第77話 ダンジョン配信開始
「おい、ダンジョンマスター、お前、無事だったのか!?」
市生が尋ねると、元ダンジョンマスター、レイシアはコクンと頷いた。
「へへへ……はい、なんとか逃げ出したんです……」
しかし、なにか様子がおかしい、と市生は思った。
なんというか、こう、レイシアの瞳孔が開いている。
唇からはよだれが垂れていた。
「どうした、なにかされたのか?」
「いやー、へへへ、なにもされてませんよ。でも市生さん、あなたずいぶんちっちゃくなっちゃって……かーわいー」
「ん? 何を言っているんだ?」
「市生さんもかわいいし、篠田さんもそのぽっちゃり具合がそそりますねー。遊斗さんもお人形さんみたいに綺麗な顔してる……。みなさん、おかわいくなっちゃって……もうぐちょぐちょですよ、私」
そしてレイシアは身長190センチの石郷丸を見て、
「そこのおチビちゃんもおいしそう……。あ、こっちはメス二匹か。瑞葉さんと……あとしらないメスですね。メスはどうでもいいですが、男子のあなたたち、今までは私のストライクゾ―ンじゃなかったから手出ししなかったんですけど……そんなおチビちゃんになっちゃったら……こりゃ濡れ濡れですよ。サッキュバスとして、手を出さないわけにはいかないですね、へへへ……」
「どうしたの、ダンジョンマスター? しっかりして!」
瑞葉の言葉に、レイシアは焦点のはっきりしない瞳で返す。
「へへへ……一万人と性交渉をするのが私の目標なんです……。人間じゃ到底できない記録でしょう? まずはそこの斧を持ったおチビちゃんからいきましょうか」
なにを言っているんだ、と市生は混乱する。
石郷丸はどこからどう見てもおチビちゃんではない。
あと、一万人以上と性交渉を持った伝説の校長は実際に存在するし。
あの方はインキュバスだったとでもいうのか?
とにかく、レイシアはどうかなっているようだった。
★
「いやー、やってみればできるもんですねー」
「せやな、やはり真のダンジョンマスターであれば部下に催眠をかけるなんて自由自在なんや。さすが我が子孫、慎太郎や」
ご先祖様が褒めてくれた。
俺はマPを全部つぎこんで、レイシアに催眠をかけたのだ。
そう。
すべての男がショタ(年齢一桁)に見える催眠を。
しかも、レイシアの首には遠隔で操作できるボディカメラをかけている。
これで配信をしてやろう、というわけだ。
〈お、なにか配信が始まったぞ〉
〈なんだこれ。もしかしたらモンスター視点なのか?〉
〈ここ、どこのダンジョンだ?〉
コメント欄に視聴者がぞくぞくやってきた。
ご先祖様がコメントに答える。
「ここは新潟の鳥屋野潟ダンジョンやでー。モンスターにカメラをとりつけてあるんや。おもしろいもんが見られるでー。みんなに見てもらいたいから拡散お願いするで」
かくして、ここ、鳥屋野潟ダンジョンでのダンジョン配信がはじまったのであった。




