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異界強制送還  作者: ヤッスー
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2話:異界人ミカゲ②

「あなたには元居た世界にお帰りいただきます。」


そう伝えるとミカゲと名乗った異界人はとても驚いた顔をしていた。

無理もないだろう、知らない世界に連れてこられて今度は帰れと言われているのだから。


「すいません。話を端折りすぎましたね。

 とりあえず兵士の皆さんは構えを解いていただいて大丈夫です。」


そう言うと兵士たちは構えを解いた。


「私は入界管理局に所属しているトーア・メギスといいます。

 ミカゲさんのような異世界から来た人の対応が主な業務になります。

 まずは私たちと入界管理局までご同行いただけないでしょうか?

 その道中、詳しく説明させていただければと思います。」


「あんたたちと一緒に行ったら俺は元の世界に戻されるんですか?」


「いずれはそうなるでしょう。」


「ならお断わりです。せっかく異世界転生したんだ。

 この世界で刺激的な日々を送っていずれはマンガみたいに無双するんだ。」


「先に言っておきますが、この世界はあなたたち異界人を望んでいません。

 よその世界から現れて、好き勝手する輩がいるから私たちの仕事があるんです。

 仮に今ここで断ったてもあなたが想像する刺激的な日々は送れないでしょう。

 それにどのみち、あなたをこのまま野放しにすることはできません。

 このまま平和的におとなしく同行していただけませんか?」


「最初から俺に選択権は無いのね。

 分かったよ。どうせ右も左もわかってないし、 

 あんたたちに付いて行くから色々と教えてくださいよ。」

 

「もちろんです。

 ご理解いただきありがとうございます。

 では、あちらに馬車を停めていますのでそれに乗ってください。」


「馬車!?まじかよ。」


そんなこんなで異界人ミカゲと共に入界管理局へ戻ることとなった。


「さて、それでは目的地に着くまで改めて色々と説明させていただきます。」


「よろしくお願いします。」


「まず現在私たちが向かっている入界管理局についての説明ですが、

 そのためには先に異界人について説明する必要があります。

 ミカゲさんのような異世界からやってきた人間を指した言葉です。

 今、この世界では異界人による迷惑行為や犯罪行為が問題となっています。

 そんな異界人問題に対処するために設立されたのが入界管理局になります。

 異界人の方には入会管理局の管理下に入っていただく必要があります。

 入会管理局の管理外の異界人がこの世界で活動することは許可されていません。

 そのためミカゲさんにはこの後、入会管理局の管理下に入っていただきます。

 ここまではよろしいですか?」


「俺みたいにこっちの世界に来た人たちが随分と迷惑かけているみたいですね。

 あなた方の管理下に入ることも問題ないです。

 仕方ないかーって感じです。

 ただ最初に言っていた元の世界に戻るというのはなんですか?」


「まずこの世界はあなた方、異界人を受け入れる準備ができていません。

 そのため最終的には全ての異界人に元の世界に戻っていただくことになります。

 しかし、元の世界に送り返すのも簡単ではありません。

 そのため優先順位をつけて対処しています。

 1.この世界で犯罪行為、問題行為に手を染めた者

 2.入会管理局の管理下に入ることを拒んだ者

 3.一般の異界人

 ただ1や2のような異界人に対応するので手一杯で3のような異界人まで手が回っていないのが実態です。

 そのためあなたが元の世界に戻るのがいつになるか現状、分かりかねます。」


「なるほど、とにかく俺が元の世界に返されるのはまだ先の事ってことね。

 大体、理解しました。

 で、俺みたいなヤツはほかにどれくらいいるんですか。」


「現在、入会管理局の管理下にいる異界人は約100人ほどいます。

 しかし、私たちの把握できていない異界人も多くいると思います。

 さて、そろそろ着きます。

 続きは着いてから中でゆっくりしましょう。」


「分かりました。」


まもなくして馬車は入界管理局の近くで止まった。


「さて、馬車での移動はここまでとなります。

 帝国兵士の皆さん、近くまで送って貰いありがとうございました。」


「いえ、こちらこそご足労いただきありがとうございました。

 では私たちはこれで失礼いたします。」


「はい、ありがとうございました。」


馬車から降り、挨拶を済ませるとストラトス帝国の兵士たちは馬車で帰っていった。

そして歩くことを数分、入界管理局に到着した。


「お疲れ様でした。ここが入界管理局になります。」


「やっと着きましたか。

 結構立派な建物ですね。」


「管理登録手続きの準備をしてきます。

 少しザッシュと待っていてください。」


数分後。


「お待たせしました。

 では私に付いてきてください。」


俺はミカゲをナヴィーさんが待機している部屋へ連れて行った。


「ナヴィーさん、連れてきました。

 お願いします。」


「ミカゲさんですね。これより管理登録をさせていただきます。

 やることは簡単で、この2冊の本に手をかざしていただくだけで結構です。」


そういうとナヴィーさんは2冊の本を机の上に並べた。


「それだけでいいんですか?

