叶山想夢の独り言+一話
いつからだろうか。
どうしてこうなったのか。
何もかも、僕にはわからない。
家族はいないが、友達も、仲間もいる。
なのに、どうして。
こんなにも孤独を感じるのだろうか。
自分にも訳が分からない孤独を感じながら、毎日を生きていく。
........そう、思っていた。
いつものこと。
ただいまと言っても、返事がない。
この広い家と複数人分の家具に対して、住んでいるのは一人だけ。
隣の家から、声が聞こえてくるのに、自分の家からは、何の音もしてこない。
いつものこと。それに対して何も思うことなんて無かった。
だけど、その日は、それで、今まで今まで感じたことのないくらい、孤独を感じた。
それを感じた瞬間、そこから逃げ出したくなって。
僕は逃げた。
走る。走る。走る。
どこまで来たのか。
どれくらい走っているのか。
何から逃げているのか。
それすらもわからなくなるまで走って。
気がついたら、朝方になっていた。
もう少しで林を抜けられそうだ。
そして林を抜けたら。
神社のような建造物の裏にいた。
ここじゃ何もわからない。
だから、鳥居の所まで走って、
そこからこの土地を見渡すことにした。
鳥居に着き、周りを見ようとした瞬間、自分の目を疑った。
今の時代において、どんな場所でも、高層ビルやマンション、
それでなくても洋式の家が建っているのは当たり前だというのに。
そんなものは存在しなかった。
見えるのは、青々とした山。大きな湖。少し遠くには村だろうか。
村の建物にしても、全て和風建築のように見える。
そんな土地が、今の時代に存在するはずがない。
しかし、僕の眼には、その有り得ないはずの景色が広がっていた。
そして、山々の方を見れば、ちょうど山々から朝日が昇る瞬間だった。
そんな理解できない様な景色を前に、僕は独り言のように言った。
「ここは、どこなんだ?」
その言葉に、返事が返ってくるはずはない。
しかし、返事は返ってきた。
「ここは、忘れの郷」
「忘れられたものが流れ着く、理想郷。」