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優しすぎる魔王



深遠なる闇の中、魔王は瞼を閉じ、静かに佇んでいた。彼の前には、何度も見慣れた景色――焼け焦げた大地、荒れ果てた村、そして倒れゆく勇者たち。しかし、魔王はそれらの光景を直視することを避けるかのように目を伏せ、静かな祈りを胸に秘めていた。


「どうか、皆が傷つかずに済む道はないのだろうか…」


魔王である以上、自分は人間たちの天敵であり、恐怖の象徴であるべき存在。それを理解していながらも、彼はどこか心の奥底で別の生き方を望んでいた。力を振るうことが自分の役目であると知りつつも、その力が誰かの幸福のために使われることを夢見ていたのだ。


彼の忠実な側近たちは、そんな魔王の性格を不思議に思っていた。時には「魔王らしくない」と不満を漏らす者もいたが、それでも魔王は変わらず、戦いのたびに敵である勇者や兵士たちの無事を祈るのであった。


そしてある日、運命の瞬間が訪れる。闇の城の最奥で静かに過ごしていた魔王のもとに、見知らぬ光が降り注いだ。まるで天から舞い降りるかのような温かな光に包まれた瞬間、魔王の体は空へと引き寄せられ、視界が眩しいほどの光で覆われた。


――「異世界への勇者召喚、完了しました!」


気がつくと、そこは見知らぬ場所。煌びやかな神殿の中央で、魔王は驚いたように目を見開く。そして、自らの足元には、驚きと共に膝をつき、畏怖の眼差しを向ける人間たちがいた。


「我らの世界を救うため…どうか、あなたの慈愛で導いてください!」


彼らは、異世界の者でありながら、自分を「救世の勇者」として崇め、敬意を払っていた。


「救世…の、勇者…?」


魔王の頭の中には、いつも抱えていた矛盾と願いが渦巻き、そして一つの思いが浮かび上がる。


「もしかして、これは…新たな使命なのか?」


魔王の表情が穏やかな笑みへと変わる。新たなる運命の一歩が、彼の心の中で静かに始まっていた。

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