三話
「まずは、この郷にある唯一の村に行きましょ。」
そう言って、稲さん、空さんと一緒に村に行くことになった。
「そういえば、あんたは自分からここに来たか、それとも迷い込んだのかわからないって言ってたわよね。」
「はい。」
「あんたが仮にここに迷い込んだとして、心当たりとか、ある?」
「あると言えばあります。」
「そう。それはどんなこと?」
「話すと長くなりますが......いいですか?」
「構わないわ。どうせ村に着くまで暇だもの。」
「では、お話しましょう。」
僕は、家族を亡くしています。
それは、不幸な事故だったんです。
ニュースで少し報道されて、数行の新聞記事になるくらいの、ありふれた事故です。
お父さんと、お母さん。
そして妹。
三人が亡くなった事故。
色んな不幸が重なったんです。
その事故の日のことをお話しましょう。
その日は、僕の誕生日だったんです。
いつも通りに学校に帰ってきて。
夕方だから、ごちそうの準備も後少しまでされてて。
みんなが帰ってきたら一緒に完成させて食べるんだって思ってたんですよ。
それから、30分が経って。1時間が経って。そして、夜になってもみんなは帰って来なかった。
あまりにも、あまりにも遅すぎる。
だから、携帯に電話をかけようと思ったんです。
その瞬間、電話がかかってきて。
相手を見たら、お母さんで。
「もしもし?お母さん?後どれくらいで.......」
「叶山 想夢さんですか?」
知らない人の声だった。
それで嫌な予感がして。
「誰.......ですか?」
「警察です。あなたのご家族が事故に遇いまして。」
その言葉を聞いた瞬間、もっと嫌な予感がして。
「みんなは......?みんなは無事なんですか!?」
「残念ながら.......先ほど、息を引き取られました。」
理解できなかった。
家族のみんなが、死んだ?
僕が、朝に行ってきますって言って。
いってらっしゃいって返してくれた。
みんなが.........?
「どこに.....みんなはどこにいるんですか?」
「XX総合病院です。」
それを聞いて、走った。
そして、病院に着いて。
「叶山です!僕の家族はどこですか!?」
「こちらです。」
看護師さんが、みんなのいるところに連れてってくれた。
それで、家族のみんなを見た。
そして、”家族のみんなが死んだ”という現実を、突き付けられた。
その後のことはよく覚えていない。
遺産もほぼ全部取られて。
役所の人も面倒くさそうな顔で。
学校の友達は僕のことを厄ネタとして扱って。
だから、結局みんな僕のことを空気として見るようになっちゃったんだ。
「だから、ここに来たのはそれが原因かなって。」
「........そう。あんたも大変だったのね。」
「今は悲しみからは立ち直っています。」
「........想夢さん、お姉ちゃん。そろそろ村に着きますよ。」
「ありがとうございます。楽しみです。」
「私が先導するから、着いてきなさい。」
「この村を見たら、びっくりすると思うわよ!」