20話:正義の視点⑥
3日後、ヴェルデの市場は相変わらず賑わっているがどこかピリピリした雰囲気が漂っていた。
道行く人々は皆同じ話題を口にしていた。
「おい、あれって本当なのかな?」
「今日の正午までにこの市場の入り口に英雄ベイリーが現れて自主しなければ
この市場を閉鎖するってやつか。
アイゼル侯爵から貴族院を代表して声明が出されたってな。
それでなんか変な雰囲気なのか。」
「みんな英雄ベイリーならどうにかなると思っているけど、
市場の閉鎖は生活に関わるからな。」
「確かにな。あいつらならどんな手を使っても店を潰しに来るだろうからな。」
「まぁ、俺たちは見守るだけしか出来ねぇからな。
時間になったら見にいこーぜ。」
時間が近づくにつれ、市場で商売をしている人たちに緊張が走っていく。
そして、行く末を見に大勢が集まってきた。
市場に関係ない市民にとってもベイリーがどうなるかは重要な問題だからだ。
11時45分、市場の入り口へアイゼル侯爵を兵士が取り囲んだ一団が現れた。
アイゼル侯爵はローブを羽織っているため、その顔はよく見えない。
「すでに知っている者も多いと思うが、改めて通達する。
本日正午までに、悪逆の徒、殺人鬼ベイリーがこの場に姿を見せ自首しなければ
本日をもってこの場所での今後一切の商業活動を禁じる。」
先頭に立つ兵士が大きくはっきりとした声で宣言した。
「ふ、ふざけるな!」
「そ、そうだ!勝手なことを言うな!」
「そうよ、横暴よ!」
市民からの反発の声は瞬く間に広がり、市場中に響いた。
「静まれ!ベイリーより先に捕まりたいのか貴様ら!」
兵士たちの警告により市場は再び静まり返っていく。
そして運命の時間が刻一刻と迫っていく。
正午まであと1分。
ベイリーの姿は見えない。
「お前たちの英雄様はどうやら怖気づいてしまったようだな。
明日からどうやって生活するか今のうちに考えておけよ。」
数人の兵士が、市民を挑発し嘲笑った。
もう時間は無い。時刻が正午になろうとしたその時!
ドンッ!!
何かが兵隊に囲まれていたはずのアイゼル侯爵を打ち抜いた。
ドサッ。
その場で倒れるアイゼル侯爵。
市場中がどよめく。
「なんだ?何が起こった?」
「来ていた貴族が倒れたらしいぞ。」
「ベイリーだ。英雄ベイリーがまた俺たちを救ってくれたんだ!」
市場が一気に活気づく。
「ベイリー!ベイリー!ベイリー!」
市場中にベイリーコールが鳴り響く。
------市場の入口から少し離れた場所------
パーカーのフードを被った男が騒ぎの方を指さしていた。
「ジャッジメントだ。己の所業をあの世で公開するといい。」
男は一言つぶやくと、騒ぎとは反対の方向へ立ち去ろうとした。
その瞬間。
パシッ。
男は後ろから腕を掴まれた。
男は心臓がドキッとしたのを感じた。
「どこに行くんですか?本日の主役、英雄ベイリーさん。」
ベイリーはすぐさま振り返る。
そこにいたの不敵な笑みを浮かべたトーアだった。




