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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
序章 解放と再スタート

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第001話 死して尚、生を求める



  ―― ッガッァッツ!!




 抉(えぐ)られた腹(はら)からは血が流れ、穴(あな)のあいたノドからは空気が漏(も)れ、ずっと嫌(いや)な音色を奏(かな)で続けている。両の足の肉は削(けず)られ、右目はもう潰(つぶ)れて見ることすら叶(かな)わない。とめどなく流れてくる血液が頬(ほほ)をつたって口に入り、気管を逆流しようとする黒い濁流(だくりゅう)を、咳反射(せきはんしゃ)だけがかろうじて食い止めていた。


 魔力(まりょく)などは、とうの昔に切れている。回復薬(ポーション)どころか、仲間のひとりすら今の俺(おれ)には残っていない。自分自身をこの世にどうにか繋(つな)ぎ止めてくれていた最後の絆(きずな)にすら裏切(うらぎ)られ、俺(おれ)は今、こうして最期(さいご)のときを待ちほうけている――



 死ぬのは、もう二度目か。


 一度目は、確か20年ほど前だ。九州の某(ぼう)企業(きぎょう)で農薬開発の研究員をしていた俺(おれ)は、開発中だった薬の取(と)り扱(あつか)いをミスり、誤(あやま)って大量吸引(きゅういん)したことにより間抜(まぬ)けにも死んでしまった。薄(う)っすらゆっくり消えていった意識が再び戻(もど)ったのは、ひとつの家具すらもない、荒屋(あばらや)の一角だった。


 転生した家(さき)の親は、俗(ぞく)に言う『毒親(どくおや)』だった。父親は仕事もせず毎日酒浸(さけびた)り。気に食わないことがあれば、誰彼(だれかれ)構わず暴力を振(ふ)るうような糞人間(くそやろう)だった。片(かた)や救いがあるかと思えば、母親の方も最悪で、俺(おれ)のことなどお構いなし。男を取(と)っ替(か)え引(ひ)っ替(か)えし、まともに帰ってくることすら少ない屑野郎(クズやろう)だった。普通(ふつう)さぁ、転生後は明るい最高のチート生活が待ってるんじゃないのかよ。あれはマジで最悪な毎日だった。


 そうしてようやく三歳(さい)になった頃(ころ)だ。糞(くそ)親は、俺(おれ)のことを躊躇(ちゅうちょ)なく国家の組織に売り飛ばしやがった。食事すらままならないから、まともに成長もできなかった俺(おれ)を、奴(やつ)らは笑って売りやがった。今考えても、本当に糞(くそ)が糞(くそ)をまとったようなゴミクソ野郎(やろう)たちだったよ。


 チート能力だけでなく、コネや金すら手に入れる前に売られちまった俺(おれ)は、エルズマート王国という王政国家(おうせいこっか)が裏(うら)で管理している暗殺者ギルド、『双竜(そうりゅう)の爪(ツメ)』に着の身着のままぶち込(こ)まれた。


 そしてギルドの管理者であるメルトンという男の手により一方的に従者(じゅうしゃ)の契約(けいやく)を結ばれた俺(おれ)は、奴(やつ)らに絶対服従(ふくじゅう)の証(あかし)である神託之首輪(エデンズリング)を首にはめられ、完全に自由を奪(うば)われた。それからはただ殺戮(さつりく)を実行するためだけに存在(そんざい)する暗殺者として育てられた。


 ただただ事務的に、暗殺対象であるターゲットを消すためだけに存在(そんざい)している生き物。それが俺(おれ)という存在(そんざい)だった――



 五歳(さい)になった頃(ころ)、この世界で誰(だれ)もが経験する『天啓(リブレーション)』という強制イベントによって得た『調合師(コンパウンダー)』というスキルが、さらに俺(おれ)の闇(やみ)落ちに拍車(はくしゃ)をかけた。

