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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第3章 雪雪危機一髪!

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第086話 地獄の二週間


「容易(たやす)く支援(しえん)するなどと言われますが、そこまで簡単なことではありませんぞ。まずひとつはこの状況(じょうきょう)です。村の周囲は雪に埋(う)もれ、視界(しかい)は悪く、並(なみ)の者では町の行(い)き来(き)すらままなりませぬ。二つ目は町と村との距離(きょり)です。我(われ)らの村は、モリスの森の奥地(おくち)に位置しております。町との距離(きょり)は、それなりの手練(てだ)れですら少なく見積もっても丸一日以上は必要です。なによりこの状況(じょうきょう)下では通常の行路は使えず、遠回りすることを覚悟(かくご)で安全な導線を確保せねばなりません。さらにはその距離(きょり)を、しかも物資を運びながら移動するとなれば、我々(われわれ)などではとても対処(たいしょ)しきれない。そして最後にして最も大きな懸念(けねん)点が、町一つを支援(しえん)するとなれば、途方(とほう)もない量の物資が必要となる点です。確かに我(われ)らの手元には、ある程度の物資がある。しかしそれを彼(かれ)らへ渡(わた)す術(すべ)がない。まさにないものづくしの状況(じょうきょう)なのです」


 猫(ねこ)族の族長が言うように、最も重要なポイントはそこなんだ。環境(かんきょう)、距離(きょり)、物量の何もかも足りていないこの状況(じょうきょう)下では、町を救うなどと意気込(いきご)んだところで無意味でしかない。


 しかしそこで不敵に、というより不気味に微笑(ほほえ)む人物が一名。ケケケと悪魔(あくま)のように嘲(あざけ)ったその人物は、俺(おれ)、マーロンさん、ボア、そしてウルフたちを順々に指さしてから、最後に純白(じゅんぱく)のふかふかな雪の上に仰向(あおむ)けで倒(たお)れ込(こ)みながら言った。


「それ、全部アタシが解決してあげる。その代わり、もし全部上手(うま)くいったら、アタシに少しお金を用立ててほしいの。どうです、悪い条件じゃないでしょう?」


 大の字で空を見上げながら言い切ったのはリッケさんだった。彼女(かのじょ)は悶絶(もんぜつ)するように身体をよじりながら、雪まみれになった全身をガバっと起こし、「それじゃあ早速(さっそく)いきますか」とバッキバキに充血(じゅうけつ)した眼(め)で宣言(せんげん)した。


「期間はたったの二週間。それまでに最低限必要な条件をクリアさせたげる。でも一つ条件があるわ。村長、両族長にボアちゃん、そして新入りのワンちゃんたちも。みんながみんな、不眠(ふみん)不休で働くこと。そうすれば、みんなの願いを叶(かな)えてあげられるわよぉ。このアタシの野望のために!」


 うわぁ、また凄(すご)いこと言いだした。

 ある意味この場の全員が引いているけど、だからこそ彼女(かのじょ)の言葉は信じるに値(あたい)する。退屈(たいくつ)は悪だと全(すべ)てを捨(す)て、その身一つでこの村にやってきた彼女(かのじょ)が解決できると宣言(せんげん)したのだ、恐(おそ)らくその方法もぶっ飛んだ荒唐無稽(こうとうむけい)な方法に違(ちが)いない。


 しかし、だからこそ意味がある。

 むしろこの状況(じょうきょう)を打破する方法があるのなら、それくらい甘(あま)んじて受けずにどうするか!?


