↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第2章 ピルピル草栽培開始!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
66/441

第066話 苦悩に次ぐ苦悩


 これまで饒舌(じょうぜつ)だった面々も、さすがにこの話題ばかりには閉口(へいこう)し、言葉が出てこない様子。しかし村の者たちからしてみればピルピル草の栽培(さいばい)率が上がるだけでも普通(ふつう)に凄(すご)いことで、そこにさらなる付加価値(かち)を求めているとは思えない。


 やはり俺(おれ)の目標設定が高すぎるのだろうか。

 しかしその程度も達成できないで、何が『食糧(しょくりょう)問題を解決する』だ。


「前にも言ったけど、私(わたし)はいつもより少し美味(おい)しいものが、いつもより少し多く採れるだけでも嬉(うれ)しいんだけどなぁ?」


「現実問題として、それで手を打つのはありだと思う。だけど悔(くや)しくない? 俺(おれ)たちの村が、そ(・)の(・)程(・)度(・)の(・)も(・)の(・)しか作れないって思われるの」


 俺(おれ)の一言に、皆(みな)の視線(しせん)が一斉(いっせい)に引(ひ)き締(し)まった。

 それどころか怒気(どき)すら含(ふく)まれる鼻息までもが漏(も)れ出(だ)し、皆(みな)言葉少なではあるものの、新たなモチベーションを噴(ふ)き上(あ)げている者もチラホラいる。良い傾向(けいこう)だね。


「俺(おれ)はもう少しコレを改良する方法を考えてみるよ。みんなは引き続き、それぞれの持場で、各自できることを考えてみてほしいんだ。あともう一つお願いなんだけど、アリクイ族のみんなには、さっき受粉作業を実施(じっし)したハウス内のピルピル草を、ひとまず実がなるところまで育ててほしいんだよね」


 すると不思議そうにマルさんが首を傾(かたむ)けた。


「でもハウスはこれからハク様が使うと聞いてたんだな。おいらたちが専有(せんゆう)しちゃうと、ハク様に迷惑(めいわく)かけちゃうんだな」


「その点は気にしなくていいよ。ハウスはもともと作業部屋(べや)として使っていただけだし、今は自宅(じたく)でも作業できるしね。栽培(さいばい)方法はみんなに任せるから、まずは好きなように育ててみてよ。次元魔法(まほう)や必要な環境(かんきょう)があれば相談して。手伝(てつだ)うからさ」


「ほんとう!? やった~、おいら頑張(がんば)ってみる~。前からいっぺん試(ため)してみたかったことがあるんだな~」


「失敗してもいいから色々やってみて。苗(なえ)は俺(おれ)の方でジャンジャン準備するからさ!」


 目を輝(かがや)かせてワキワキしているマルさんにハウスの栽培(さいばい)を任せた俺(おれ)は、その間にまたひとり頭を悩(なや)ませるつもりでいた。

 どうにかしてピルピル草を進化させなくてはならない。しかし俺(おれ)の悩(なや)みは、数日後まったく別の形で思いも寄らない方向へと進んでいくことになる。



 ―― それから四日後の朝



 自宅(じたく)にこもったまま悩(なや)みに悩(なや)んでいた俺(おれ)は、未(いま)だ何も思いつくことなく、背(せ)もたれに仰(の)け反(ぞ)ったまま夜更(よふ)けを迎(むか)えていた。あれだけ村人に啖呵(たんか)をきっておきながら、まるで何も生み出せていない。それどころか彼(かれ)らは我(われ)こそ先にと競(きそ)い合(あ)うように新たな試みを進めており、日進月歩技術を進化させている。このままでは村長として持ち上げられた俺(おれ)の立場がないッ!


「マズい……、ここんところの俺(おれ)、本当に何もしてない……。このままでは口だけのいらない人だと彼(かれ)らに捨(す)てられてしまう。それだけは避(さ)けたい!」


 頭を掻(か)きむしってみるが、ボサボサの髪(かみ)の毛(け)が落ちただけで一つのアイデアも出てきやしない。俺(おれ)は何をしたらいいんだ!?


