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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第5章 みんな大好きキノコ作り!

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第206話 特使失格!


「だがしかし、こちらも交換条件(こうかんじょうけん)に乗りたい気概(きがい)はあれど、その材料がなければ交渉(こうしょう)のテーブルに付くことはできん。残念ながら、(われ)ら公国が関係する者に、そのアナグマ族という獣人(じゅうじん)はいないようだ。情報を()(しぶ)交渉(こうしょう)継続(けいぞく)することも考えたが、また(こじ)れるだけと判断し、こうして正直に話すことにした。()まぬな」


 こちらが考えていたより端的(たんてき)結論(けつろん)を述べたサワーは、残念だがアナグマ族の情報は持っていないと告げた。しかしこちらとしては(わら)にも(すが)りたい状況(じょうきょう)で、リスク承知で()()んだ場だ。可能な限り情報を引き出しておきたい。


「ではいかがでしょう。公国関係者ではなく、他国、()いては隣国(りんこく)(かれ)ら種族についてお話を耳にしたことはないでしょうか?」


 すると反対に、(かす)かに口元に()みを()かべたサワーが「ではこんな条件はいかがかな?」と提案した。


「確かに村長殿(どの)(おっしゃ)るように、隣国(りんこく)における獣人(じゅうじん)族の情報ならばあるいは。しかしそうなると、こちらも()()()、とはいきません。どうでしょう、その労力に見合う対価をお出しいただけますかな?」


 まぁ必然的にそうなるよね。

 (おれ)は事前にガンジさんから了承(りょうしょう)を得ていた項目(こうもく)をサワーに提示した。


「村のイモについて、一部を直接公国内にお(おろ)しさせていただきます。もちろん価格などは改めてお話させていただきますが、それでどうでしょうか」


 しかし(かれ)の顔色は(すぐ)れない。

 まぁ聞くまでもないのだけどね……。


「まぁ、……なんと言っていいのかな。(われ)らも色々とありましてね。公国内の商業ギルドと取り決めがあり、ここで独断即決(そっけつ)することはできぬのだよ。しかし前向きに考えていただけるのであれば、こちらとしても()(がた)い。公的な強制力を用いることは極力()けたい次第(しだい)だからな。よろしく(たの)むよ」


 結論(けつろん)については先延(さきの)ばしにされたものの、どうやら前向きに話は進められそうだ。アナグマ族のことを(ふく)めて回答は数日待たれよと(うなず)いたサワーは、どちらも前向きに検討(けんとう)すると約束してくれた。


「ありがとうございます。村としても、公国の皆様(みなさま)とは末永くお付き合いをしていきたいと考えております」


「それはお(たが)(さま)だよ。なにより公国としても、あれだけの戦力を持つそなたたちとは争いたくはないからな」


 ハハハと笑いながらサワーが手を差し出した。

 (かれ)握手(あくしゅ)をした(おれ)は、「滅相(めっそう)もございません」と頭に手を置いた。


「ところで村長殿(どの)先程(さきほど)から気になっていたのだが、お(となり)の人物はどなたなのだろうか。こちら初対面かと思うのだが」


 不意に話を()られ、ネイサンの背筋(せすじ)がビシッと()びる。

 しかし冷静に話を聞いていたマーロンさんは、背後(はいご)からネイサンに起立するよう(うなが)しつつ付け加えた。


冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドよりお聞きかと(ぞん)じますが、こちらキュリオス王国から参られた使者で、名をネイサン・マリオネットと。あとは()自身で問題ありませんね?」


 突如(とつじょ)発せられたキュリオス王国というワードに、サワーの(まゆ)がピクリと反応する。(あわ)てて起立し頭を下げたネイサンは、辿々(たどたど)しく挨拶(あいさつ)を始めた。


「わ、(わたくし)先の件にて、きゅ、キュリオス王国の商業ギルド、ホワイトコーストの代表として、さ、参上いたしました、ね、ネイサン・マリオネットと申します。さ、さ、さ、サワー様、此度(こたび)はお(いそが)しき中、御目通(おめどお)りをお許しくださり、あ、あ、あ、ありがとう(ぞん)じます。ど、どうぞよろしくお願いいたしましゅ」


 うわぁ、か、カミカミだぁ……。

 顔面蒼白(そうはく)なうえ、視線(しせん)もアッチャコッチャ散ったままで、これはダメだな。


「ネイサン様……? はて、(わたくし)の方ではキュリオス王の特使として参られた御方(おかた)と聞いておりましたが」


 ダラダラ冷や(あせ)を流しながら頭を下げているネイサン。「は、……はい」と歯切れ悪く返答した(かれ)は、「それが、その……」と、これまた歯切れ悪く言葉を(つな)いだ。


