15話:正義の視点①
昼休憩を終えてユニオン本部、入界管理局の部屋へ戻るトーア達。
各自席へ着き、仕事に取り掛かろうとしたとき、部屋にナヴィーが入ってきた。
「みんな、忙しいところ悪いんだけどイースデンへ調査に行ってもらえる?」
「調査ってことはまだ異界人問題である確証はないってことですか?」
「えぇ、おそらく異界人の仕業だということだけど証拠はないらしいの。」
「その調査に俺たちが駆り出されるってことは何かあるんですか?」
「それが…、イースデンの貴族院から直々の依頼なの。
異界人の仕業に決まってるから調査員じゃなくて、
異界人に対応できる局員を寄越せって。」
「そういうことですか。」
「事件自体はそれなりに深刻だし、
実際異界人が関わっている可能性も十分あるの。
だから頼まれてくれるかしら?」
「分かりました。では事の詳細を教えてください。」
「ありがとう。助かるわ。」
ナヴィーが事件の説明を始めようとする。
「納得いかないっす。」
ザッシュが不服そうに言った。
「なにが納得いかないんだ?」
「だってユニオンって超国家組織じゃないんですか?
あらゆる国家に縛られることなく、
この世界の人のために活動することができる。
それがユニオンじゃないんすか?
それがどこぞの国の貴族の言いなりになるなんて!」
「ザッシュ君…。
確かにあなたの言うとおりね。
でもユニオンが超国家組織でいられるのは各国がユニオンの理念に賛同し
ユニオンの活動を認めているからなの。
だから表向きユニオンはいかなる国家権力にも縛られないとしているけれど
その実、参加国とのしがらみは少なからず存在するの。」
「そんな…。それじゃあ結局、ユニオンも権力者の犬ってことっすか?」
「もちろん言いなりになっているわけじゃないわ。
受け入れられない要求は各局の局長がうまいこと断ってくれているわ。
でもだからこそ、ある程度の要求は聞いてあげないと関係が悪化してしまうの。
だから、ユニオンのためにも調査に行ってくれないかしら?」
「…。わかったっす。
もし異界人がほんとに悪さをしているなら放っとけないっすよね。」
「ありがとう!
ではトーア君、トキナさん、ザッシュ君の3人には明日の朝、
イースデン首都ヴェルデへ立ってもらうわ。」
「はい!」
3人はそろって返事をした。
「ではさっそく事の詳細を話すわね。
現在、イースデン首都ヴェルデでは連続殺人が起こっているの。
それも貴族ばかりを狙ったね。」
「なるほど、その事件の犯人が異界人であるということですね。」
「えぇ、少なくとも貴族院の方々はそう考えているわね。」
「証拠がなくても、そう思わせる何かはあるんですよね?」
「そうね。
詳しくは現地で被害者遺族や捜査をしている軍の方達に聞いてほしいのだけど、
殺害されている状況が怪しいらしいわ。」
「状況?何か特別な状況を狙ってるってことですか?」
「いえ、その逆ね。
犯行が行われる時間や場所がとても考えられているようには思えないの。」
「どういうことですか?」
「普通なら警備が手薄の時や1人の時を狙うでしょ?
でもこの犯人は場所も時間も選ばずに犯行に及んでいて、
どんなに屈強な護衛を付けても構わず襲ってきて
被害者一人を殺害して逃走していくらしいわ。」
「そんなことができるのは異界人だけってことですか?」
「そういうことのようね。」
「分かりました。
とりあえず明日、イースデンのヴェルデへ向かいます。」
「局長はいま神世教教皇の護衛につかされているから
今回は前回のような局長の協力は期待できないわ。
また、前回とは違った難しさがあると思うわ。
大変だと思うけどよろしくね。」
「…?、了解です。」
ナヴィーの最後の言葉に違和感を感じつつ
翌日に向けて3人は各自支度をするのであった。




