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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第3章 雪雪危機一髪!

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第080話 一番マズいもの


 …………。


 ……………………。



 無言の時間が流れていく。

 というより、テーブルもローリエさんも、全然興味なさそうだ!


「そ、そうか。そりゃ良かったな。Eランク冒険者(ぼうけんしゃ)、死なねぇようにしっかりやれよ」


 テーブルが俺(おれ)の肩(かた)を適当にバンバン叩(たた)く。ローリエさんもローリエさんで、「本当にハクさんで大丈夫(だいじょうぶ)なんですかぁ?」と額にシワを寄せながら俺(おれ)の頬(ほお)を突(つ)っついた。


「は、ははは、しょ、精進(しょうじん)します……」


「と、まぁそんなことはどうでもよくて、ひとまずこれで南の平原のことは片付(かたづ)いたわけだな。独断で勝手に動いたことは不服だが、ギルド長として一応礼は言っておく。助かった、また何かあれば頼(たの)む」


 俺(おれ)の村長就任(しゅうにん)報告をポーンと放り投げ、テーブルがマーロンさんと握手(あくしゅ)を交(か)わした。憧(あこが)れの高ランク冒険者(ぼうけんしゃ)をキラキラした瞳(ひとみ)で見つめるローリエさん。本当にわかりやすい人ですね……


「しっかしいつまでも町の周辺をウルフにうろつかれたのでは気が休まらんぞ。今日(きょう)のところは、ここらで解散とさせてもらおう。あんたらの村への移動については、明日(あした)以降(いこう)、好きにしてくれればいい。ただ、事の顛末(てんまつ)については後日しっかりと報告を頼(たの)む」


 頷(うなず)いたマーロンさんは、明日(あす)の朝、東の森の入口で集合ねとシルシルに伝え、彼(かれ)らに一度南の平原へ戻(もど)るように指示した。何事もなく帰っていったウルフの後(うし)ろ姿(すがた)を見届(みとど)け安堵(あんど)した様子のギルド職員二人(ふたり)は、「毎度毎度無茶がすぎるぞ」と文句を言いながら俺(おれ)の背中(せなか)をバンッと叩(たた)いた。


「さぁて、これでひとまず話は終わったわけだが……。アンタら二人(ふたり)、ちと時間はあんのか?」


 妙(みょう)な声色(こわいろ)で質問したテーブルの態度に、俺(おれ)は急激な悪寒(おかん)に襲(おそ)われる。しかしガッチリと奴(やつ)の腕(うで)にホールドされ、俺(おれ)の身体はどうやらもう逃(に)げられそうにない!


「悪いが付き合ってもらうぜ。ローリエ様や、まだやってる店はあったよな、さっさと手配しろッ!」


「アイアイサー!」と敬礼(けいれい)したローリエさんが一目散に町へと駆(か)けていく。それを見て「ハァ」と首を振(ふ)ったマーロンさん。どうやら今夜は帰れそうもないな……。



 その後、唯一(ゆいいつ)開いていたパブに連れて行かれた俺(おれ)たちは、ムスッと牛のような顔をしているテーブルに招かれるまま、食事にありつくこととなった。


 先日(※村に招待した件)の礼も兼(か)ねてという前置きで今夜は俺(おれ)の奢(おご)りだと豪語(ごうご)したテーブルは、俺(おれ)たちの要望も聞かぬまま、勝手に大量の料理を注文し、グラスが運ばれてくるなり豪快(ごうかい)に両手で握(にぎ)り、間髪(かんぱつ)入れず乾杯(かんぱい)の音頭(おんど)を取った。


「おーし、久々に一つの仕事に目処(めど)がついたぜ。こいつを祝わずして何を祝えっつーんだよ、なぁローリエ様よ!」


「ですです! 毎日毎日朝から晩(ばん)まで、冒険者(ぼうけんしゃ)さんたちの苦情をさばき続けてるこっちの身にもなってくださいってなもんですよ! お二人(ふたり)はご存(ぞん)じないでしょうけど、最近はホントに酷(ひど)いんですから!」


 掴(つか)んだジョッキを離(はな)さず飲みまくる二人(ふたり)の勢いに押(お)され、俺(おれ)たちは「ハハハ……」と苦笑いするしかない。どうやら長雪による影響(えいきょう)は相当なものらしく、冒険者(ぼうけんしゃ)不足によるクエストの増加と、低ランク冒険者(ぼうけんしゃ)による討伐(とうばつ)不履行(ふりこう)が頻発(ひんぱつ)しており、ギルドの仕事がまるで回っていないのだという。しかも最近は、通常仕事に加えて雪の処理(しょり)や建物の修繕(しゅうぜん)依頼(いらい)までもが急増し、彼(かれ)らギルド職員も協力して夜通し仕事をしているらしい。それはそれは、お疲(つか)れ様(さま)です。


「しっかしラッキーだったぜ。ウルフの件を嬢(じょう)ちゃんが解決してくれたおかげで、南国のルスカへ救助要請(ようせい)を出すことができそうだ。ほんっっと困(こま)ってたんだ、ウルフどもが俺(おれ)たちの出す間者を軒並(のきな)み弾(はじ)いちまうからよ。しかも噂(うわさ)じゃ聞いてたが、まさかシルバーグロウウルフまでいやがったとは。もし戦闘(せんとう)になってたらヤバかったぜ」