 物質を組み合わせて調合することができる俺(おれ)の固有スキルは、暗殺者という闇(やみ)の仕事を遂行(すいこう)するにあたり、この上ない能力だった。叩(たた)き込(こ)まれた暗殺術、潜入(せんにゅう)術、体術などの基礎(きそ)能力に加え、毒の生成や拷問(ごうもん)術に関する卓越(たくえつ)した能力を開花させた俺(おれ)は、殺し屋(アサシン)としてすぐに頭角を現し、齢(よわい)八歳(さい)にして『常闇(とこやみ)の殺戮者(さつりくしゃ)』の二つ名を得るほどの殺戮(さつりく)マシーンとなっていた。


 国内外問わず、事あるごとに駆(か)り出された俺(おれ)は、国の裏側(うらがわ)で死(し)に物狂(ものぐる)いに生(い)き抜(ぬ)いた。逃(に)げることは絶対不可能。そして殺(や)らなければ自分が殺られる。逃(のが)れられない闇(やみ)の輪廻(りんね)は、俺(おれ)の手を黒く汚(よご)れたものに染(そ)め上(あ)げていった。


 そして20歳(さい)になった頃(ころ)、俺(おれ)はこの国の最高戦力の一つとして数えられる『七遂聖(セブンスブレイブ)』の一人(ひとり)として数えられるまでになっていた。しかし時を同じくして勃発(ぼっぱつ)した国を二分する最悪の跡目(あとめ)争いに巻(ま)き込(こ)まれ、俺(おれ)はエルズマート王の長兄(ちょうけい)であるモライルズに裏切(うらぎ)られ、俺(おれ)を除(のぞ)く『七遂聖(セブンスブレイブ)』の六名、六聖者(せいじゃ)すべてから命を狙(ねら)われる事態に陥(おちい)った。



「 お前は知りすぎたんだよ 」



 初めにやってきた六聖者(せいじゃ)のひとりが口にした言葉が印象的だった。


 国の暗部を担(にな)い、汚(よご)れ仕事を実行してきた俺(おれ)の存在(そんざい)を危(あや)うく思ったのか、それとも力を持ちすぎた危険因子(きけんいんし)と見たかはわからない。どちらにしても、俺(おれ)は国内最強を誇(ほこ)る元(・)仲(・)間(・)だった奴(やつ)らに裏切(うらぎ)られ、辛酸(しんさん)を嘗(な)めることとなった。


 しかし簡単(かんたん)に殺られてやるわけにはいかない。俺(おれ)は全身全霊(ぜんしんぜんれい)をかけて抵抗(ていこう)し、敵対する六聖者(せいじゃ)のうち五人をこの手にかけ、返(かえ)り討(う)ちにした。しかしその代償(だいしょう)は大きく、疲労(ひろう)や傷(きず)は重なり、俺(おれ)はいよいよ追(お)い込(こ)まれた。そして最後の一人(ひとり)、『剣聖(けんせい)バイラルーフ』の一撃(いちげき)によって身体を貫(つらぬ)かれた俺(おれ)は、瀕死(ひんし)の重症(じゅうしょう)を負わされてしまった――



「諦(あきら)めろ、お前はよくやった。これ以上の抵抗(ていこう)は意味をなさぬ」


「黙(だま)れ糞三下(くそさんした)が! 剣聖(けんせい)だかなんだか知らねぇが、俺(おれ)を簡単(かんたん)に殺せると思うなよ、裏切(うらぎ)り者(もの)のクソ雑魚(ザコ)がァアァッ!」


 一対一なら、まず負けない自信はあった。しかし激闘(げきとう)の末、限界を超(こ)えていた俺(おれ)の身体は言うことを聞かず、『相打ち』で互(たが)いに地面を転がった。俺(おれ)は『剣聖(けんせい)』などという大層(たいそう)な二つ名を持つクソ野郎(やろう)の心臓(しんぞう)を貫(つらぬ)いた感触(かんしょく)に打(う)ち震(ふる)えながら、いよいよ冷たくなっていく自分の身体を頭上から俯瞰(ふかん)に眺(なが)めてつぶやいた。



「―― ったくよぉ……、どんだけツイてねぇんだ、俺(おれ)の人生」



 思えば散々(さんざん)だった。

 自分で開発した毒を吸(す)い込(こ)んで死んだかと思えば、今度は毒親に売られ、最後は毒組織にどっぷり浸(つ)かった挙げ句、世界最高戦力の一つに数えられる『剣聖(けんせい)様』にぶった斬(き)られて最期(さいご)を迎(むか)える。