「その、(わたくし)、実は王国の特使より、さらに先だって挨拶(あいさつ)にと。とにかく早く、この身一つで挨拶(あいさつ)だけでもと! ……思いまして、……はい」


 通常であれば、ここで特使として土産(みやげ)の一つでも献上(けんじょう)し、本来の目的を説明するところだが、残念ながら(かれ)(すべ)てを紛失(ふんしつ)し、手ぶらでプラプラやってきた『おマヌケ君』だ。しかもアワアワしているだけで、サワーさん側が困惑(こんわく)してしまう始末で手に負えそうもない。はてさて、どうしたものか……。


「そ、それは大変ありがたくはあるが……。と、ところでハク殿(どの)と共に参られたのは何か理由(わけ)でも?」


 しかしここでサワーさんからまさかの(たす)(ぶね)

 ウゲッと(いや)な顔を(かく)(おれ)とは対照的に、ここぞとばかりに()()ったネイサンは、「そ、そうなのですよ!」とサワーの話題に乗っかった。


「わ、(わたくし)、こちらのハク様には日頃(ひごろ)より良くしていただいており、此度(こたび)ハク様がサワー様とお話をなさるとの話題を偶然(ぐうぜん)()(およ)び、どうにか(わたくし)めも()同席いただけないかと泣いて懇願(こんがん)いたしたところ。こうしてそのご尊顔(そんがん)(あお)ぐことが(かな)い、このネイサンめ、本当に感謝、感謝いたしております。恐悦(きょうえつ)至極(しごく)!」


「は、はぁ。では貴殿(きでん)は、村長殿(どの)と以前よりの顔なじみ、ということなのかな?」


 至極(しごく)当然の質問が。

 ならば(おれ)はこう返すほかなかろう。


「いえ、(わたし)はこの者のことを全く知りません。というより、(わたし)は全くの無関係です。むしろ初対面ですこんにちは」


 ガーンと顔を青くしているネイサン。

 (おれ)の反応に、サワーさんも困惑(こんわく)しているぞ!


「は、ハク様!? し、しどい、それはあんまりだぁ!」


「知らないものは知らないのです。では(わたし)の話は以上ですので、あとはお二人(ふたり)でよろしくお願いします」


「こ、(こま)るー!」と(はじ)も外聞もなく(おれ)の足にしがみついたネイサンの姿(すがた)に、いよいよサワーさんの(まゆ)(ゆが)んでいるぞ。そしてどうやら何かを()()ってくれたのか「ハァ」とため息を付きながら、「もうよい」と(うなず)いた。


「理由はわからぬが、特使殿(どの)とはまた後日、お話をさせていただこう。(もう)(わけ)ないが、本日はあまり時間がなくてね。ではまた機会を改めて」


 そうして会釈(えしゃく)したサワーは、足早に話題を切り上げ、早々に部屋(へや)を後にした。もはや土下座(どげざ)に近い格好でサワーを見送ったネイサンは、どうにか事態を()()けた安堵感(あんどかん)からか、身体をへの字にしたまま(なみだ)を流している。マジでなんなんだよコイツ。


「た、助かったぁ。それにしてもハク様、ちょっと(ひど)くないですかぁ!?」


(ひど)いもなにも、(おれ)はアンタと無関係ですから。ということで、おさらばえ」


 はんなりと手を()って場内を出たものの、事あるごとに足にしがみついてくるネイサン。「お助けおぉぉぉ」と泣きながら(すが)姿(すがた)は心底無様で、(ひど)(みにく)く格好の悪いものだった。ポンチョですら引いてますし……。


「なぁネイサン、もういい加減にしてくれよ。(おれ)たちも(ひま)じゃないんだ。アンタにはこれ以上付き合ってられない」


 強引(ごういん)()(はら)われ、大袈裟(おおげさ)にゴロゴロ転がったネイサン。

 すると今度は(とな)りにいたマーロンさんに泣きついた。


「お願いです姉様(あねさま)! どうかこのネイサンの(たの)みを聞いておくんなまし!」


 しかし(おれ)とは対照的すぎるほど無反応に(かれ)の望みを無視(むし)したマーロンさん。

 それどころか相手にもせず、彼女(かのじょ)(おれ)の手を引き、「行こ」と(つぶや)いた。


「……え、ま、マーロンさん?」


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