8話:侵略村⑥
ドン!ガン!ゴン!
トキナが張った結界を村中の人間が囲み攻撃している。
「サガタ様!この壁みたいなのが邪魔で手出しできません!」
「どいてろ!」
差形が右手を前に突き出した。
「火球。」
人の身長ほどの直系の火の弾がトーア達へと放たれた。
「この出力を無詠唱で…。
さすがは異界人ということか。」
ドカンッ!!
火球が結界を直撃し、爆風が巻き起こる。
「トキナ、この結界大丈夫なのか!?」
「何とかね。でもあれより強力なものになってくると耐えられないわ。」
黒煙が晴れる。
「へぇ、無傷かぁ。
さすがはこの世界の精鋭を集めた入界管理局ですね。
じゃあ、これならどうかな。」
差形は人差し指でトキナを指さした。
次の瞬間。
ぴゅんっ!
細い光の線がトキナめがけて放たれた。
バリンッ!
結界が破られる。
光線がトキナに迫る。
「トキナ先輩!!」
トキナの前に立ちふさがり、光線を両腕で受け止める。
ザッシュが誰よりも早く差形が放った光線の脅威に気づいていた。
ザッシュのスキル『守護』は攻撃能力を一切持たない、守りに特化したスキルで
異界人の放つ強力な攻撃に耐えうるということから入界管理局へと呼ばれた。
「ザッシュ!無事か!?」
「何とか無事っす。でもトキナ先輩の結界が破られたっす!」
人々が一斉に押し寄せる。
「とにかくこの場を切り抜けないと。
ちっ、ここはいったん俺のスキルを中断して俺も戦うしかないか。」
「トーア先輩待ってください。ここは俺が道を切り開きます。
俺の後ろに付いてきてください。第一技能『堅牢身躯』!」
そういってザッシュは襲い来る群衆に向かって走り出した。
『堅牢身躯』はザッシュの肉体の強度を大幅に向上させる。
人の群れを押しのけて突き進むザッシュ。
無数の刃物や鈍器による攻撃を受けるがお構いなしに進む。
何とか包囲を切り抜けるもいまだ劣勢の状況は変わらない。
「先輩。このままじゃやばいっすよ。
あの群衆を傷つけずにサガタと戦うなんて無理っすよ。
そもそもサガタにたどり着くことすら無理っす。」
「私の結界も簡単に破られちゃったし。
トーアはあとどれくらいで準備できんのよ。」
「あと1分はかかる…。
ザッシュ、命を懸けてくれるか?」
トーアの突然の問いかけに何かを悟ったようにザッシュが答えた。
「まぁ、そうですよね。
大丈夫っす。そのために入界管理局に来たんですから。
俺がサガタを食い止めます!」
「ありがとう。ザッシュ。
そうとなればトキナはもう一度、結界を頼めるか?」
「それしかないのね。
分かったわ。断界防陣!」
トキナが再び結界を張りなおす。
「ほんとにこっちの世界の人間は学習しないなー。」
差形はそういった再び結界に向かって人差し指を突き出した。
差形が攻撃を繰り出そうとしたその時、群衆をかき分けてザッシュが差形にとびかかる。
「サガター!!お前の相手は俺だ!」