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第015話 ゴールデンワイルドボア


  ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ 



「$¥○%&#△×!?」


「そろそろこの辺りでいいんじゃないかって? う~ん、確かにそうですね。せっかくの提案ですし、ここらで探してみましょうか」


 森に入る手前の草原で足を止めた俺は、ようやく二人を芝生の真ん中に放り投げた。布団(ふとん)へダイブするようにキャッキャ楽しんでいるポンチョと対照的に、マーロンさんの俺へ向ける視線が痛いこと痛いこと。もはや不審者へ向けるものですよ、それ……。


「さてさて、それじゃ早速薬草を採ってしまいましょう。どこにあるかな~?」


 など言いながらものの数秒で採取を終えた俺は、摘んだ薬草を袋に入れ、ポンチョのリュックに放り投げた。「ハイ、お終い!」と宣言したところ、ここまでの移動で溜まっていた鬱憤(うっぷん)を吐き散らすように、マーロンさんが俺に顔を寄せ、罵詈雑言(ばりぞうごん)(※らしきもの)を叫んだ。


「まぁまぁ落ち着いて。そんなふうに騒いでもクエストは終わりませんって。それに……」


 俺が森の奥地を見つめる。

 釣られるようにマーロンさんの視線も森へと引っ張られた。


「誰も行かないとは言ってないでしょう。せっかくここまできたんです、チョロっと覗きに行ってみますか、ゴールデンワイルドボア」


 しかし彼は俺の提案を拒否し、「馬鹿言うな!(※みたいなニュアンス?)」と反対した。そして身振り手振りを交えながら、この先にいるモンスターの恐ろしさを鮮明に語った。


「まぁ確かに。ゴールデンワイルドボアといえば、Bランク、いやAランクのパーティーでもやっと倒せるくらいと聞いたことはある。しかも多くの取り巻きがいるとなれば、さらに難易度は高いかも」


「○&◎△$♪♪×%#!?」


「それはそれ、これはこれって言葉があるでしょ? それに少しばかり気になることがあってね。森の東側に」


 俺たちの会話に退屈してウトウトし始めたポンチョを頭に乗せ、勝手に森に入ろうとした俺の背中をマーロンさんが掴まえる。無謀だと首を横に振りながら、行くのは自分だけで十分だ(※という雰囲気)と語気を強めた。


「そう凄まれてもね、それをハイハイって受け入れるわけにはいかんでしょうよ。もしローリエさんに貴方ひとりで向かわせたなんて知れたら、きっとどやされるだけじゃ済みませんよ。ですから、貴方はここで待っててください」


 しかし彼は掴んでいた指先をナイフに変え、俺の背中に切っ先を押し付けた。これ以上進むなら容赦はしない。微動だにしないナイフの穂先がそれを暗に示している。


「勘弁してくださいって。そんなことするなんて、らしくないですよ」


「$♪×%#♪×¥×%#!!」


「何よりも、貴方が俺を止められると思ってます?」


 俺は背中に当てられたナイフを指先でパンと弾き、彼が気を取られた隙にホールドを外し、反対に背後から身体を固め、そのナイフを首元に押し当てた。「ね?」と耳元で呟いてみるが、それでも彼は抵抗をやめない。


「無駄ですって。キミじゃ、俺を止められない」


 うつ伏せに倒し、腕を固め、背中をポンと叩いてやる。すると彼は激しく地面に頭をぶつけ、言葉にならない声を吐き出した。


「そういうことだし。ま、気楽にいこうよ」


 後ろ手をフリフリひとり森へ出発しようとする。しかしその時――




『  待って!  』




 俺は思わず振り返る。

 地面に突っ伏しながら、体を震わせ叫んでいたのは……、まぁ彼しかいないよね。



「……やっぱり喋れたんだね。人の言葉」


「うるさい、黙れ、散々好き勝手しやがって、ふざけるな!」


 両拳で激しく地面を叩いた彼は、土で汚れた顔を上げ、「勝手なことばっか言うな馬鹿野郎!」と騒ぎ散らした。


「馬鹿って酷いな。それに、あんまり騒ぐとコイツが起きちまう」


 頭の上で熟睡状態のポンチョを撫でながら言ってやる。それがまた彼を逆上させ、頭に血を上らせてしまうのだけど。


「馬鹿を馬鹿と言って何が悪い!? アンタ、少し腕が立つからといって、アイツらのことを舐めすぎだ。私はそうして相手を侮り、やられていった者たちを嫌と言うほど見てきた! ……それに、アンタが多少強くても、アイツには勝てやしない。無理なんだよ」


 すると今度は落ち込んだように塞ぎ込む。情緒どうなってんの……


「色々言いたいことはあるけど、その口ぶりからすると、……知ってたんだね、森にゴールデンワイルドボアがいることを」


 観念したようにマーロンさんが頷いた。

 どうやらようやくまともに話が聞けそうだ。


「村が、……襲われたんだ。アイツらに」


「村って、マーロンさんたちの?」


「この森の東側に、私たちの住んでいる猫族の村があるんだ。しかし半年くらい前から、さらに東の森の最深部で、ボアの奴らが大増殖し始めているのがわかったんだ」


「ふ~ん。ってことは、マーロンさんたちはずっと前から知ってたんだね。ボアのこと」


 ようやく落ち着きを取り戻した彼を切り株に座らせた俺は、隣に腰掛け、詳しい話を聞くことにした。


 淡々とその後の森の様子を語ったマーロンさんは、ボアの蹂躙(じゅうりん)ぶりを細かに説明し、あんなものに敵うはずがないと首を振った。


「私たちも奴らを森の外へ出さぬよう、必死に(あらが)った。しかし奴らは少しずつ数を増やしながら抵抗し、ついには私たちを追いやるように生息域を広げた。そして今やどうにもならぬほどに力をつけてしまった。もはや人の町へ押し寄せるのも時間の問題だろう……」


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