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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第2章 ピルピル草栽培開始!

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第049話 彼女の力


 数日後、ギルド経由で大書庫への呼(よ)び出(だ)しをくらった俺(おれ)たちは、仁王立(におうだ)ちで待ち構えていたリッケさんと再び対峙(たいじ)することとなる。もはや俺(おれ)たちの中で彼女(かのじょ)の存在(そんざい)は猛悪(もうあく)な魔物(まもの)と同じくらいの脅威(きょうい)度、否(いな)、それ以上のものになりつつあり、頭を大いに悩(なや)ませていた。


「よーこそいらっしゃいました。さぁさぁどうぞ、どうぞこちらへー!」


 いわゆる書庫という厳(おごそ)かな空間に彼女(かのじょ)の異様(いよう)なほどデカい声が響(ひび)き渡(わた)る。あの夜のテンションそのままに、瞳孔(どうこう)が開いてギンギンになっている眼(め)で俺(おれ)たちを招き入れた彼女(かのじょ)は、書庫裏(うら)にある職員専用(せんよう)の研究スペースに入るなりドンと腰掛(こしか)け、足を高く上げて左右に組(く)み替(か)えながら言った。


「さぁさぁ、お好きなところにお掛(か)けください。そして此度(こたび)の研究成果を示し合わせようじゃあありませんか!!」


 同僚(どうりょう)の書庫員さんすらもドン引きしている異常事態(いじょうじたい)に、俺(おれ)とマーロンさんは誠心(せいしん)誠意(せいい)の平謝(ひらあやま)りだ。どうにか皆(みな)さんの視線(しせん)を避(さ)けて扉(とびら)を閉(し)めた俺(おれ)は、「勘弁(かんべん)してくださいよ」と泣き言を漏(も)らすしかない。


「何を勘弁(かんべん)するというのです。人類における進歩の歴史を自ら体現しておきながら、何を恥(は)ずべきことなどございましょうか!? ですよね、トゲトゲさん!」


 背後(はいご)に隠(かく)れていたトゲトゲさんを持ち上げたリッケさんは、チュッチュッとキスしながらムギュッと抱(だ)きかかえた。どうやら相当気に入られてしまったようで、もはや俺(おれ)たちではどうすることもできない。トゲトゲさんには申(もう)し訳(わけ)ないが、諦(あきら)めてくださいと十字を切りつつ俺(おれ)たちは黙(だま)って腰掛(こしか)けた。


「さぁさぁ、本来であればあの夜のことを鮮明(せんめい)に! かつ繊細(せんさい)に! かつ堂々と語り明かしたいところではございますが、残念ながらそこまでの時間はございません、と。しかしわたくし、あれ以来、喜びに打(う)ち震(ふる)え続ける日々。嗚呼(ああ)、どれだけの幸せが、これ以上わたくしに襲(おそ)いかかってくるのでしょうか(うっとり)」


 酔(よ)いしれていらっしゃる。

 しかしイライラしながら咳払(せきばら)いして空気を断(た)ち切(き)ったマーロンさんが、「それで、お話は?」と喧嘩(けんか)腰(ごし)に言った。


「そうでした、そうでした。お呼(よ)び出(だ)しさせていただいた理由はほかでもありません。こちらをご覧(らん)ください」


 そういって彼女(かのじょ)が差し出したもの。

 それはあの夜、彼女(かのじょ)が採取した数匹(ひき)の蟻(あり)たちだった。


「本当に捕(つか)まえていたんですね。しかしそれを見たくらいで何かわかるんですか?」


「……舐(な)めていただいては困(こま)ります。こうみえて、わたくし大好きなんですよ、生き物が」


 でしょうね、とトゲトゲさんを抱(かか)えた彼女(かのじょ)の姿(すがた)を見つめて頷(うなず)く。普通(ふつう)は恐(こわ)がるんですよ、彼(かれ)の本当の姿(すがた)を知ってたら……。


「あれから数日の時をかけ、わたくしは幾(いく)つかの検証を行いました。その結果、わたくしはひとつの結論(けつろん)に達しました。そう、彼(かれ)らをコントロールすることは難(むずか)しいと!!」


 俺(おれ)とマーロンさんが同時にずっこけた。

 なんだそれ、そんなこと言うためにわざわざ呼(よ)びつけたってこと!?