「で、俺(おれ)たちはどうすればいいのかな、リッケ女史閣下(かっか)さま?」


「あら村長、い~い覚悟(かくご)じゃありませんか。それじゃあ今から順を追って説明しますよぉ。では皆(みな)さん、こちらへどうぞ!」


 もはや口調もなにも関係なくなり、日に日に崩(くず)れて本性(ほんしょう)剥(む)き出(だ)しになっていく彼女(かのじょ)の様子は多少気になるものの、今さらそこには何も言うまいて。それぞれが決心しつつ広場に集まれば、俺(おれ)たちは立ちどころに種族別に班(はん)分けされ、それぞれの仕事を説明されることとなった。


「ざっくりそれぞれの役割(やくわり)を説明すると、ワンちゃんたちは運搬(うんぱん)係、ボアちゃんたちは整備係、猫(ねこ)族とアリクイ族のみんなは破砕(はさい)・荷積係。そして最も重要なのが……アナタたちよ!」


 ビシッと俺(おれ)とマーロンさんを指さすリッケさん。

 もの凄(すご)く嫌(いや)な予感がする……


「時間がもったいないから、まずは村長たちを除いたみんなの説明を先にさせてもらうわ。猫(ねこ)族とアリクイ族のみんなは、引き続き実の破砕(はさい)作業を急ピッチで進めてちょうだい。もちろん袋(ぶくろ)詰(づめ)の作業も同時進行でね。恐(おそ)らくだけど、この作業が最も時間との兼(か)ね合(あ)いでシビアになってくると思うわ。だから早速(さっそく)持ち場に戻(もど)って、各々作業に取(と)り掛(か)かってちょうだい!」


 猫(ねこ)族とアリクイ族を破砕(はさい)班(はん)と袋(ふくろ)詰(づめ)班(はん)に割(わ)り当(あ)てた彼女(かのじょ)は、引き続きおかしな距離(きょり)を開けたまま警戒(けいかい)しているボアボアを指先でくいくいと呼(よ)びつけた。


「続いてはボアちゃんたちよ。アナタたちには、この村とマイルネの町を繋(つな)ぐ行路を整備してもらうわ。現在この森は酷(ひど)い雪に埋(う)もれ、まともに動ける状況(じょうきょう)じゃない。しかもその中を迷わず安全に物資を運ぶとなれば、最も重要なのはその足(・)場(・)よ。アナタたちにはこれから二週間、昼夜を問わずこの壊(こわ)れきった道をピッカピカの道、いわゆる『ピルピルロード』に作り変えてもらいます!」


 驚愕(きょうがく)の表情で彼女(かのじょ)の説明を受けたボアボアたちは、たった二週間という短期間で物資を運ぶルートを開拓(かいたく)せよとのお達しを命じられた。


 そして「お次は……」と繋(つな)げた彼女(かのじょ)がウルフたちを下から舐(な)めるように見上げた。さらには俺(おれ)とシルシルを値踏(ねぶ)みするよう交互(こうご)に何度も視線(しせん)を動かしながら、最後にシルシルの脚(あし)に触(ふ)れて言った。


「村を出てから帰ってくるまでにかかった期間が約四日。ざっと計算したところ、村長さんたちが町に到着(とうちゃく)するのに約二日と半日、そして用事を済(す)ませるのに約半日、そして町からウルフちゃんに乗って帰還(きかん)するのに約一日。計算は合ってるかしらん?」


 反論(はんろん)の余地すらない俺(おれ)の頷(うなず)きを見届(みとど)け、彼(かれ)らの走力を頭の中で弾(はじ)いたリッケさんは、おおよそ必要な条件を指を跳(は)ねるように踊(おど)らせながら積み上げていった。そして俺(おれ)とシルシル、そしてマーロンさんとその他(ほか)のウルフたちとの二班(はん)に分け、二週間で各々がすべき作業を披露(ひろう)した。


「ハッキリ言って、たった二週間で準備できるかどうかは微妙(びみょう)なとこ。でもそれを可能にするのがアナタたちの、い・い・と・こ・ろ❤ さぁ働きなさい、腕(うで)の見せ所よ」


 そうしてそれぞれの持場に散った俺(おれ)たちは、

 日々彼女(かのじょ)に尻(しり)を叩(たた)かれながらの苦行に耐(た)えることとなる。


 地獄(じごく)の二週間が、今フタを開けたのである――


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