)かけたね、そんじゃあまた」


 ポンチョを回収(かいしゅう)しつつ、後ろ手をふりふり。

 しかしヒゲ男は徐(おもむ)ろに俺(おれ)のシャツを掴(つか)み、「もっとくれ」と恐(おそ)ろしい顔を向けながら言った。


「いや……、そりゃあ割(わり)に合わないってなもんでしょ。あんなちっこい肉一切れでウチのイモをもっとよこせだなんて」


「いいからよこせ! キサマがダメなら、そっちの小僧(こぞう)じゃ、イモ、食わせろ!」


「ええと……、それは少しばかりワガママが過ぎない? このご時世、飯を手に入れるのがどれだけ大変かわかってるよね」


「だったら仕事じゃ! イモの代わり、ワシ働く、じゃからよこせ!」


「メチャクチャな論理(ろんり)だな……。はぁ、まぁいいや。だったらイモを分けてあげる代わりに、ギルドの方で俺(おれ)の仲間を手伝(てつだ)ってよ。それでいいかい?」


「ホントか!? よし、イモよこせ、まずはよこせ!」


 リュックから取り出したイモを強奪(ごうだつ)するように奪(うば)ったヒゲ男は、ごしゃごしゃと音を立てながら一心不乱(いっしんふらん)に食い始めた。しかも一口食べるごとに「美味(うま)いッッ!」と叫(さけ)び、それはそれは幸せそうに食っている。


「ハイハイ、美味(うま)かったなら結構でございますよ。それにしても、俺(おれ)はこんなところでなにをやってんだろうね」


 人が食べているのを見ているからか、ポンチョも一緒(いっしょ)になってイモを取り出し食べ始めた。ヒゲ男と隣(となり)並(なら)んで美味(うま)そうに食っている姿(すがた)を見ていると、なんだかこっちまで腹(はら)が減ってくる。なんか腹立(はらた)ってきたな……


「美味(うま)いッ! 美味(うま)いッ!」


「ポンチョもおイモ好きー!」


「美味(うま)いッ! 美味(うま)いッ!」


「おイモおいしー! ポンチョも好きー!」


 何やらこの二人(ふたり)、波長が合うのだろうか。

 同調するように美味(うま)い美味(うま)いと言い合っている。……なんなんだよ、マジで。


「ほらポンチョ、食い終わったら行くぞ。おっさんも食べたなら一緒(いっしょ)にきてくれよ。こっちも色々と人が入り用なんだ。アンタがどこの誰(だれ)かは知らないけど、いないよりはマシだろ」


 なぜかポンチョと手を繋(つな)いだヒゲ男が「では参るぞ」と生意気に言った。

 なんなんだよコイツは、マジで。


 そうしてヒゲ男を連れて一旦(いったん)ギルドへ戻(もど)った俺(おれ)たちは、テーブルら職員たちが集めた冒険者(ぼうけんしゃ)の列を横目に見ながら、そそくさと中に入り、忙(いそが)しそうに彼(かれ)らを整理しているマーロンさんに話しかけた。


「忙(いそが)しいとこごめんよ。ちょっといいかな」


「なによハク、今ちょっと手が離(はな)せないんだけど」


「このおっさんなんだけどさ、そっちの作業に加えてやってくれないかな。働きたいっていうんで」


「え~、そんなこと言われても。それに……」


 俺(おれ)の服を引っ張ったマーロンさんが、影(かげ)に隠(かく)れてコソコソと言う。


「あの人、どうみても浮浪者(ふろうしゃ)さんだよね!? どうしてあんな人連れてきたの!!?」


「ちょっと色々あってさ……。変な奴(やつ)だけど悪い人ではなさそうだから、ポンチョも懐(なつ)いてるし、せっかくだから働いてもらおうかなぁと」


 俺(おれ)とマーロンさんがコソコソ喋(しゃべ)っていると、奥(おく)から気怠(けだる)そうに親方が歩いてきた。そして戻(もど)ってきた俺(おれ)に「なんだよ」という顔をした直後、急に直立し、「お疲(つか)れッス!」と敬礼(けいれい)した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。