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赤い瞳は肉を識る

 王都市場の片隅。

 魚の匂いと香草の煙が入り混じる騒がしい一角に、一軒の精肉店《ドンネル屋》が店を構えている。


 店主の名はバルク・ドンネル。

 かつて一流の冒険者として名を馳せた彼は、今は剣を捨て、市場の一角で黙々と肉を捌いて生きている。


 だがその目──左目だけは、ただの肉屋のものではなかった。

 かつて魔境で命と引き換えに得た“特殊個体”の魔石を加工し、義眼として埋め込んだその瞳は、

 肉の繊維、魔力の痕跡、腐敗の兆しすら見抜く《観肉の眼》として、今なお彼の手元を支えている。


 《ドンネル屋》に持ち込まれるのは、ギルドでも解体困難とされた魔獣や、扱いに技術を要する外来の種、時には曰く付きの素材すらある。

 誰もが断る難物を、バルクは静かに見極め、最も美しい形へと“整える”。


「いい肉ってのはな、恐れず、侮らず、正しく見てやることから始まるんだ」


 この物語は──

 剣を置いた元冒険者が、義眼と包丁一本で王都の“命”と向き合う、

 静かなる肉職人の(たん)である。

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