 全部ぶっちゃけちゃうのねと苦笑いな俺(おれ)の首根っこを掴(つか)まえたテーブルが「テメェも、もっと飲め!」と強引(ごういん)にグラスを握(にぎ)らせる。仕方なく一口飲んだ俺(おれ)は、それにしてもと周囲を見渡(みわた)した。


 気のせいだろうか。

 以前この町で飲んだときとは、明らかに空気が違(ちが)っている気がする。どうやらマーロンさんも同じことを考えていたのか、彼女(かのじょ)が服の袖(そで)を引っ張った。


「あの……、一つ聞いていいですか」


 俺(おれ)たちの微妙(びみょう)な空気を感じ取ったのだろう。「あー、それ以上は言わないで」と口止めしたローリエさんは、わかりやすく少しガッカリした空気を漂(ただよ)わせながら、気怠(けだる)そうに理由を説明してくれた。


「町中が辛気臭(しんきくさ)いって言いたいんでしょ? ……そう、そのとおりよ。本当は私(わたし)たちだって、こんなふうに飲み食いしながら管を巻(ま)いてる場合じゃないってことくらいわかってるの。だーけーど、こんなときくらい飲まなきゃやってらんないってのも本当。ですよね、マスター!?」


 絡(から)み酒なのか、立場が逆転しているローリエさんがテーブルの首元をたくし上げながら迫(せま)った。「まぁまぁ」となだめた俺(おれ)は、「詳(くわ)しく聞かせてもらいますよ」と彼女(かのじょ)を怒(おこ)らせないよう気をつけながら話を促(うなが)した。


「ハクさ~ん。ちなみにこのペラペラのお肉、いったいいくらすると思います~? このぺ~らぺらのお肉ですよ~?」


 わざと店主に聞こえる大声で絡(から)んだ彼女(かのじょ)は、ドゴンッとジョッキを置きながら、「銀貨8枚(まい)ですってよ!?」と当てつけるように叫(さけ)んだ。


「ぎ、銀貨8枚(まい)? こんな小さな肉が、ですか? 以前は銅貨数枚(まい)だったような……」


「そうよ! こっちの煮込(にこ)みは銀貨6枚(まい)、こっちのジョッキは銀貨4枚(まい)、こっちの骨付(ほねつ)き肉(にく)に至(いた)っては銀貨13枚(まい)ですってよ! アタシたち、一体どれだけ働けば、毎日こ~んな良い食事ができるんですかねぇ~?」


 もはや当たり屋のように絡(から)んで仕方がないローリエさんを抑(おさ)えながら、テーブルに「どういうことですか?」と聞く。すると彼(かれ)は小さく一つため息をつきながら、絞(しぼ)り出(だ)すように教えてくれた。


「人の行(い)き来(き)がなくなり、物流が途絶(とだ)えれば、自(おの)ずとこういうことは起こってくる。単純(たんじゅん)な話、食うもんがねぇのさ」


「食うものって、まだ冬は始まったばかりですよ。冬の食材だってまだ……」


「……本気で言ってんのか? そんなもん、期待できるはずねぇだろ」


 途端(とたん)に落(お)ち込(こ)んでしまう二人(ふたり)。

 周囲の客たちもどこか元気がなく、よく見れば店内は空席も多く、なんとも活気がない。酒の席だというのに聞こえてくる会話は小さな愚痴(ぐち)ばかりで、異様(いよう)な雰囲気(ふんいき)を変えようと取(と)り繕(つくろ)ったマーロンさんが話題を振(ふ)った。


「だ、だけど町の北側はマイルネ湾(わん)がありますよね。あそこなら海(うみ)の幸(さち)がとれるはずですし、そう悲嘆(ひたん)しなくても!」


 しかしジト~ッとした目で見つめる二人(ふたり)の空気は重く、彼女(かのじょ)の言葉を聞いた別の席の男が吐(は)き捨(す)てるように言った。


「バカ言うな素人(しろうと)が。近郊(きんこう)の海なんざ、川から流(なが)れ込(こ)んだ水が原因で全部凍(こお)っちまってんだよ! おかげで俺(おれ)たちゃ、魚をとるどころか船を出すことすらできねぇんだ、バカにしてんのかッ!?」


 突如(とつじょ)ぶつけられる罵声(ばせい)。

 はぅっ!と肩身(かたみ)を狭(せば)めたマーロンさんの頭を撫(な)で撫(な)でし、イイコイイコしてあげる俺(おれ)。くそぅ、誰(だれ)だ彼女(かのじょ)にそんな酷(ひど)いこと言う奴(やつ)は!?


「だがそれが現実だ。今は海も地上も雪雪雪の雪まみれで、俺(おれ)たちではどーすることもできねぇ。しかも食(く)い扶持(ぶち)として見込(みこ)んでた冬の農作物までほぼ全滅(ぜんめつ)ときちまってる。……実を言うとな、一番マズいのは、ギルドなんかじゃねぇ。…………この国、なんだよ」


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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