 窓(まど)の外を覗(のぞ)けば、夜更(よふ)けとともに起きてきた村人たちが、今や遅(おそ)しと仕事を開始させていた。彼(かれ)らはリッケさんを中心に受粉法の開発を目的に組まれた専門(せんもん)チームの一員で、まだ発足(ほっそく)数日だというのに恐(おそ)ろしい速度でその方法論(ろん)を進化させていた。

 これまでハウスの中という限られた空間でしか動かせなかった蟻(あり)たちの操縦(そうじゅう)について、僅(わず)かではあるものの確実にその範囲(はんい)を広めつつあり、本格的な冬に入る頃(ころ)にはきっと暫定的(ざんていてき)な手法を仕上げてくるに違(ちが)いない。そうなってしまえば、俺(おれ)の立場はさらに脆弱(ぜいじゃく)で情けないものになってしまう!


「アリクイ族のみんなも、のほほんとしてるように見えて実は優秀(ゆうしゅう)だし、猫(ねこ)族のみんなは持ち前の統率力(とうそつりょく)でビシッと集団をまとめてるし、ボアたちは圧倒的(あっとうてき)な体力で昼夜問わず延々(えんえん)と動き続けて必要な下準備のほとんどをこなしてくれている。そして何よりリッケさんだ。彼女(かのじょ)はそもそも能力がチートすぎるうえに知識量も異常(いじょう)だし、探究心(たんきゅうしん)も行動力も常人じゃ比べ物にならない。どうしてそんな人たちがこんな秘境(ひきょう)の村にいるんだよ……。いや、問題はそこじゃなくて、むしろ村にとっては良いことで、だけど俺(おれ)にとっては立場が……、あーもう頭の中がグチャグチャだ!」


 さらに仰(の)け反(ぞ)って大口を開けてみる。

 こうしていると、今にも魂(たましい)が抜(ぬ)け落(お)ちていきそうだ。


「あああああああ、ダメだ。もう何も思(おも)い浮(う)かばん。…………散歩でもしよ」


 どうやら今日(きょう)も天気は良さそうだ。

 それでも随分(ずいぶん)冷(ひ)え込(こ)んできた村はそろそろ初霜(しも)が降(お)りそうな雰囲気(ふんいき)で、冬が始まるまでのタイムリミットがすぐそこまで迫(せま)っていた。


「おはようございます、村長。今朝(けさ)は随分(ずいぶん)と早いですね」


 チームの一人(ひとり)が声をかけてきた。

 俺(おれ)は「あんまり頑張(がんば)らなくていいよ~」と本気の建前を呟(つぶや)きながら、ふぁ~と大きな欠伸(あくび)を一つ。なんもしてないというのに酷(ひど)い寝不足(ねぶそく)だ!


「付加価値(かち)、付加価値(かち)。……付加価値(かち)とは一体なんなんだ。イモは味覚という最もわかりやすい材料が目の前に転がってた。しかし味というわかりやすい手段(しゅだん)が使えない以上、これを除(のぞ)いた新たな要素が必要なのに、凡夫(ぼんぶ)な俺(おれ)の頭では何も思(おも)い浮(う)かばない。……わたくしはどうすればいいのですか、神様!?」


 なんだかずっと同じことを嘆(なげ)いている気がする。

 こんなでは早朝の清々しい散歩の雰囲気(ふんいき)も湿(しめ)りっぱなしだ。


「いかんいかん、俺(おれ)がこれじゃ村のみんなの士気を下げてしまう。俺(おれ)なんぞのせいで彼(かれ)らの仕事を妨(さまた)げるわけにはいかん。俺(おれ)なんぞのせいで……」


 ブツブツ一人(ひとり)呟(つぶや)きながら歩いてみる。

 その姿(すがた)は誰(だれ)から見ても不審者(ふしんしゃ)そのものだ!


 俺(おれ)は自宅(じたく)横に作った大きな切(き)り株(かぶ)に腰掛(こしか)け、働いているチームの皆様(みなさま)をボーッと見つめていた。すると次の瞬間(しゅんかん)、彼(かれ)らとは全く別の方向から、「ドゴンッ!」という破裂(はれつ)音が響(ひび)いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。