 神様よぉ……

 確かに俺(おれ)は、この世界で数え切れないほどの奴(やつ)を殺したよ。

 しかし好きで手にかけたことなんか、一度だってなかった。


 アイツも、アイツも、アイツもアイツもアイツもアイツも、

 一度たりとも望んで殺したことはなかった。


 それにな、どいつもこいつも、

 最期(さいご)の最期(さいご)は、本当に悲しい顔をしやがるのさ。


 俺(おれ)が俺(おれ)の獲物(ナイフ)を奴(やつ)らの喉元(のどもと)に突(つ)き立(た)てる瞬間(しゅんかん)、奴(やつ)らは決まって恨(うら)みの積もったような細い目で俺(おれ)のことを見つめるんだ。


 殺してやる。

 必ず貴様(キサマ)を呪(のろ)い殺(ころ)してやる、ってな。



 殺意の坩堝(るつぼ)に飲まれた俺(おれ)が、まともに死ねるだなんて思っちゃいないさ。だけど一度だって俺(おれ)は、この生き方を肯定(こうてい)したことはなかったよ。


「――っきしょう、息が、息ができねぇ。目が霞(かす)んできやがった」


 息苦しさから、俺(おれ)はノドを締(し)め付(つ)ける忌(い)まわしきモノを爪(つめ)で引(ひ)っ掻(か)いた。俺(おれ)の自由を奪(うば)っている神託之首輪(エデンズリング)は、こんなときでも俺(おれ)を離(はな)さず、ただ暴力的に俺(おれ)のことを拘束(こうそく)している。この魔道(まどう)具を俺(おれ)に付けた奴(やつ)など、もうこの世にはいないのに――



「ガハッ、ゴホッ! ……駄目(だめ)だ、これ、……もう、シ、ぬ…………」



 三途(さんず)の川ってのは本当にあるんだな。

 俺(おれ)自身が、対岸の向こう側で、こっちへこい、こっちへこいと手を振(ふ)ってる。


 しかし最悪な人生だった。

 殺し殺されの極悪ループ。もし次があるのなら、こんな糞(くそ)世界はノーセンキューだ。自分の手すら汚(よご)さないクズに良いように使われるだけの毎日など、思い出すだけで反吐(ヘド)が出る。自死すら封(ふう)じられたどうにもならない毎日は、『地獄(じごく)』という言葉以外にどんな言葉が相応(ふさわ)しいだろうか。


「さみ……、さみぃよ、はや、く、ころし、て、くれ、……よ」


 近くにいた者たちは、証拠隠滅(しょうこいんめつ)のため剣聖(けんせい)の野郎(やろう)に例外なく全(すべ)て消された。俺(おれ)にとどめを刺(さ)せる奴(やつ)はもう近くに残っていない。六聖者(せいじゃ)の大バカ(ばか)野郎(やろう)どもすら、今やただの無様な肉塊(したい)になっている。こんな俺(おれ)なんぞを殺すために命を落とすなんてよ、馬鹿(ばか)に馬鹿(ばか)を上乗せした最上級の大馬鹿野郎(ばかやろう)だよ、お前たちは……


「せっかく、なか、仲間になれたと、おも、思った、のに、よぉ……うグッ」


 肺(はい)から吹(ふ)き出(だ)した血が逆流し、口からあふれた。

 呼吸(こきゅう)できず、震(ふる)える全身から熱(たいおん)が発散されていく。


 死ぬ。

 白んでいく視界(しかい)が、今際(いまわ)の際(きわ)で俺(おれ)を繋(つな)ぎ止(と)めていた。


 どうせなら最期(さいご)まで眺(なが)めていけや。


 今まで殺してきた者たちにそう言われた気がして、俺(おれ)は左目だけになってしまった目一つで、ただ真(ま)っ直(す)ぐ、闇夜(やみよ)に輝(かがや)く夜空を見つめていた。すると――



 ト~ア、だいじょ~ぶ?



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― 新着の感想 ―
波乱万丈の立ち上がりですね。この後モフモフになるのかな?ブクマしました。
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