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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第2章 ピルピル草栽培開始!

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第039話 ピルピル草



  ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 どうにか無事に三回の収穫(しゅうかく)を終えた頃(ころ)、暖(あたた)かかった村の空気は次第(しだい)に乾燥(かんそう)し僅(わず)かに肌寒(はださむ)さを感じ始め、村に始めての冬がやってくる――



 あれから三ヶ月の月日が経過した。

 ギルドとのゴタゴタや新たな問題の発覚など、列挙すればそれなりのことがあったけど、村は概(おおむ)ね平和で、今もこうして俺(おれ)はモリスの森の奥地(おくち)で生活を続けている。


 最初のイモを栽培(さいばい)をしている時点で妙(みょう)な気配は感じていたけれど、俺(おれ)の知らぬところで村の完全移転を決めていた猫(ねこ)族の族長とマーロンさんが俺(おれ)の村へと移ってきたのをきっかけに、今やほとんどの村人が俺(おれ)の自宅(じたく)を取り囲むように家(うち)を建て、そこで暮(く)らすようになっていた。イモの所有権(しょゆうけん)について話したときはあれほど謙虚(けんきょ)だったにも関(かか)わらず、自分たちの村に住んでもらえないのなら自ら動いて俺(おれ)を取(と)り込(こ)んでしまおうと即断(そくだん)するあたり、ある意味で彼(かれ)らの強(したた)かさを感じてならない。けど逆にそれが彼(かれ)らの強みであり優(やさ)しさだと知ってしまった俺(おれ)は、彼(かれ)らに甘(あま)えながら、持ちつ持たれつこうして日々を暮(く)らしている。


 ポンチョやトゲトゲさんもすっかり村での生活に慣れ、猫(ねこ)族やボアたちとも仲良くやっている。トゲトゲさんに関しては、初めこそ村人に不気味がられていたものの、その慎重(しんちょう)すぎる性格に気付いてからは、それぞれが手を差(さ)し伸(の)べ、優(やさ)しく接してくれるようになった。今では村のマスコット代わりとして、猫(ねこ)族の子供(こども)たちにとって格好の遊び相手になっている。



「フンフン、フンフンフフンフ~ン♪」


 嬉(うれ)しそうに木の枝を振(ふ)り回(まわ)すポンチョさん。

 鼻歌なんか口遊(くちずさ)んじゃって、こ~の可愛(かわい)らしいモコモコさんめ!


「それにしても……。随分(ずいぶん)寒くなってきたねぇ。そろそろ冬支度(ふゆじたく)しないとな」


 コーレルブリッツ公国へやってきて、いつの間にやら半年が過ぎていた。嬉(うれ)しいことに今のところは不要な干渉(かんしょう)も受けず、平穏(へいおん)無事な日常を過ごせている。


「おはよう、トア。ポンチョもおはよー!」


 ポンチョを抱(かか)えて高い高いするマーロンさん。こうして朝の散歩をすることも、もはや毎日の楽しみになっている。まったくもって、幸せな毎日とはこのことだね!


「トア、昨日(きのう)は大丈夫(だいじょうぶ)だった? 族長が随分(ずいぶん)無理を言ってたみたいだけど」


「ああうん、大丈夫(だいじょうぶ)大丈夫(だいじょうぶ)。それにしても随分(ずいぶん)寒くなってきたね。あれ……、なんとなくだけど、マーロンさん前より毛が伸(の)びてない?」


 少しだけ顔を赤らめて「おかしい?」と聞き返す彼女(かのじょ)。「触(さわ)りたい」とふざけて答えると、「変なこと言わないで」と怒(おこ)った。可愛(かわい)い。


「私(わたし)たち猫(ねこ)族は冬がくると毛が伸(の)びてボワボワになっちゃうの。だからこまめに手入れしないと、す~ぐ伸(の)びちゃうのよ。ホントもう、嫌(いや)になっちゃうわ。ね~、ポンチョ!」


「ポンチョ、ケーボワボワ!」


 うむ。確かにボワボワだなと笑う。

 モコモコさんがますますモコモコになり、こちらとしては万々歳(ばんばんざい)であります。


「しっかし夏季も終わりとなると、そろそろコリツノイモの収穫(しゅうかく)も終了(しゅうりょう)みたいだね。ボアたちの食料としては十分な量を確保できたけど、冬季はどうしようか?」


 すると俺(おれ)の質問にピョンと跳(は)ねたマーロンさんは、そうだそうだと指を立て、近くの倉庫らしき建物を指さした。


「ええと、あ(・)れ(・)はなんでしょうか?」


「口で説明するより実際に見たほうが早いと思うよ。それじゃ早速(さっそく)見てみよー、おー!」


 ポンチョを連れて走り出す彼女(かのじょ)は、楽しそうにキャッキャと騒(さわ)ぎながら行ってしまった。毎朝元気ですねぇとほのぼのしている俺(おれ)は、深夜の見回りを終えて戻(もど)ってきたトゲトゲさんを回収(かいしゅう)しつつ、少し遅(おく)れて倉庫を覗(のぞ)き込(こ)んだ。


「あ、やっときた。ほら~、こっちだよ、早く早く!」


 ポンチョとマーロンさんに手を引かれた先では、うず高く積み上げられた何かの束が並(なら)んでいた。一見したところ、なんらかの農産物みたいだが、……これはなんだろう?


「こちらはなんの倉庫ですか?」


「ふふ~ん、ではトアにクイズです。この穀物(こくもつ)は一体なんでしょうか?」


 彼女(かのじょ)が袋(ふくろ)の中から取り出した粒(つぶ)のようなものを受け取った俺(おれ)は、それをまじまじと見つめてみた。しかし……


「わからん! ……あ、でも待てよ。あれだ、これは前に言ってたパルパル草の実だ!」


「ブッブ~、不正解。パルパル草は暖(あたた)かい時期に作るものだって言ったよね。正解は、『ピルピル草の種』だよ」


「ぴ、ピルピル……?」


「そう、ピルピル草。パルパル草に似た実をつける、このあたりでは一般的(いっぱんてき)な冬の穀物(こくもつ)の代表だよ」


 聞くところによると、目の前に積まれたこれらの束はピルピル草と呼(よ)ばれる穀物(こくもつ)の種(※実)で、これから畑に蒔(ま)くために、ここで保存(ほぞん)されているらしい。この先、冬が進んだところで畝(うね)を準備した畑に種を蒔(ま)けば、芽を出し、それこそ麦に近い穀物(こくもつ)が沢山(たくさん)採れる、らしい。


「そこで提案なんだけど、今年(ことし)の冬はみんなでピルピル草を育ててみない? もともと猫(ねこ)族の村では小規模(しょうきぼ)だけどピルピル草を栽培(さいばい)してたんだ。だけどなかなか育成が難(むつか)しくって、沢山(たくさん)採れる年があまりなくて困(こま)ってたんだぁ」


「……ピルピル草ね。しかし俺(おれ)はまだこいつを食べたこともなければ、どんな穀物(こくもつ)なのかも知らないわけで、どう答えてよいものか」


「だったら善(ぜん)は急げよ。これから町に行って、実際に食べてみましょ♪ ほらポンチョとトゲトゲさんも、これから一緒(いっしょ)にマイルネの町に行ってご飯だよ、おー!」


 勝手に予定を決めてしまうマーロンさん。

 今日(きょう)は一日、コリツノイモの品種改良を進めようと思っていたのに……


 無念です!


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