「ふ、ふざけてるなら帰りますよ。俺(おれ)たちも遊んでる時間はないんですから」


 しかし彼女(かのじょ)は「チッチッチッ」と指を横に振(ふ)って不敵に笑う。


「そう結論(けつろん)を焦(あせ)りなさるな。ハクさん、貴方(あなた)はあの夜、私(わたし)に向かってこう言いましたね。『腕(うで)なんか突(つ)っ込(こ)んで、食べられたらどうするつもりなのか』と。しかしあのとき、私(わたし)は確信を持って蟻(あり)玉に手を入れました。彼(かれ)らが私(わたし)の腕(うで)を食いちぎることはないだろうと」


 妙(みょう)に説得力のある堂々としすぎた態度に、俺(おれ)は思わず息を飲んでしまう。この人、いちいち迫力(はくりょく)あるんだよなぁ……


「では念のため聞きますね。どうしてですか?」


「私(わたし)は私(わたし)が手を入れる直前まで、彼(かれ)らが何を食し、何を食さないかを具(つぶさ)に観察しておりました。木々の葉、枝、土、石、生き物、死骸(しがい)、無機物、有機物などなどひっくるめて、彼(かれ)らがその玉に取り入れた物は様々でした。しかし……、驚(おどろ)いたことに、彼(かれ)らはあ(・)る(・)物(・)を一切(いっさい)口にしていなかった。それはなんだと思います?」


「え? いや、そこまでは……」


「…………生(・)物(・)です」


「せ、生物?」


「わたくしが見ていた限り、彼(かれ)らは生物を一切(いっさい)口にしていなかった。口にしたのは、いわゆる生命を失った生物だったもの、もしくは物質的に途切(とぎ)れてしまったもの。地に落ちた草木や砕(くだ)けて散った石、それに小動物の死骸(しがい)などの(・)み(・)です」


 あのハイテンションの中、そんなところまで見てたんですかと言葉にしかけるも、俺(おれ)はグッと堪(こた)えて飲(の)み込(こ)んだ。なんだか癪(しゃく)だったからだ。べらぼうめ。


「そ、それで……?」


「こちらへ戻(もど)り、すぐに気付いたことを検証いたしました。さらにはもともと明らかであった項目(こうもく)に加え、幾(いく)つか気になったポイントも再度調査いたしました」


 リッケさんは小さく区切った箱の中に一匹(ひき)の蟻(あり)を入れ、等間隔(とうかんかく)に数滴(てき)の水を垂(た)らした。すると蟻(あり)はそれを避(さ)けるように移動し、自ら水滴(すいてき)から一定距離(きょり)離(はな)れた場所で停止した。


「まず事前の情報どおり、彼(かれ)らは水を極端(きょくたん)に嫌(きら)います。水分補給(ほきゅう)に関しても口にした食品から摂取(せっしゅ)するのみで、定量に達した水を直接取り入れることはありません。また本能的に水を避(さ)ける能力が備わっているのか、それを避(さ)ける場合には水と反発するかのよう不自然に飛び回ります。このように」


 直接水のついた枝を向けると、瞬間(しゅんかん)移動するように距離(きょり)を取ったままジャンプした。マーロンさんが思わず「面白(おもしろ)い」と口にしてしまったのも頷(うなず)ける。


「次に彼(かれ)らの移動方法と捕食(ほしょく)方法についてです。彼(かれ)らは内包している魔力(まりょく)を用い、かつそれぞれが協力して餌(えさ)を大量取得するとういう方法に辿(たど)り着(つ)き、成功しています。一匹(ひき)一匹(ひき)の力は極(ごく)微小(びしょう)ですが、密集(みっしゅう)することでそれぞれの魔力(まりょく)を集中させ、大きな力に変換(へんかん)しているのでしょう。その数が増えるにつれ、移動する速度や捕食(ほしょく)するスピードが劇的(げきてき)に変化することが確認(かくにん)できました」


 一匹(ひき)、二匹(ひき)と蟻(あり)を追加すると、彼(かれ)らはすぐに密集(みっしゅう)し、協力して移動を開始した。しかも異常(いじょう)な速度で水を避(さ)け、プログラムされたかのように動き回った。


「そして実験の結果、彼(かれ)らの行動には幾(・)つ(・)か(・)の(・)法(・)則(・)があることがわかりました。まず移動に関して、彼(かれ)らが意(・)思(・)を(・)持(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)わ(・)け(・)で(・)は(・)な(・)い(・)ということです」


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