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第024話 大きな問題


 導かれるまま彼らについていくと、そこではバタバタと足場を固めているワイルドボアと、木々を並べている小さなボアが忙しそうに動き回っていた。どうやら家を建てるための土地を用意してくれているらしく、既に使用する木材や踏み固められて整地された土地が完成していた。


 ……いやいや、準備良すぎだろ!!


「この材料を使って建ててくれって。あと泉の近くはもともと自分たちが使っていた沼地があって、そこを畑に使ってくれて大丈夫だってさ。泥が多くて栄養のある土だから、ちゃんと空気も含んでいて農作物もよく育つんじゃないかな」


 マジか。コイツら有能すぎるだろ……。

 ボアボアの一言でズラリと横並びになったボアたちは、俺の指示なく勝手に準備を整えてくれていたらしい。人よりよっぽど賢いんじゃないの、キミら。


「あ、ありがとう。それにしても凄いねお前たち。これをたったの一日でやっちゃうなんて大したもんだよ」


 俺に褒められて嬉しそうなボアたち。いやいや、昨日の今日で従順すぎだろ!


「ト~ア嬉しい、ポンチョも嬉しー♪」


 ウチのモコモコも喜んでいるし、どうやら万事OKみたいだ。とくれば、ここからは俺がしっかりしないとな。


「……と思ってみたものの、残念なことに俺は家なんて建てたことがない。申し訳ないけどそこはどうにもならないから、農場作りは家造りと並行して進めることになるよ。多少遅れちゃうけど、我慢してくれな」


 ノウハウも経験もないのだから、俺がどれだけ身軽に動けたところで簡単に家など建てられない。しかしそれを知ってか知らずか、また別の誰かが「おーい!」と声をかけてきた。



「あれ、族長様!? どうしてこのような場所にアナタが……?」


「なーに、こちらにハク殿の自宅を建てるとお聞きしたものですからな。我々もお手伝いをさせていただきたく思いまして」


「え゛? いや、まぁ確かにありがたいんですけど……。本当にいいんですか?」


「何を(おっしゃい)ますか。そもそもハク殿は我々の村を救っていただいた恩人。ボアどもと共存というのが多少気にはなりますが、彼らも今後我々に手を出さないと約束いただきましたし、こちらもご協力は惜しみませんぞ。それに、……婿殿として我が村にいつきていただいても良いように地盤を固めておきたいですからな。ホッホッ!」


 妙な思惑が見え隠れしているけど、それはそれとして有り難くはある。村の若い衆を連れてきたという族長は、積まれている木材を確認するや、すぐに作業に取りかかれと指示を発した。


「なんだろう、こちらの意思とは無関係に、勝手に話が進んでく。もちろん嬉しいんですけどね、なんというか、まぁ……」


 俺が何を言うでもなく、自発的に動き回ってくれる彼らは、片やこれから使用する予定の畑を耕し、片や俺のための自宅を建てと大奮闘している。でもなんだろう、凄く申し訳ない気が……


「皆がここまでしてくれているのだ、あとはハクがすべきことをすべきなのではないか。これで食糧問題を解決できませんでしたとなってみろ、皆が暴動を起こしてもおかしくはないな」


 マーロンさんまでそんな脅しを……。

 確かにここまでお膳立てされて失敗しましたでは格好が悪すぎる。そろそろ俺も本気をみせねばなりませんね!


 俺はまず木の板数枚を借りて、整地された区画の隅っこに簡易の風よけとして使う掘っ立て小屋を作った。といっても、ただ木の板を張り合わせただけの隙間だらけな小屋のため、休憩所にもなりはしないのだけど。


「こんなものを作ってどうするのだ?」


「まぁちょっとね。悪いけど風が入らないように、そこの扉を閉めてくれる?」


 人二人がちょうど入れるくらいのスペースの中心に座った俺は、手に入れたコリツノイモを並べ、背後から覗き込んでいるマーロンさんに質問する。


「ちなみにマーロンさんは、コレとコレの違いがわかる?」


 並んだ中から二つを手にとって聞いてみる。すると彼女は事も無げに答えた。


「左手の方は先程もらった種イモというやつだな。そして右手のは、先程の畑で採れたものだ、違うか?」


「御名答。凄いね、どうしてわかるの?」


「それくらい匂いでわかる。私たち種族は、人族の100倍は鼻が効くからな」


「な、なるほど……。あれ? だとすると、コレとコレでは明確な匂いの違いがあるってことだよね?」


 実際に二つを手に取ったマーロンさんは、クンクンと鼻を鳴らして匂いを確かめ、「そうだね」と頷く。気になったのか、ポンチョも一緒になってイモの匂いを嗅ぎ、「だね~」とほくそ笑んだ。生意気なモコモコどもめ!


「種イモはどこか古臭いというか、カビ臭さとは違うんだけど、僅かにすえた臭いが混じってるかな。対してこちらは、みずみずしい緑の臭いに加えて、独特の青臭さと僅かな甘さが香ってくる感じかな。とにかく結構違うと思うよ」


 ポンチョも偉そうにウムウム頷いている。アンタは絶対わかってないやろ。


「そこまで正確にわかるんだ。確かにこの種イモと畑で採れたコリツノイモでは明確な差があるんだ。種の方が古いことを差し引いても、そこには大きな差が存在している」


「それは畑のご夫婦も言ってたな。しかしそれがなんだというのだ?」


「と、ここまでがいわゆる客観的かつ主観的な違いだね。ここから先は、実際にどれだけ違うかを明確にしていこう。マーロンさんは鑑定スキルは使えるかい?」


「いや、鑑定スキルは使えないな」


「ならここからは勝手に進ませてもらうよ。左手の種コリツノイモと、畑で採れたコリツノイモ。実際に鑑定で細かな数値を比べてみると、結構な違いがあることがわかった。ちなみに味覚にはおおよそ五つの種類があるんだけど、わかるかい?」


「なんだそれ、そんなものは聞いたことがないな」


 それもそうかと思い直す。

 そもそも五味の概念がない世界で、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味という五つの要素を分類して説明するには少々骨が折れそうだ。だったらと頭の中で結論を出した俺は、その中から甘味だけを抜粋し、例に挙げてみる。


「実は味には細かな分類があってね、中でもこのコリツノイモは、甘みの部分で大きな問題を抱えていると思ってるんだ」


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