 わかりました。」


そう言うと、ミカゲは2冊の本に手をかざした。

本が光り、ミカゲの手の甲に刻印が浮かんだ。


「はい、これで登録は完了しました。」


「あの、この刻印みたいなのは何ですか?」


ミカゲが質問をしてきた。


「ナヴィーさん、ありがとうございました。

 さてミカゲさん、この後は係員の指示に従ってください。

 身分証などの交付があります。」


「ちょっと、この刻印は何なんですか?」


ミカゲが語気を強めて再度、問いかけてきた。


「ミカゲさん、先ほどまでの説明であえて説明していなかった部分があります。

 そもそも、各国が軍や警備隊などを保有しているにもかかわらず

 何故私たち入界管理局が必要なのか分かりますか。」


「あー確かにあまり深く考えてなかったですね。

 ただの役割分担だと。」


「なるほど。私たち入界管理局が必要な理由、

 それはあなたたち異界人が各国の軍の手に負えないからです。」


「えっ?それはどういう…」


「ミカゲさん、スキルについてはもう認識有りますね。」


「はい。今こうして会話できているのもスキルのおかげですし。」


「そう。この世界にはスキルというものが存在します。

 私たちは15歳になると神からスキルが与えられます。

 与えられるスキルはランダムでそれがその人の一生を左右することもあります。

 神の戯れで人生が決まるのです。」


「ちょっ、先輩!そんなこと言ったら神世教のヤツらが聞いたら怒鳴り込んでくるっすよ。」


「知らねぇよ、俺は神を信じてないからな。」


「そんな大層なスキルを与えられておいて、よくそんなことが言えるっすね」


「うるせぇよ。

 すいません。話がそれましたね。

 スキルですが、あなたたち異界人に与えられたスキルは私たちが持つものに対してあまりにも強力なのです。

 異界人がスキルを駆使して暴れたら誰も止めることができないでしょう。

 それくらい異界人に与えられたスキルは強力なのです。」


「そうなんですね。」


「そしてスキルを使うには魔力を必要とします。

 魔力量には個人差がありますが、その魔力量も異界人は私たちの数倍あります。

 そんなわけで基本的にこの世界の人間ではあなたたち異界人に太刀打ちできないのです。」


「そうだったのか。

 魔力なんてものもあるのか。

 俺にも魔法が使えるんですか?」


「高度な魔法はそれ向きのスキルが必要ですが、

 簡単なものなら使えますよ。

 その簡単な魔法もあなたたち異界人が使えば驚異的なものとなります。」


「マジか!!魔法かー、憧れだったんだよな。」


「期待しているところを失礼します。

 これで何故、私たち入界管理局のような異界人特化の組織が必要かご理解いただけましたか?」


「はい。なんとなくわかりました。

 異界人が強すぎるって話ですよね。」


「ご理解いただけたようでよかったです。

 続いて管理登録についてですが、あの2冊の本に手をかざしていただいた時点で

 あなたの魔力とスキルを制限し、現在地を追跡できるようにしました。

 事後の説明となり申し訳ありません。

 先に説明して、あなたにスキルで暴れられたら私たちの身が危険ですので。」


「ちょっと待ってくださいよ。魔力とスキルを制限ってどういうことですか?

 そんな話聞いてないですよ。」


「だから今説明しましたよね。

 先に今の話をして、自分の力に気づかれて暴れられたら

 あなたを止める手段がないんですよ。

 それに魔力は制限といっても一般人程度には使えます。

 スキルは全く使えないわけではありません。

 使っていけば分かりますよ。

 これで私からの説明は以上になります。この後は係員の指示に従ってください。

 それでは失礼します。」


「ちょっと、待ってくださいよ。」


「ミカゲさん、ではこちらへお越しください。」


「うるさいな!おい、待てよ!!」


ミカゲの呼び止めを無視して仕事部屋へ戻っていく。


「先輩いいんすか。あいつめっちゃ騒いでるっすよ。」


「いいんだよ。魔力とスキルの制限さえできればこっちのもんだ。

 それに自分たち異界人がこの世界の人間にとってどれほど脅威なのか

 この世界にしばらくいればすぐ分かるだろーよ。

 百聞は一見に如かずってね。」


そうして仕事部屋へ戻ってきた。


「トーア、ザッシュ、異界人の対応を完了させただいま戻りました。」


「お疲れ様。」


「早かったわね。お疲れ!!」


ナヴィーさんとトキナが出迎えてくれた。


「俺にかかればこれくらい余裕よ。

 それよりナヴィーさん、先ほどはご対応いただきありがとうございます。」


「いいのよ。私の数少ない仕事だもの。」


「数少ないってナヴィーさんほど仕事している人間なんてここにはいないですよ。」


「トーア先輩。俺腹減ったっす。飯おごってくださいよ。」


「おっ、いいわね。トーア、私もいいわよね。

 ザッシュ君は何が食べたい?」


「おい、何勝手に話を進めてんだよ!」


にぎやかな声が部屋に響く。

こうして異界人ミカゲの一件は無事終了した。

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