第85話 なんだ、お前は!?
「でも、マPが足りませんよ」
なにしろ、このダンジョンじゃ、俺のマPは6000しかないのだ。
これじゃあなあ。
ご先祖様が、おしどりミルクセーキをバリボリかみ砕きながら、
「じゃあマPを回復させてやればええんや。いい方法があるやろ? ほら、あたしのアンデッドダンジョンでやったやつ」
そんなの、あったっけか?
ええと、たしかあんときは……。
「あ! 桜子のおっぱいを揉んだらマPが回復した気がする!」
「ええ……」
胸元を両手で隠してすごく嫌そうな顔をする桜子。
「なんだよ、その顔。いやなのかよ」
「いやなんだけど。最近の慎太郎、私以外の女の子にもデレデレしてる気がする……」
「ごめんごめん。ちょっと調子に乗っただけだからさ。俺は桜子ひとすじだから」
「うーん、どうしようかなー」
「お願い!」
「うーん。でもなー。ここでやるの?」
「隣の部屋でもいいから! お願いします! 桜子さん! 愛してます! おっぱい揉ませて!」
「もうちょっとこう、ムードとか……なんか、今のこの状況でおっぱい触らせたくない」
と、ほのかさんが横から口を出してきた。
「じゃ、私が……」
桜子が顔をパッと明るくして言った。
「うん、じゃあほのかさん、お願い! 慎太郎におっぱいを揉ませてあげて! そのあと慎太郎は私が首を切ってミカハチロウの鼻にくっつけてあげる!」
「パオオオオン!」
ミカハチロウが嬉しそうに八本の鼻を振り回す。
そのうちの一本の先についた篠田の生首が涙を流しながら、
「殺して……殺してくれよぉ……たのむぅ……」
とか言ってる。
うん、別の方法を考えよう。
そのとき、モニターをちらっと見たご先祖様が言った。
「やばい、これはかちあうでー」
「え、なにがです?」
「ウービーイーツの配達員がちょうど地下八階の階段まできとる……」
「って、それ、麗奈さんですよね……」
「せや。麗奈のやつ、仕事を邪魔されるの嫌いやからなー。これはひと悶着ありそうやで」
★
市生たちは慎重に歩を進めていた。
なにしろ、パーティメンバーの一人がやられてしまったのだ。
巨大な丸石につぶされ、現在は生死すら不明である。
「くそ……篠田……死んだのか……?」
市生は呟く。
石郷丸が励ますように言った。
「きっと大丈夫だ。それに、清野、お前が生きていれば俺は嬉しい」
石郷丸にしてみれば、理事長の息子が死んでいないのであればそれでよかっただけであったのだが。
そのときだった。
パーティメンバーの横を、特徴的なバッグを背中にかついだ少女が追い抜いて行った。
「こんちはー」
とか言いながら。
反射的にブラックアックスを構える石郷丸。
「なんだ、お前は!?」




