第83話 かげろう
「お、来たで!」
ご先祖様が言う通り、トラップゾーンに市生たちのパーティがやってきた。
ダンジョンにトラップをしかけるのに、思ったより時間がかかってしまった。
そのせいで、やつらに休息する暇を与えてしまったけど、その分、完成度の高いトラップができたと思う。
やつらのパーティの先頭を行くのは、格闘家の篠田だ。
俺たちの攻撃を警戒しているのか、やつらはゆっくりと進んでくる。
俺はモニターを凝視しながら、タイミングを計る。
そして、篠田がそのタイルを踏んだ瞬間――。
「発動!」
俺はトラップを発動させた。
ガション!
大きな音とともに、巨大な虎ばさみが篠田の身体を挟み込んだ。
「なんだこれ! いてぇ! 助けてくれ!」
虎ばさみに下半身を挟み込まれた篠田が叫ぶ。
まだまだ終わらんよ!
「発動!」
すると、今度は壁に埋め込まれていたマジックアローが、身動きの取れない篠田に命中する。
2hit combo!
「発動!」
すると、今度は篠田のそばの壁がいきなり飛び出てきて、篠田の身体を虎ばさみごと吹っ飛ばした。
3hit combo!
「なんだよこれ……」
ぼろぼろになりながらも立ち上がる篠田。
「発動!」
今度は天井からでかい花瓶がさかさまに落ちてきた。
カポッ!
それが篠田の頭にすっぽりとはまる。
まるで頭部が花瓶になったみたいだ。
4hit combo!
「なんだこれなんだこれ、前が見えねえ!」
手を振り回しながらよたよたと歩く篠田。
そのまま、俺がトラップをしかけた場所まで歩いていく。
計算通り!
「発動!」
今度は床が跳ね上がる。
「ぐわぁぁぁぁ!」
花瓶をかぶったままの篠田の巨体が軽々跳ね飛ばされて、壁に叩きつけられた。
5hit combo!
「これが最後だ! 発動!」
今度は天井から巨大な丸石が落ちてきて篠田の身体をぐちゃ、とつぶした。
「ぐぇぇぇぇぇ……けぽ、がぼっ」
口から血を噴き出しながらピクピクと痙攣する篠田。
これは致命傷だな。
「くそ、どうなってんだ! みんな、いったん引くぞ!」
「で、でも、石郷丸先生! 篠田が! 早く治療しないと!」
「馬鹿っ、見極めを誤るな! あれを助けにいったら俺たちもやられるかもしれないんだぞ! いったんひけぃ!」
残されたのは、わずかに息をしているだけの、ぐちゃぐちゃの肉塊だった。




